*１２ 都市経済とギルド制度
ところで、そうした「産業資本」成立の歴史的経路や条件の究明をは匕めるまえに、なお少し立ち止って、世界史
の上で「貨幣経済」のいわば拠点となってきた「都市」に、経済史的な一瞥をあたえておくことにしよう。いったい
「都市」なるものは、もっとも広い意味に解するならば、前述の「貨幣経済」や「前期的資本」などと同じく、歴史
上きわめて古いものといわねばならない。もちろん、それは古代オリエントの専制諸国家にもすでに見いだされた。
たとえば、エジプトのノモス（は匕めは原始小国家、のちには行政区）やペルシアのサトラペイア（同上）などが研究史
上しばしば「都市」国家ないしそうした構成体として取り扱われていることによってもわかるはずである。そうした
諸「都市」では商人や手工業者たちが王宮や官庁の周辺に集り住み、ことにバビロンとかニネヴエなどの首都は遠隔
地間貿易の中継基地として、その規模もそうとう巨大であった。ところで、それらオリエントの諸「都市」は、古典
古代以後の西洋史を特徴づける「都市」制度とは根本的に異なって、それ自体として独自な「共同体」（‥Ｕ「都市」共
同体）を形づくるものではなかったのである。その住民たちは、支配氏族に属する貴族は別として、すべてどこかの
農村共同体Ｔ血縁的共同体）にいわばその故郷（＝イディア）をもっており、「都市」内にみられるなんらかギルド類似
の集団もまたそうした基本共同体の延長にほかならなかった。いってみれば、古代オリエントの諸「都市」は「君主
の設営地」を中心に、そこから流出する購買力に依存するような商人や手工業者たちが集まった、そうした「本来の
経済的構造のただふくれ上った部分」にすぎなかったのである。西洋的な意味での「都市」（つまりそれ自体独立の共
同体たる「都市」）は、歴史上、古典古代の地中海沿岸地域においてはじめて形づくられた。こうした古代「都市」は
もちろんその内部にいっそう多くの商人や手工業者たちを包含し、またさかんな遠隔地間貿易の中継市場でもあった
が、しかし基本的には、前述したように、何よりもまず、土地（＝および奴隷）所有者たる市民の独自な共同体であっ
た。したがって、周辺の農村地域をその支配下におきつつ、すぐれて「都市」国家という構成をとったばかりでなく、
商業や手工業などの営みはしだいにむしろ奴隷、解放奴隷、寄寓者にふさわしい卑しい仕事と考えられるようになっ
ていき、結局その内部には、のちの中世「都市」にみられるギルド制度のような商人や手工業者たちの独自な部分共
同体が形成されることはなかったのである。つまり、古代「都市」は土地所有と農業の基礎から離れきることができ
ず、そこではついに「農村」経済と対立した「貨幣経済」（したがって商人や手工業者たち）の独自な拠点という意味で
の「都市」の形成をみることはなかった。中世西ヨーロミ（の「封建制」のもとにおいてはじめて、広汎な農村経済
の基盤の上に、しかも農村と対立しつつ、「貨幣経済」発達の独自な拠点として「都市」（―「都市」共同体）が姿を現
わしてくることになる。
･|･
62
63
産業資本の形成
第２章
− −・−−卜・−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−
ａ・１・ ｒ
−−−−−− −− −−
− 。ｌｉｌ−−−−−−
Ｍ−− −
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丶Ｉｒ。
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＊「都市」の意味については、何よりもまずMaｘ Ｗｅｂｅｒ｢ Ｄｉｅ Ｓｔａｄｔ｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔ ｕ. Ｇｅｓｅｌｌｓｃｈａｆｔ｢ ４. Ａｕｎ.｢ ＳＳ. ７３５-４９｢ § １｢
Ｂｅｇｒiff ｕｎｄ Ｋａｔｅｇｏｒｉｅｎ ｄｅｒ
Ｓtａｄｔ（ウェーバー、世良訳『都市の類型学』三−七一頁ごＤｅｒｓ.｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢
ＳＳ. ２７０-5 64
（ウェーバー、黒正・青山訳『一般社会経済史要論』下、一七三頁以下）を参照。ここではさしあたって最広義に、つまりなん
らか商ｎ工業の立地であり、また農産物の供給を何かの形で外部に仰がなければならないような集落、というほどの意味に用い
ておく。
＊＊ 「共同体」の意味については、前出、三の説明、および詳細には、拙著『共同体の基礎理論』、「著作集」第七巻の叙述を参照。
丶丶丶丶丶
＊＊＊ ヴェーパー的に表現すれば、相伝の秘術化された技術にむすびつく「職業氏族」であるか、あるい一はそれに基づいて、な
丶丶
いしは共同体外の賎民を基礎として、「上から」編制されたいわゆる「公役制ギルド」leiｔｕｒgiｓｃｈｅ
