さて、中世初頭の西ヨーロッパにおける「ゲルマン的」共同体形成の端緒は、そうした土台の上にきずかれていく封建社会全般のぼあいと同様、しばしば「ローマ的なものとゲルマン的なものの綜合」として説明されてきた。そのこと自体はもちろん誤謬とはいいえないが、いま少し、いわば立体的にとらえる必要があるのではないかと思われる。現在における実証的研究の成果に照してみれば、およそ次のように考えるべきではなかろうか。(1) まず、帝政末期ローマの版図内において、「都市」（＝キーウィダース）および「奴隷制所領」（＝ラティフンディウム）の支配下に「下から」抵抗の組織として新しい「共同体」の萌芽が形づくられはしめる。しかし、こうした「ゲルマン的」共同体の萌芽は自由には展開しえず、またたえずその成果を「上から」つみとられていくパ�汲ﾂいで、。、ローマの版図内におけるゲルマン諸部族の定住地ではじめて紛うかたなき「ゲルマン的」共同体の形成がおこなわれ、それがやがてとぶフランク諸部族のもとにおける「ゲルマン的」共同体の典型的な展開となって現われてく卷。ついでながら、そのばあい、フランク王国の中心部をなすライン河下流地方および現在の北フランス一帯が、一方においては、豊かな農業生産を土台にローマ社会の遺産である手工業、とくに鉄工業が凝集されていった地域であり、他方においては、旧来の「都市」および「奴隷制所領」ｎラティフンディウム）の支配力がもっとも弱い地域であったことを、想起しておく必要がある。�汲ｱのような「ゲルマン的」共同体が、フランク王国の形成と拡大にともなって、広大な征服地の各所に伝播されたらこの新しい「共同体」を基盤とし、かつその内部から生みだされてい畧階級構成を基軸として（メロヴィンガー時代史のうえで問題の「レーウデース」の成長をおもえ）ヨーロッパ封妣社会の全構造が築があげられることとなったのである。

（６）　「封建制はゲルマンの地から褫成のものとしてもちこまれたのではない。征服者の側からいえば、征服そのもののあいだにおける兵制の軍隊組織のうちにその起源をもっていた。そして征服後にこの軍隊組織が、征服された国々にすでに存在していた生産諸力の影響によって、はじめて本来の封建制に発展したのである。どれほどまでこの形態が生産諸力によって制約されていたかは、古代ローマのなごりをとどめる別な諸形態をつらぬこうという試みが失敗におわったのをみればわかる」。

　ほぼ以上のような緬蕭々歴史の舞台に現われな萪いたった、この新しい「ゲルマン的」形態の共同体は、さきに設定したクリテリアに照してみるとき、どのような基本的舞翼缸も’つものだったというべきであろうか。われわれは、まず、次の点を指摘することからは匕めようと思う。ｊ−そうした・「ゲルマン的」形態の共同体にあっては、古り「部族」的Ｈ血縁制的な関係は、すでには匕めからなんら測肓的桀意義をもっていなかった。ローマの「都市」および「奴隷制所領」の支配下でいわゆるコローヌスのあいだに形づくられてくる「抵抗の組織」については、その点がいちおう明らかなので、ひ。とまず省略することとし以兄。ところで、ゲルマン諸部族、とくにフランク諸部族のばあい、事実はいったいどうであったのか。研究史が乏しい史実のなかから教えるところによると、石山リンガー期ともなれば、旧来の「氏族」Ｓｉｐｐｅ制は、もちろんなおなんらかの形で残存しているとはいえ、その規制力はいちしるしく衰えており、その外側には「氏族に属さない人々」Ｕｎｇｅｓｉｐｐｔｅｎの数がますます増大しつつあった。そして、古い「氏族制」にかわって、彼らのあいだには、ギルドとよばれる第二次的な「誓約共同態」Ｓｃｈwｕｒｂｒｉｉｄｅｒｓｃｈａｆｔ ｉわゆる「古ギルド」Ｉがいたるところ新たに形づくられる、ような状態となっていたＪ土地占取の独自な基本関係としての「ゲルマン的」共同体がローマの生産力遺産を継承しつつ姿を現わしたのは、まさにこうした一般的雰囲気のうちにおいてなのであって、そこでは当然に古い血縁制的関係の規制力も基本的意義を失ってしまっていたのである。このような意味でヽ「ゲルマン的」形態の共同体は、「古典古代的」形態のそれと稠様、「人為的な発生」（ヴェーバー）の結果であり、「歴史的所産」としての「第二次的構成」（マルクス）とされるのであるが、しかもそれは、ひとしく「第二次的構成」でありながら、「古典古代的」形態とははっきりと異なった歴史的特質を打ち出していたのである。