第３章 封建制から資本主義への移行 −その要旨−
すでに予定の紙数もつきたので、本章はただ簡単に要旨を記すにとどめる。
(1) 一般に封建的「共同体」（＝いわゆるＮwｉｎｇ ｕｎｄ Ｂａｎｎの体系）を土台としてうちたてられている「封建的土地所
有制」は、歴史上、まず「古典荘園」（＝いわゆるＶ
1111kaｔｉｏｎｓｖｅｒｆａｓｓｕｎｇ）を基礎とする「領主制」として出現し、「分権
的封建制」（＝いわゆるｆｅｕｄａｌｅｒ Ｓｔａａｔ）がこれに照応する。ところで、「古典荘園」はその内部で生産諸力（＝社会的分
業）が成長するとともに解体して、一方ではいわゆる「純粋荘園」（＝ｒｅｉｎｅ Ｇｒｕｎｄｈｅｒｒｓｃｈａｆｔ）に移行し、他方では「中世
都市」（＝ギルド制）を成立せしめつつ、その基礎の上に、「領有制」（＝ｒ乱ｅｓｈｅｒｒｓｃｈａｆｔ）という形態で「領主制」の新
たな体系が展開される。「集権的封建制」（＝いわゆるＳｔａ乱ｅｓｔａａｔ）これに照応する。領有と土地所有の分裂の開始。
(2) 「領有制」の内部における生産諸力（＝社会的分業）のいっそうの発展は、ついに、「領有制」の枠のなかにもは
や盛りきれないような小商品生産（＝小ブルジョア的生産関係）と、さらにマニュファクチャー（＝産業資本）の萌芽を
さえ、生みだし、ここに「領有制」、いな「封建的土地所有制」一般の危機が醸成されてくる。これがいわゆる「封建
制の危機」である。ところが、そうした新たな生産諸力（＝市場関係）の発展がまだ十分に高度でないため、小ブルジ
ョアｎブルジョア層の上層がいわゆる上昇・転化の現象をひきおこし、いわゆる「寄生地主制」という形態で「封建的
土地所有制」を再生産するようにもなる。こうして、小ブルジョアＨブルジョア層のある限度内での成長が、かえって
ある程度まで「封建的土地所有制」を補強する結果となり、ここにいま一度「封建制」が再編・強化される（いわゆる
半什封建的土地所有）。「絶対王制」（＝ａｂｓolｕｔｅ Ｍｏｎａｒｃｈｉｅ)これに照応する。領有と土地所有の対極的分裂。
(3) ところで、「絶対王制」の内部におけるなお一層の発展は、ついにその枠のなかに、いかにしても盛りきれない
ほどのブルジョア的発展（＝産業資本の成長）をよびおこし、市民革命によって「絶対王制」が、したがって「封建制」
それ自体が揚棄されるにいたる。市民革命のさいには、当然に、まず「封建的土地所有制」の廃棄が企図され、何らか
の形で「土地制度」の変革がおこなわれる。そしてそれがどのような形で、どこまで徹底しておこなわれるかは、そ
の国におけるその後の「資本主義」の発達に決定的な影響をあたえる。ついで、それに照応して、ブルジョアジー（＝
産業資本およびその周辺）は独自な「金融制度」をうちたて、それによって可能態における資本としての貨幣の供給
を総体として掌握し、支配の新たな基礎を確立する。このようにして市民革命を終了した産業資本はやがて自生的に
「産業革命」をひきおこし、これによって「封建制から資本主義への移行」過程は完了する。
(4) ただし、こうした「封建制から資本主義への移行」は各国において同時に、かつ同じ度合でおこなわれるわけ
ではない。波頭にたつイギリスを先頭に、さまざまな度合で「移行」をとげつつある国々が、またほとんど「移行」へ
の契機をそれ自体のなかにはらんでおらない国々さえもが、互いに対立しあい、また互いに絡みあいつつ、しだいに
「世界資本主義」発展の網のなかに編みこまれていく。いわゆる不均等発展の同時存在である。そのばあい、後進諸
国はさまざまな外圧の影響の下に「移行」をとげるのであるが、そのあるものは、「絶対王制」の構成とその基礎であ
る半ｎ封建的「寄生地主制」をなしくずし的に変化させ、かつ頑強に維持しながら、「世界資本主義」発展の内部で、
その一環として「資本主義」の特殊な構成をうちだすことがある。広い意味でのプロシア型の「移行」である。