Ｚｉｉｎｆｔｅであった。彼によれ
ぱ、そうしたものは、結局「部族」共同体的な編制の根から解き放たれることなく、したがって中世的なギルドにおのずから
成長していくことは不可能だったのであるＷｅｂｅｒ｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢
ＳＳ. １１０-２９ (ウェーバー、黒正・青山訳、前掲書、
上、二四九−七〇頁）。ただし、中世初期のヨーロー（で、「職業氏族」や「公役制ギルド」（ローマのコレギウム）が本来のギル
ドに転化していく個々的な事例は、もちろん見出されな’いことはなかろう。しかし、それは後段ただちに説明するように右の
命題とは別の事柄である。
＊＊＊＊ 「古典古代の歴史は都市、ただし土地所有と農業の上に基礎をおくところの都市の歴史である。〔古代〕アジアの歴史は都
市と農村との一種の無差別な統一である（真に大規模な都市なるものはそこでは君主の設営地であり、本来の経済的構造のた
だふくれあがった部分にすぎぬと見ることができる）。中世（ゲルマン時代）の歴史は農村から出発し、その後の発展は都市と
農村の対立のうちに進行する。近代の歴史は農村の都市化であって、古典古代におけるように都市の農村化ではない」。Ｋａｒl
Maｒｘ｢ ｂｏｒｍｅｎ｢ ｄｉｅ ｄｅｒ ｋａｐｉｔａｈｓｔiｓｃｈｅｎ
Ｐｒｏｄｕｋｔｉｏｎ ｖｏｒｈｅｒｇｅｈｅｎ｢
Ｓ. １５ ｆ.（マルクス、飯田貫一訳『資本制生産に先行する諸形
態』ニー頁）
車＊＊＊＊ 古典古代の「都市」およびとくにそれと中世「都市」の対比についてはＭａｘ Ｗｅｂｅｒ｢ Ｄｉｅ
Ｓｔａｄｔ｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔ ｕ. Ｇｅｓｅｌｌ-
ｓｃｈａｆｔ｢ ４. Ａｕｎ.｢ Ｋａｐｉｔel ＩＸ｢ ８. Ａｂｓｃｈｎｉｔｔ｢ §§ ３-５
(ウェーバー、世良訳、前掲書、第九章第八節第三−五項ごＤｅｒｓ.｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓ-
ｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢ ＳＳ. ２７０-８９
(ウェーバー、黒正・青山訳、前掲書、下、一七三−ニー五頁）を参照。なお、ここでは近代の「都市」
はとりあつかわない。それについては、後出、一五をみよ。
山一 古代「都市」の解体（＝農村化）の現象はもちろんすでにローマ帝政末期から始まっているが、封建革命ともい
うべきフランク王国の形成と拡大の過程で決定的となり、とくにその後数世紀聞におけるいわゆる「貨幣経済」の縮
小とともに、古代「都市」の経済的意義はほとんど失われてしまったといってよい。ところで、十、十一世紀からのい
わゆる「商業の復活」にともない、「都市」経済は新たな相貌をもって、西ヨーロッパの地にふたたびたくましい姿を
現わしはしめるにいたった。あるいは、南方に多くみられるように、旧ローマ「都市」の遺制から発芽し、あるいは、
ライン河下流地域から北フランス方面にかけて多くみられるように、種々な形の「ブルグ」（城塞）を拠点として新たに
成長したが、また卞イツなどでは上からの「都市」建設（いわゆる建設「都市」）も多くおこなわれた。こうしたいわゆ
る中世「都市」は、もちろん種々の重要な地方的変異を含んではいるが、しかし全体としてやはり、古代「都市」と
は本質的に異なった基本的特徴を共通に具えていたと言わねばならない。
＊ ヨーロー（の中世「都市」一般については次の諸論著を参照。Ｋ. Ｂｉｉｃｈｅｒ｢
Ｄｉｅ Ｅｎｔｓｔｅｈｕｎｇ ｄｅｒ Ｖｏｌｋｓwｉｒｔｓｈａｆｔ｢ Ｉ
(ビュ″ヒ
″‐、権田保之助訳「国民経済の成立」ごＭａｘ Ｗｅｂｅｒ｢
Ｄｉｅ Ｓｔａｄｔ｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔ ｕ. Ｇｅｓｅｌｌｓｃｈａｆｌ
（ウェーバー、世良訳、前掲書ご
Ｄｅｒｓ｡ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢
ＳＳ. ２７０-８９｡ § ７｢ Ｄａｓ Ｂｕｒｇｅｒｔｕm（ウェーバー、黒正・青山訳、前掲書、下、一七三一ニー五頁ご
W. Ｓｏｍｂａｒｔ｢ Ｄｅｒ ｍｏｄｅｒｎｅ
Ｋａｐｉｔａｌｉｓmｕｓ｢ １／１｢ ＳＳ. ９１-１７９; Ｈ. Ｓｉｅｖｅｋｉｎｇ｡ Ｄｉｅ miｔｔelalｔｅｒｌｉｃｈｅ Ｓｔａｄｔ｢ Ｖｉｅｒｔｅｌｊａｈｒｓｓｃｈｒｉｆｔ
ｆｕｒ
Ｓｏｚ.- ｕ. Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈ.｢ ＩＩ; Ｈ. Piｒｅｎｎｅ｢ Ｌｅｓ ｖｉｌｌｅｓ ｄｕ moｙｅｎ Ａｇｅ.
