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(2802A) 《》
※←　（法条）。「自己の占有する」について，横領罪の「占有」は，濫用の恐れのある支配力を理由に，事実上の支配のみならず，法律上の占有も含まれる（最判昭30・12・26等）。そのため，登記名義人たる甲は，不動産に対する法律上の占有があり，「自己の占有する」をみたす。また，「他人の物」について，甲は乙に不動産を売却しており，これをみたす。そして，甲による丙への売却行為は不法領得の意思の発現行為たる「横領」に当たるため，甲に横領罪が成立する。

(2802B) 《》
※←（法条）。判例（最決昭55・ 7 ・15）は，同様の事案において，所有権留保が実質的には担保であるとしても，売主に留保された所有権はなお刑法的に保護されるべきであるから，「他人の物」に当たり，横領罪が成立するとしている。よって，甲に横領罪が成立する。

(2802C) 《》
※←　（法条）。判例（最判昭36・10・10）は，盗品の売却代金の領得について，横領罪の成立を認めている。その理由として，学説では，売却代金の引渡しという委託信任関係は刑法上保護すべきであるということが挙げられている。よって，甲に横領罪が成立する。

(2802D) 《》
※←　（法条）。甲が自己の所有する不動産を乙に売却しているため，不動産は「他人の物」となる。また，アのとおり，登記名義があることで「自己の占有する」を満たす。そして，「横領」とは，判例（大判大6・7・14）によると不法領得の意思の発現行為をいう。抵当権設定契約を仮装し，不実の抵当権設定仮登記をすることもこれに含まれ，かかる要件を満たす。よって，甲に横領罪が成立する。

(2802E) 《》
※←　（法条）。自己所有の不動産に抵当権を設定しただけでは,いまだ不動産が「他人の物」になったとはいえず，丙に対する二重抵当により乙の抵当権を侵害するにすぎない本件において，横領罪は成立しない。判例は，このような事案において背任罪の成立を認める（最判昭31・12・ 7百選1169事件）。