２　作戦篇　　2/4、敵の食糧を奪う

善用兵者、　　役不再籍、　　糧不三載、
善く兵を用うる者は、役は再びは籍せず、糧は三たびは載せず。
用兵の巧みな者は、民衆に二度も兵役を課さず、三度も食糧を前線に運ばせない。
取用於國　　、因糧於敵、　　　故軍食可足也、
用を国に取り、糧を敵に因る。　故に軍食足るべきなり。
戦費は自国で賄うが、食糧は敵から奪う。だから兵士たちが飢えることはない。
國之貧於師者遠輸、　　遠輸則百姓貧、
国の師に貧なるは、遠き者に遠く輪せばなり。　遠き者に遠く輪さば則ち百姓貧し。
国家が軍隊のために貧しくなるのは、遠くまで補給物資を運ぶからだ。　　遠くまで補給物資を運べば百姓が貧しくなる。
近於師者貴賣、貴賣則百姓財竭、
近師なるときは貴売す。　貴売すれば則ち百姓は財つく。
近場で戦争すれば物価が高くなる。　　物価が高くなれば百姓は蓄えが無くなる。
財竭則急於丘役、力屈財殫、中原内虚於家、百姓之費、十去其七、
財つくれば則ち丘役にして、力は中原に屈き用は家に虚しく、百姓の費、十に其の七を去る。
蓄えが無くなれば、村から兵役に人を出すこともできなくなる。　戦場では戦力が無くなり、家では蓄えが無くなり、　百姓の生活費は十のうち七まで減らされる。
公家之費、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十去其六、
公家の費、破車罷馬、甲冑弓矢、戟盾矛櫓、丘牛大車、十に其の六を去る。
国家財政も、戦車は破壊され馬は疲労し、甲冑・弓矢・武器や防具・運搬のための牛や大車なども十のうち六が減らされる。
故智將務食於敵、
故に智将は務めて敵に食む。
だから、知恵のある司令官はできるだけ敵地で食糧調達をするのだ。
食敵一鍾、當吾二十鍾、忌桿一石、當吾二十石、
敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当たり、忌秤一石は、吾が二十石に当たる。
敵の食糧一鐘を奪うのは味方にとっては二十鐘の食糧が増えたことであり、飼料（豆がら・ワラ）の一石を敵から奪うのは、味方にとっては二十石が増えたのと同じだ。