（Ｍｅｄｉｅｖａｌ Ｃｉｔｉｅｓ｢ ｔｈｅｉｒ Ｏｒｉｇｉｎｓ ａｎｄ ｔｈｅ Ｒｅｖｉｖａｌ ｏｆ
Ｔｒａｄｅ｢ ｔｒ. ｂｙ Ｆ. Ｄ. Ｈａｌｓｅｙ
;アンリー・ピレンヌ、今来陸郎訳『西洋中世都市発進史』) ; Ｄｏ.｡
Ｅｃｏｎｏｍｉｃ ａｎｄ Ｓｏｃｉａｌ Ｈｉｓｔｏｒｙ
ｏｆ
Ｍｅｄｉｅvａｌ Ｅｕｒｏｐｅ｢ Ｃｈａｐ. ＩＩ
（Ｔｈｅ Ｔｏwｎｓ） ; Ｋａｒl Ｈｅｇｅｌ｢ Ｄｉｅ Ｓｔ＆ｄｔｅ
ｕｎｄ Ｇｉｌｄｅｎ ｄｅｒ ｇｅｒｍａｎｉｓｃｈｅｎ ＶＢｉｋｅｒ im Miｔｔｅｌａｌｔｅｒ; Ｇ.
ｖｏｎ Ｂｅｌｏw｢ Ｄｉｅ ａｌｔｅｒｅ
ｄｅｕｔｓｃｈｅ Ｓｔａｄｔｅｘｖｅｓｅｎ ｕｎｄ
Ｂｉｉｒｇｅｒｔｕm ;宮下孝吉「ヨーロー『における都市の成立』、増田四郎「都市」。
また、西ヨーロでパ各国の中世「都市」についてはさしあたって、次のような概説的通史を参照。Ｒ. Ｋｏtｚｓｃｈｋｅ｢
Ａｌｌｇｅｍｅｉｎｅ
Ｗｉｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ ｄｅｓ Miｔｔｅｌａｌｔｅｒｓ; Ｊ. Ｋｕliｓｃｈｅｒ｡ Ａｌｌｇｅｍｅｉｎｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢ Ｉ
（Ｄａｓ Miｔｔelalｔｅｒご（ｊ. ｒsｒｏｄｎｉｔｘ｢
Ｅｎｇｌｉｓｃｈｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢ Ｉ; Ｅ. Ｌｉｐｓｏｎ｢ Ｅｃｏｎｏｍｉｃ Hiｓｔｏｒｙ ｏｆ
Ｅｎｇｌａｎｄ｢ ｒｅｖ. ｅｄ.｢ Ｉ （Ｔｈｅ Ｍｉｄｄｌｅ Ａｇｅｓ） ; Ｔｈ. Ｍａｙｅｒ｢ 65
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第２章 産業資本の形成
−−
−−
‐‐−‐−
‐‐‐−−
−−‐−
ｉ
Ｄｅｕｔｓｃｈｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ
ｄｅｓ Miｔｔｅｌａｌｔｅｒｓ ; Ｒ. Ｋｏ:ｔｚｓｃｈｋｅ｢
Ｇｒｕｎｄｚｉｉｇｅ ｄｅｒ ｄｅｕｔｓｃｈｅｎ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ
ｂｉｓ ｚｕm １７.
