供託

◎

　弁済供託の供託原因に関する次の記述中，誤っているものはどれか。

１

　土地の賃借人が弁済期に地代を支払うために賃貸人の住所に赴いたところ，賃貸人が不在であった場合には，賃借人は，再度弁済の提供をしない限り，受領不能を供託原因とする供託をすることができない。

２

　毎月末日までに当月分の家賃を支払う旨の約定のある場合には，賃借人は，当該月に入ればいつでも賃貸人に弁済の提供をし，その受領を拒否されたときは，受領拒否を供託原因として供託をすることができる。

３

　確定日付のある　２通の債権譲渡通知が債務者に同時に送達された場合には，債務者は，債権者不確知を供託原因とする供託をすることができない。

４

　公営住宅の家賃が値上げされた場合であっても，賃借人は，従前の家賃を提供し，その受領を拒否されたときは，受領拒否を供託原因として供託をすることができる。

５

　家賃の減額請求権を行使した賃借人が相当と認める額に減じた家賃を賃貸人に提供し，その受領を拒否された場合には，受領拒否を供託原因とする供託をすることはできない。

　正　解　　　１

◎	弁済供託の供託原因に関する次の記述中，誤っているものはどれか。 (0312) 【弁済供託の供託原因】 **
１	土地の賃借人が弁済期に地代を支払うために賃貸人の住所に赴いたところ，賃貸人が不在であった場合には，賃借人は，再度弁済の提供をしない限り，受領不能を供託原因とする供託をすることができない。誤り。 (0312A) 《賃貸人の不在》　土地の賃借人が弁済期に地代を支払うために賃貸人の住所に赴いたところ，賃貸人が不在であった場合，賃借人は，再度弁済の提供を［しなくても：×しない限り］，受領不能を供託原因とする供託をすることが［できる］（大判昭9.7.17）。 (0312A) 《賃貸人の不在》 ※←　受領不能とは、債権者が弁済を受領できない場合を意味し、その不在が一時的か否かを問わず、受領不能に該当するから。
２	毎月末日までに当月分の家賃を支払う旨の約定のある場合には，賃借人は，当該月に入ればいつでも賃貸人に弁済の提供をし，その受領を拒否されたときは，受領拒否を供託原因として供託をすることができる。正しい。 (0312B) 《毎月末日まで》　毎月末日までに当月分の家賃を支払う旨の特約のある場合，賃借人は，当該月に入ればいつでも賃貸人に弁済の提供をし，その受領を拒否されたとき，受領拒否を供託原因として供託することができる（民法494条前）。 (0312B) 《毎月末日まで》 ※←　受領拒否とは、債務者が適法な弁済提供をしたにも関わらず、債権者が受領しなかった場合を意味し、たとえば、７月分の家賃は、７月１日から７月31日までの間に支払えばよいから。
３	確定日付のある　２通の債権譲渡通知が債務者に同時に送達された場合には，債務者は，債権者不確知を供託原因とする供託をすることができない。正しい。 (0312C) 《同時送達》　確定期日のある２通の債権譲渡通知が債務者に同時に送達された場合，債務者は，債権者不確知を供託原因とする供託をすることができない（最判昭55.1.11）。 (0312C) 《同時送達》 ※←　いずれも債権者であり、債権者は確定しているので、債務者は任意に、どちらかの債権者に対して弁済すれば足りるから。
４	公営住宅の家賃が値上げされた場合であっても，賃借人は，従前の家賃を提供し，その受領を拒否されたときは，受領拒否を供託原因として供託をすることができる。正しい。 (0312D) 《公営住宅の家賃》　公営住宅の家賃が値上げされた場合であっても，賃借人は，従前の家賃を提供し，その受領を拒否されたとき，受領拒否を供託原因として供託することができる（借地借家法32条2項）（昭38.5.18民甲1505号認可）。 (0312D) 《公営住宅の家賃》 ※←　その利用関係は、私法上の賃貸借関係と性質を異にするものではないから。
５	家賃の減額請求権を行使した賃借人が相当と認める額に減じた家賃を賃貸人に提供し，その受領を拒否された場合には，受領拒否を供託原因とする供託をすることはできない。正しい。 (0312E) 《家賃の減額請求》　家賃の減額請求権を行使した賃借人が相当と認める額に減じた家賃を賃貸人に提供し，その受領を拒否された場合，受領拒否を供託原因とする供託をすることができない（借地借家法32条3項）（昭46.9.21全国供託課長会同決議）。 (0312E) 《家賃の減額請求》　＝　(1909A) ※←　家賃の減額を正当とする判決が確定するまで，賃貸人が相当と認める額の家賃を請求できるので（借地借家法32条3項本文），賃借人が相当と認める額を提供したとしても，債務の本旨に従った弁済の提供とは言えないから（民法493条）。
	正　解　　　１