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In order to understand this shift from mother to father, we must consider the essential differences in quality between motherly and fatherly love.

母親から父親へのこの推移を理解するために，われわれは母親の愛と父親の愛の間の本質的な差を考えなければならない。

We have already spoken about motherly love.

われわれは，すでにこれまで，母親の愛について語ってきた。

Motherly love by its very nature is unconditional.

母親の愛の真の姿は，無条件的であることである。

Mother loves the newborn infant because it is her child, not because the child has fulfilled any specific condition, or lived up to any specific expectation.

母親が新しく生まれた子供を愛するのは，その子供が特別な条件を満たしたからとか，あるいは，なにか特別な期待に応じた行動をしたからというような理由からではない。母親はそれが自分の子供であるという理由で愛しているのである。

(Of course, when I speak here of mother's and father's love, I speak of the "ideal types"--in Max Weber's sense or of an archetype in Jung's sense--and do not imply that every mother and father loves in that way.

もちろんここで私が父の愛とか母の愛とかを語る時には《理想的な型》--マックス・ウェーバー的の意味において，あるいはユングの意味における原型--について語っているのであり，あらゆる母親とあらゆる父親がこのような仕方で愛しているということを意味しているのではない。

I refer to the motherly and fatherly principle, which is represented in the motherly and fatherly person.)

私が述べているのは，母親のような人，父親のような人において示されている，母性的原則及び父性的原則についてなのである。

Unconditional love corresponds to one of the deepest longings, not only of the child, but of every human being;

無条件的な愛は，児童ばかりではなく，あらゆる人間のもっとも強い熱望のひとつである。

on the other hand, to be loved because of one's merit, because one deserves it, always leaves doubt;

一方，恩恵によって愛されること，愛を受けるに足るからというので愛されるということは，いつも後に疑問を残す。

maybe I did not please the person whom I want to love me, maybe this, or that--there is always a fear that love could disappear.

もしかしたら私は愛して欲しい相手を満足させていないのではあるまいか，この人であれ，あるいはあの人であれ−−そこにはいつも愛が失われるのではないかという恐れがあるからである。

Furthermore, "deserved" love easily leaves a bitter feeling that one is not loved for oneself, that one is loved only because one pleases, that one is, in the last analysis, not loved at all but used.

さらに《報いとして与えられる》愛では，受ける人は，自分自身のために愛されるのでなく，相手を喜ばしたという理由のみで愛されているのだということになり，究極まで分析してみれば，その人はただ利用されたのみであって，結局は愛されていたのではないというにがい感情を容易に残すことになる。

No wonder that we all cling to the longing for motherly love, as children and also as adults.

われわれすべてが，児童としてもあるいはまた成人としても，母性愛を熱望し，これに執着するのは不思議ではない。

Most children are lucky enough to receive motherly love (to what extent will be discussed later).

大部分の児童は母性愛を受けるという点では十分に恵まれている（どの程度までかは後にのべる）。

As adults the same longing is much more difficult to fulfill.

しかし，大人にとっては，同じ切望を満たすことは，より困難なのである。

In the most satisfactory development it remains a component of normal erotic love;

それはもっとも十分な発達をとげた愛において，正常なエロチックな愛の成分をなすものとして存続している。

often it finds expression in religious forms, more often in neurotic forms.

しかしそれがしばしば見られるのは，宗教的な形式においてであり，よりいっそうしばしば見られるのは神経症的な形式においてである。

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