Ｊａｈｒｈｕｎｄｅｒｔ; Ｈ. Ｐｌａｎｉｔｚ｢ Ｄｉｅ
ｄｅｕｔｓｃｈｅ Ｓｔａｄｔ im Miｔｔｅｌａｌｔｅｒ
; Ｈｅｎｒi Ｓｅｅ｢ Ｆｒａｎｚｏｓｉｓｃｈｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ; Ｄｏ.｢ Ｅｓｑｕｉｓｓe 66
dｕｎｅ ｈｉｓｔｏｉｒｅ ｅｃｏｎｏｍｉｑｕｅ
ｅｔ ｓｏｃｉａｌ ｄｅ ｌａ Ｆｒａｎｃｅ;
Ａ. Ｅ）ｏｒｅｎ｢ Ｉｔａｌｉｅｎｉｓｃｈｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢
Ｉなど。
十、十一世紀ごろ「商業の復活」に伴って、遠隔地間貿易を地盤にたくましい姿を現わしてきた商人たちは、最初
はいわゆる遍歴商人であった。彼らはＩヵ所に定着することなく、「商人ギルド」Ｋａｕｆｍａｎｎｓｇｉｌｄｅとよばれる団体を
形づくり、隊伍を組んで、そうとう遠隔の距離のあいだを陸路あるいは水路、小麦、葡萄酒、羊毛や毛織物などの商
品を携え、たえず市場を求めて移動した。しかも交通上の要地（たとえば河川の合流点、河口など）や安全度の大きい
種々の「ブルグ」（城塞）、とくに需要のゆたかな宮廷、教会、修道院などの城壁内には、彼らの姿をみることがおのず
から頻繁となっていった。このことは旧ローマ「都市」に残存している商人的要素の再発芽を促したばかりでない。
遍歴商人たちはまたいつしか、頻繁に往来する商業上の要地、とくに「ブルグ」の付近に定着し、そこに市場を中心
とする市壁に囲まれた新たな集落、つまり「都市」を形成しは匕めた。しかもこの市場を中心とする集落は、さらに
そこへ購買力として放出される封建的余剰生産物（＝地代および商業利潤）を起点として、おのずから局地内での商品
交換（農廿工）をよびおこし、その結果近傍の農村地帯に潜在する手工業者たちをもどしどし吸引するにいたった。こ
うして十二、三世紀ごろまでに、「都市」はたんに商工業の拠点というばかりでなく、農村地域に対立しつつ、商人お
よび手工業者を主体とする独自な共同体として成長していったのであ乱。
＊ 中世「都市」の発生史に関しては、とくにドイツの史家を中心に、一連の研究史がある。その概観としては、ｒｉ. Ｃｕｎｏw｢
Ａｌｌｇｅｍｅｉｎｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢ ＩＩ｢
ＳＳ. ４５０-６３ (クノウ、高山洋吉訳「経済全史」四、二三六−六九頁) ; Ｊ. Ｋｕliｓｃｈｅｒ｢ Ａｌｌ-
ｇｅｍｅｉｎｅ Wtｒｔｓｃｈ.ａｊｔｓｇｅｓｃｈ.ｉｃｈ.ｔｅ｢ Ｉ｢ ｂＳ. １６７
ft. ; Ｒ. Ｋｏｔｚｓｃｈｋｅ｢ Ａｌｌｇｅｍｅｉｎｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ
ｄｅｓ Miｔｔｅｌａｌｔｅｒｓ｢ ＳＳ. ４２５££｡;
Ｈ. Ｐｉａｎｉｔｚ｢ Ｄｉｅ ｄｅｕｔｓｃｈｅ
Ｓｔａｄｔ im Miｔｔｅｌａｌｔｅｒ｢ １９５４などをみよ。
こうした「都市」共同体は、最初は、もちろん、その地域の裁判権をにぎる都市領主の支配下におかれていた。し
かし「都市」内における商人・手工業者たちの比重がまし、彼らによる事実上の自治が進展するにつれて、都市領主
とのあいだに軋轢を生ずるにいたり、あるいは武力によって反抗を試み、あるいは貨幣力にものを言わせて自治権を
買収するなど、「都市」はしだいに何らかの程度において独立をかちえていった。なかには、「自由都市」、「帝国直属
都市」Ｒｅｉｃｈｓｓｔａｄｔというような形で、領邦領主（＝封建諸侯）に相似的な地位にさえ到達するものも、そこここに生じ
た。このようにして独立の自治をうちたてた「都市」は、その周辺の或る範囲の農村地域に対して、とくに南欧の大
「都市」などのばあいには周辺の小「都市」に対してさえ、一定種類の商工業の営業権を独占（周辺の農村に向っては
いわゆる「禁制領域」Ｂａｎｎｍｅｉｌｅを設定）し、そうした地域内的な農・エの分業のうえに、独自な「共同体」的組み立
