| 希言自然。 |
| 希言は自然なり。 |
| 聞き取れない程のかすかなささやきこそ、言葉の自然な在り方である。 |
| 故飄風不終朝、驟雨不終日。 |
| 故に飄風は朝を終えず、驟雨は日を終えず。 |
| 吹き荒れる風は半日も続かないし、土砂降りの雨も一日中は続かない。 |
| 孰爲此者、天地。天地尚不能久、而況於人乎。 |
| 孰れかこれを為す者ぞ、天地なり。天地すら尚お久しきこと能わず、而るを況んや人に於てをや。 |
| そうしているのは自然そのものである。自然すら長く続けられない様な言葉の発し方を、人間が長く続けられる筈が無い。 |
| 故從事於道者、同於道、徳者同於徳、失者同於失。 |
| 故に道に従事する者は、道に同じくし、徳なる者は徳に同じくす、失なる者は失に同じくす。 |
| だから「道」に沿った生き方をする者は「道」と一つになろうとし、徳に沿った生き方をする者は徳と一つになろうとし、 |
| 同於道者、道亦樂得之、同於徳者、徳亦樂得之。 |
| 道に同じくする者は、道も亦たこれを得るを楽しみ、徳に同じくする者は、徳も亦たこれを得るを楽しみ、 |
| 仁や礼を求めて徳を失った者は、それらと一つになろうとする。 |
| 同於失者、失亦樂得之。 |
| 失に同じくする者は、失も亦たこれを得るを楽しむ。 |
| 「道」を求める者を「道」の方でも求め、徳を求める者を徳の方でも求め、仁や礼を求める者もそれらから求められる。 |
| 信不足、焉有不信。 |
| 信足らざれば、焉ち信ぜられざること有り。 |
| いずれにしても言葉に誠実さが足りないと、人からの信頼を失うものだ。 |