| 凡戰者、以正合、以奇勝、 |
| 凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。 |
| およそ戦いというものは、正攻法ではじめ、型破りな奇法で最終的な勝利をおさめる。 |
| 故善出奇者、無窮如天地、不竭如江河、 |
| 故に善く奇を出だす者は、窮まり無きこと手地の如く、尽きざること江河の如し。 |
| うまく奇法を繰り出せるものは、天と地のように極まり無く、黄河や長江の水のように尽きることが無い。 |
| 終而復始、日月是也、 死而復生、四時是也、 |
| 終わりて復た始まるは、日月是れなり。 死して復た生ずるは、四時是れなり。 |
| 終わってはまた始まることは、太陽と月のようで、 死んでまた生まれ変わるのは四季の移り変わりのようだ。 |
| 聲不過五、五聲之變、不可勝聽也、 |
| 声は五に過ぎざるも、五声の変は勝げて聴くべからざるなり。 |
| 音階は五種類に過ぎないが、その五音階の交じり合った変化は、とても聴き尽くせない。 |
| 色不過五、五色之變、不可勝觀也、 |
| 色は五に過ぎざるも、五色の変は勝げて観るべからざるなり。 |
| 色は五色に過ぎないが、その五色が交じり合って生じる変化は、とても見尽くせない。 |
| 味不過五、五味之變、不可勝嘗也、 |
| 味は五に過ぎざるも、五味の変は勝げて嘗むべからざるなり。 |
| 味も五種類だが、それが交じり合った変化は、とても味わいつくせない。 |
| 戰勢、不過奇正、奇正之變、不可勝窮也、 |
| 戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は勝げて窮むべからざるなり。 |
| 同じように戦闘の勢いというものも、正法と奇法の組み合わせに過ぎないのだが、その組み合わせによる変化はとても極めつくせない。 |
| 奇正相生、如循環之無端、 孰能窮之、 |
| 奇正の環りて相い生ずることは、環の端なきが如し。 誰か能くこれを窮めんや。 |
| 正法と奇法がぐるぐる回ってお互いに生じあうことは、まるで丸い輪に端が無いようなものだ。 誰がこれを極められようか。 |