てをもつところの、多かれ少なかれ封鎖的な経済圏（＝再生産圏）をつくりあげていった。こうしたものこそがいわゆ
る「中世都市」を特徴づけるところの「都市経済」にほかならない。ただ。このような中世「都市」の発達過程にお
いて、同じ西ヨーロッパでも南方と北方ではかなり重要な差違がみられることを付言しておかねばなるまい。南方、
とくにたとえばイタリアの諸「都市」では、さきにもふれたように「古代都市」からの遺制がある程度まで残存して
おり、そのために南方型ともよびうるような特異な構成がうちだされていった。すなわち、そこでは始めから封建的
地主（＝領主）たる貴族（＝戦士）が市民として「都市」内にすみ、かつ多かれ少なかれ商人化して遠隔地貿易の利害に
結びついていた。つまり「都市」と農村の対立はいわば稀薄であり、ヴェネツィア、ジェノヴァ、フィレンツェなど
にみるように、ある程度「古代都市」に相似した「都市」国家を形づくるにいたったことは周知のとおりである。こ
れに対比して、北方では「古代都市」の遺制なるものは極少であり、したがって北方型では「中世都市」とその都市
経済はいっそう典型に近かったといってよい。また、さきにも述べたように、北ドイツではリューベック、（ムブル
67
]1
第２章 産業資本の形成
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ク、ダンツィツヒなどを中軸に九〇にあまる「都市」がいわゆる（ンザ同盟を結成して、十四世紀を頂点に大きな政
治勢力を形づくったが、しかしやはり全体として北方型では、「都市」の政治的独立や自治は南方型に比して形式が異
なっているばかりでなく、その程度もむしろ劣っていたと言ってよいようである。とくにイギリスでは「中世都市」
は王権の支配から脱することもなかったし、またその自治の範囲についても、少数の大「都市」を除いては、一般に
周辺の農村地域に対する「禁制領域」の設定が微弱であったとさえ言われている。つまり、イタリアの諸「都市」と
は正反対の意味で、「都市」と農村の対立が稀薄だったわけである。しかし、そうした地域的差異の歴史的意味につい
ては、後段で改めて論及することとしよう。
＊ 後出、一五を参照。
圜 このようにして発達をとげた「中世都市」は、その内部構成についてみても、「古代都市」とはいち匕るしく異
なった相貌を呈するにいたった。いうまでもなく、「古代都市」にはとうてい見られなかったようなギルド制度の独自
な展開である。「中世都市」がそもそも商人たちの定住を中核とし、付近の農村地帯から来住する于工業者たちを加え
て形成されたことは、さきにもふれたが、そうした商人や手工業者たちのあいだにはしだいに、研究史上「同職ギル
ド」ｃｒａｆｔ gild｢ Ｚｕｎｆｔ｢ ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ
ｄｅ meｔieｒとよび慣わされている同職者たちの小共同体が形づくられていった。そう
した「同職ギルド」（以下単にギルドとよぽう）が古い遍歴商人たちの「商人ギルド」とどのような関連をもっていたか
は必ずしも明らかとは言いがたいが、あるいは、たとえばロンドンなどの大「都市」をのぞくイギリスの諸「都市」に
みられるように、最初商人を中心としてあらゆる種類の手工業者たちを含む一個の綜合ギルドが現われ（イギリス史
上にいわゆる「商人ギルド」gild meｒｃｈａｎｔ）
’ついで手工業者の種類と数の増大とともにそれが個々のギルドに分裂し
ていくようなばあいもあったし、あるいはまた、大陸諸国にむしろ一般にみられたように、個々・の同職ギルドが最初
から別々に成立していくばあいもあった。もちろん大陸諸国でも、綜合ギルドの事例が全然みいだされないわけでは
ないし、ことに小「都市」では各職業が別々の組織をもつことはおのずから不可能で、せいぜい二、三のギルドに数種
の手工業者が含まれていることが普通であった。
＊ こうした「同職ギルド」の形成は本来の商工業者以外にもひろがり、荷担ぎ、宿屋などから乞食や街の女まで、それぞれのギ
ルドをもつにいたった。
