刑法

◎

　誤りはどれか。

１

　不動産の所有権を移転したが，まだ移転登記をしていないため，他人に譲渡するつもりで，自己に所有権があることを理由として，所有権移転登記請求に対して抗弁した場合，横領罪が成立する。

２

　不動産に共有登記がなされていたが，１人が単独登記に改めた場合，横領罪が成立する。

３

　路傍に，窃盗犯人が捨てた自転車があっだので，それに乗って家に帰った場合は，占有離脱物横領罪となる。

４

　美容院で客が預けた傘を店員が間違えて差し出しだのを，自分の傘よりも上等なのでこれさいわいと持ち帰った場合は，占有離脱物横領罪となる。

５

　新聞配達人が集金した帰途，酒が飲みたくなりその金を使うつもりでバーに入って座り，酒を注文した。業務上横領罪が成立する。

　正　解　　　２

◎	誤りはどれか。 (4459) 【横領罪】 **
１	不動産の所有権を移転したが，まだ移転登記をしていないため，他人に譲渡するつもりで，自己に所有権があることを理由として，所有権移転登記請求に対して抗弁した場合，横領罪が成立する。正しい。 (4459A) 《》　不動産の所有権を移転したが，まだ移転登記をしていないため，他人に譲渡するつもりで，自己に所有権があることを理由として，所有権移転登記請求に対して抗弁した場合，横領罪が成立する。 (4459A) 《》 ※←　横領罪の占有は，濫用のおそれのある支配力であるから，法律的支配が含まれる(大判大４・４・９)。したがって，不動産の登記簿上の所有名義人は，これを占有しているといえるのである(最判昭34・3・13)。そして，抗弁により領得意思が客観的に認められるから横領罪が成立する(最決昭35･12･27)。なお，判例は，自己の占有する他人の物について自己の物として民事訴訟を提起する行為も横領罪に該当するとしている(最判昭25・9・22)。（法条）。（最判昭）。
２	不動産に共有登記がなされていたが，１人が単独登記に改めた場合，横領罪が成立する。誤り。 (4459B) 《》　不動産に共有登記がなされていたが，１人が単独登記に改めた場合，横領罪が成立する。 (4459B) 《》 ※←　共有登記では，不動産に対する法律的処分可能性がなく，濫用のおそれのある支配力があるとはいえない（人判明45・7・1）。（法条）。（最判昭）。
３	路傍に，窃盗犯人が捨てた自転車があっだので，それに乗って家に帰った場合は，占有離脱物横領罪となる。正しい。 (4459C) 《》　路傍に，窃盗犯人が捨てた自転車があっだので，それに乗って家に帰った場合は，占有離脱物横領罪となる。 (4459C) 《》 ※←　窃盗犯人が乗り捨てた自転車は占有離脱物である(東京高判昭34･8･15参照)。なお，罪名は遺失物等横領罪と呼ばれる。（法条）。（最判昭）。
４	美容院で客が預けた傘を店員が間違えて差し出しだのを，自分の傘よりも上等なのでこれさいわいと持ち帰った場合は，占有離脱物横領罪となる。正しい。 (4459D) 《》　美容院で客が預けた傘を店員が間違えて差し出しだのを，自分の傘よりも上等なのでこれさいわいと持ち帰った場合は，占有離脱物横領罪となる。 (4459D) 《》 ※←　誤って渡された傘は，｢その他占有を離れた他人の物｣といいうる。（法条）。（最判昭）。
５	新聞配達人が集金した帰途，酒が飲みたくなりその金を使うつもりでバーに入って座り，酒を注文した。業務上横領罪が成立する。正しい。 (4459E) 《》　新聞配達人が集金した帰途，酒が飲みたくなりその金を使うつもりでバーに入って座り，酒を注文した。業務上横領罪が成立する。 (4459E) 《》 ※←　領得意思の発現があるので業務上横領罪が成立する。（法条）。（最判昭）。
	正　解　　　２