憲法第25条の【生存権】を具体化する趣旨の法律が制定された以上，その法律は憲法第25条と一体をなし，かかる法律の定める保護基準を正当な理由なくして引き下げることは憲法上許されない。

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(2808A) 《保護基準の引下げ》
※←　（憲法条）。憲法25条１項は，「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定している。そのため，同条が禁止しているのは「健康で文化的な最低限度の生活」の水準を下回ることだけであり，正当な理由を必要とする根拠は同条から導くことができないと考えることも可能である。

(2808B) 《立法裁量》
※←　（憲法条）。最大昭和57年７月７日判決（堀木訴訟））は，健康で文化的な最低限度の生活の具体的内容は「多方面における複雑多様なしかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする」ため，具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は，立法府の広い裁量に委ねられているとした。そのため，裁量とした以上，正当な理由の有無によって保護基準を引き上げることが憲法上許されないかの判断をするわけではない。

(2808C) 《過去の判断》
※←　（憲法条）。本問の見解からすれば，正当な理由がなければ，保護基準の引下げができない以上，過去に国会で立法したものが，将来の国会を拘束する。そのため，生存権を具体化する趣旨の法律については，過去の国会の判断が現在や将来の国会を拘束することになる。しかし，25条立法だけをここまで保護する積極的理由付けがないため，生存権を具体化する趣旨の法律ではない場合には，同様の議論ができないため，過去の国会の判断が現在や将来の国会を拘束するわけではない。