＊＊ 中世「都市」内でギルドを形成するようになった手工業者たちは、いったいどのような出身の人々であったのか。また、そ
れに関連して、手工業者のギルドはどのようなものとして発生したのか。こうした問題に関してドイツ史学を中心に研究史が
形づくられている。その要点を記せば、次のとおりである。かつて学界を支配していた「荘園法説」Ｈｏｆｒｅｃｈｔｔｈｅｏｒieによれば、
ギルドは、大領主の荘園（フローンホフ）内で使役されている不自由手工業者たちの管理機構、そうした荘園内の不自由手工業
者の団体がいわば形態転化したものと説明されてきた。しかしこの見解は、ペロウやコイトゲンたちの鋭利な批判以来、現在
では全く捨てられている。ペロウによれば、封建制下の農村においても、荘園機構の外側で「自由に」自己の製品を販売する
ようないわゆる自由手工業者が存在しており、そうした手工業者たちがまず「都市」に集り住んで、自発的にギルドを形づく
り、それに逃亡してきた不自由手工業者たちが加わって、しだいに自由な市民に成長していった、と。ただおそらくコイトゲ
ンのいうように、都市領主が市場統制の必要からそうした手工業者団体を「上から」つくりだし（いわゆるアムト）、それがギ
ルドに成長していったばあいの存在も、認めねばならないであろうと思われる。Ｃｊ. ｖｏｎ ｂｅｌｏw｢ Ｄｉｅ Moｔiｖｅ
ｄｅｒ Ｚｕｎｆｔbildｕｎｇ｢
Uie rｒｏｂｌｅｍｅ ｄｅｒ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢ １９２０
; Ｆ. Ｋｅｕｔｇｅｎ｢ Ａｅｍｔｅｒ ｕｎｄＺｕｎｆｔｅ｢ １９０３参照。なお、研究史全般の概要につい
ては」｛゜（^ｕｎｏw｢ ａ. ａ. 」／｡｢
１１１｢ |ｏｏ. nｙ rｔ.; Ｊ. iｖｕliｓｃｈｅｒ｢ ａ.
ａ. Ｕ.｢ １｢ Ｓｏ. ｌｏｌ-９１; Ｒ. Ｋｏｔｚｓｃｈｋｅ｢
Ａｌｌｇｅｍｅｉｎｅ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ
ａｅｓ MiｔｔｅｌａｌｔｅｒＳy Ｓ. ５８４ ｆ. ｕ. ａ.をみよ。
そうした経路や規模の多様性はともかく、一般に中世「都市」の内部では、購買力として放出される封建的余剰生
産物やその転化形態たる商業利潤を起点に局地内での分業関係がつくりだされ、それを土台に多かれ少なかれ種々な
同職ギルドが形づくられて、その結果、典型的なばあいには、「都市」共同体はあまたの、身分的な階層序列に編制さ
68
69
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産業資本の形成
第２章
第一表
−４− −−−− − −− Ｓり111111 −−
Ｍ −−− −−ｊ−−−− −−− − −−
ｉ
ギルド名
成員数
高昭
１都市貴族
２毛織物商
３貨幣鋳造人
４葡萄酒商
５香料雑貨商
６葡萄酒醸造人
７パ ン 屋
８鍛 冶 屋
９鞣 皮 屋
10毛 皮 屋
11食料品屋
12肉 屋
13大 工
14馬 具 屋
15織 布 工
16魚屋及び船頭
17無 所 属
91
78
56
121
181
213
70
172
193
123
159
97
219
76
93
95
484
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
合 計
2521
第二表
15人
15
13
1
-
44
靭ﾚr成員(鯔沿携拓)
・一曜総難)
都市貴族(騎士および城民)
市 長 ・
計
れた、部分共同体たる諸ギルドの綜合体ともいうべき様相を呈するようになった。一例をあげてみよう。十五世紀の
初頭西南ドイツの自由都市バーゼル（現在はスイス）には一五の商工業者の同職ギルドがあり、それらは、地代収入で
生活する富裕な「都市貴族」Ｐａｔｒiｚiaｔを頂点に、また、どのギルドにも所属せぬ貧民たちを最下層にふまえて、だい
たい第一表のような序列に編制されていた。そのうち、２から５までの四ギルドは、社会的にはむしろ都市貴族にち
かい富裕な商人たちからなる「商業ギルド」Ｈａｎｄｅｌｓｚｉｉｎｆｔｅ’他の一一ギルドは手工業者を中心に局地内の小売商人
をも包含する「手工業ギルド」Ｈａｎｄwｅｒｋｓｚｉｉｎｆｔｅで、いずれのギルドにも所属せぬ最下層の人々のうちには貧しい日
雇や独立の世帯をもつ徒弟たち、それに来住した他所者、乞食、ユダヤ人などが含まれていた。また右の一五のギル
ドは当時、バーゼル市の最高権力として立法・行政を司る市参事会に第二表のような数の議員を送っていた。
＊ 念のためにいえば、局地内での分業関係はギルドという部分共同体形成の土台を提供したが、それを生みだす原因であったと
いうことはできない。というのは、後出、一五で論ずるように、歴史上同じく局地内的分業という土台のうえでギルドの形成
が逆に阻止されていくという事実もまた見いだされるからである。ギルド（およびギルド類似の共同体）形成の原因はむしろ、
一般的にいえば、個々の小経営に対して「利得の可能条件」Ｅｒwｅｒｂｓｃｈａｎｃｅｎ（ヴェーバー）が限られているために、競争が破滅
丶丶丶丶丶 丶丶丶丶丶丶
を招来するということであり、当面の「中世都市」の事情に即していえば、「都市」市場を究極において支える購買力が、局地
内分業関係の内部から与えられるのではなく、外部から封建的余剰生産物ないしその転化形態たる商業利潤の放出という限定
されたものとして与えられている、ということにほかならない。Ｖｇｌ. Ｗｅｂｅｒ｢ Ｗｉｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢
Ｓ. １３７ ｆ. (ウェーバー、
黒正・青山訳、前掲書、上、二八六頁）
＊＊ 、冖゛（ｊｅｅｒｉｎｇ｢ Ｈａｎｄｅｌ
ｕｎｄ Ｉｎｄｕｓｔｒｉｅ ｄｅｒ Ｓｔａｄｔ
Ｂａｓｅｌ｢ ＳＳ. ２９｢４８ ; Ｇ. ｖｏｎ Ｓｃｈｏｎｂｅｒｇ｢ Ｆｉｎａｎｚｖｅｒｈａｌｔｎｉｓｓｅ ｄｅｒ Ｓｔａｄｔ Ｂａｓｅｌ
ｉｍ
１４. ｕｎｄ 15. Ｊａｈｒｈｕｎｄｅｒｔ｢
ＳＳ. ２３ ff.;梶山力『近代西欧経済史論』一八七―二○二頁、参照。念のため匸言しておくと、第一表
中「毛織物商」と訳出したものの原語はＫａｕｆｌｅｕｔｅであるが、その実体はドイツ経済史上周知の（ｊ-ｅwａｎｄｓｃｈｎｅｉｄｅｒ、また「香
料雑貨商」と訳出したものはこれまたドイツ経済史上周知のＫｒａｍｅｒで、イタリアを経由してもたらされた東方の香料・薬味、
雑貨、諸種の織物を中心に、毛織物と魚類をのぞく一切を取扱った。食料品屋と訳出したのはＧａｒｔｎｅｒであって、これには魚
や野菜などの小売をする極めて貧しい（り３ヨー「たちも所属していた。
このような中世「都市」の組み立てのなかにあって、個々のギルドは部分共同体として、その成員たちの生活が競
争によって共倒れとなることを防ぐために、対内的には経営上の諸条件、たとえば手工業ならば道具や原料の数量、
雇人の数、販売の場所や方法を統制して成員たちの伝統的な生活水準とその平等をできるだけ維持するようにつとめ、
対外的には「都市」の禁制領域内における一定の職業分野の営業を独占し、ギルド外の人々（他のギルドをも含めて）
がそれを営むことを努めて排除した（いわゆる「ギルド強制」Ｎｕｎｆｔ-ｚwａｎｇ ｕｎｄ -ｂａｎｎ）。さらにギルドはその代表を
「都市」全体の自治機関たる「市参事会」Ｓｔａｄｔｒａｔに送ってそれぞれ自己の利害を主張し、そうした個々のギルドの利
害の均衡のうえに、「都市」経済は多かれ少なかれ局地的な自給自足への傾向を含む特異な共同体的構成にうちだされ
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産業資本の形成
第２章
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ていったのである。このような個々のギルドの正式の成員たる人々は、「親方」Ｍｅｉｓｔｅｒ｢ maｓｔｅｒ｢ maiｔｒｅとよばれる、
独立の商人や手工業者たる市民たちで、それぞれ「都市」内の一定の場所に自分の「店」あるいは「仕事場」をもち、
とくに手工業親方のばあい、自己の家父長制支配のもとにある住込みの「徒弟」」ｅｈｒling｢ ａｐｐｒｅｎｔｉｃｅ｢ ａｐｐｒｅｎｔiや、通
いの「雇職人ＪＧｅｓelle｢ ｊｏｕｒｎｅｙｍａｎ｢ ｃｏｍｐａｇｎｏｎなど二、三人を手だすけとして仕事に携わった。こうした「親方」と
その雇人たちの関係は「都市」成立の当初には比較的暢やかな、余裕のあるものであった。何びともしばらく「徒弟」
として住みこみ、職を手につけると、容易に「親方」となることができたし、ギルドの側でもその成員として加入す
るようむしろ強制さえした。しかし「都市」の成長によって手工業者の数が増大し、競争もまた激しくな＆とともに
「親方」への上昇はしだいに窮屈な枠のなかにはめこまれていった。一定の「徒弟」期間（たとえばイギリスでは普通
七年、大陸では三年ないし八年）を終えたあとで、さらに数年の間「雇職人」として「親方」のもとで働きながら腕を
みがき、その上で作ったいわゆる「親方作品」Ｍｅｉｓｔｅｒｓｔｉｉｃｋ｢
maｓｔｅｒｐｉｅｃｅ｢ ｃｈｅｆ-ｄ'ｏｅｕｖｒｅが審査を通過すれば、加入金
を支払って「親方」となる、というような形になっていった。こうした制限はその後種々な形でますます厳しいもの
となっていき、十四世紀後半ともなると、’「親方」となる見込みのない固定的な「雇職人」層が、本来のギルドに対立
して、そこここに自分たちだけのコ雇職人組合」（Ｘｅｓｅｌｌｅｎｖｅｒｂａｎｄ｢ ｊｏｕｒｎｅｙｍｅｎ'ｓ ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ｢ ｃｏｍｐａｇｎｏｎｎａｇｅを組織
＊＊＊＊
するというような事態がみられるようになるが、これについては別の関連で述べることとしよう。
＊ こうした中世「都市」の独自な構成については上掲の諸論著のほか、とくにＭａｘ
Ｗｅｂｅｒ｢ Wiｒｔｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢
ＳＳ. １２７-４０
（ウェーバー、黒正・青山訳、前掲書、上、一七一一二八九頁ごＧ. ｖｏｎ
Ｓｃｈｏｎｂｅｒｇ｢ Ｚｕｒ wiｒｔｓｃｈａｆｔｌｉｃｈｅｎ Ｂｅｄｅｕｔｕｎｇ
ｄｅｓ ｄｅｕｔ-
ｓｃｈｅｎ Ｚｕｎｆｔｇｅwｅｒｂｅｓ im
Miｔｔelalｔｅｒ｢ Ｊａｈｒｂｉｉｃｈｅｒ
ｆｉｌｒ Ｎａｔｉｏｎａｌｏｈｍｏｍｉｅ ｕ. Ｓｔａｔｉｓｔｉｋ｢
ＩＸ｢ １８６８ ; Ｅ. Ｍａｒｔin Ｓａｉｎｔ-」ｅｏｎ｢ Ｈｉｓｔｏｉｒｅ
ｄｅｓ ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎｓ ｄｅ mｔｔｉｅｒ｢ ４. ｅｄ.｢ １９４１; 」.
Ｆ. Ｓａｌｚｍａｎ｢ Ｅｎｇｌｉｓｈ Ｉｎｄｕｓｔｒｙ ｏｆ
ｔｈｅ Ｍｉｄｄｌｅ Ａｇｅｓ｢ １９２３; Ｄｏ.｢
Ｅｎｇｌｉｓｈ Ｔｒａｄｅ ｉｎ
ｔｈｅ Ｍｉｄｄｌｅ Ａｇｅｓ｢ １９３１; Ｇ.
Ｕｎwin｢ Ｔｈｅ Ｇｉｌｄｓ ａｎｄ Ｃｏｍｐａｎｉｅｓ
ｏｆ Ｌｏｎｄｏｎ｢ １９０８ ; Ａ. Ｄｏｒｅｎ｢
Ｓｔｕｄｉｅｎ ａｕｓ ｄｅｒ ｆｌｏｒｅｎｔｉｎｅｒ
Wiｒｔ-
ｓｃｈａｆｔｓｇｅｓｃｈｉｃｈｔｅ｢ ２ Ｂｄｅ.｢ １９０１-０８などをみよ。
＊＊ このような典型的構成は、後述するように、問屋制度の発達に伴りて種々の歪められた姿のものに転化していく。ことにイ
ダリア諸都市、とくにフィレンツェではギルドは問屋制度のいち早い発展のために初発からほとんど典型的な構成をとること
はなかった。これらの点については、後出、一四田を参照。
＊＊＊ 大陸、とくにドイツでは、若干の職種のギルドで「雇職人」たちが修業のために他の諸都市を遍歴する習慣ができ、かなり
後まで存続した。シューベルトの歌曲などに現われてくるのはそれである。イギリスではこの遍歴の習慣はみられない。
({joｕｒｎｅｙma旦(雇職人）の{(joｕｒｎｅｙ))は旅行ではなく、フランス語の(<joｕｒｎｅｅ>）（一日仕事、日給）と同義だとされている。
＊＊＊＊ 後出、一四師を参照。
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