公法

◎	憲法第89条後段の「公の支配」の意義に関し，「国又は地方公共団体が当該事業の予算を定め，その執行を監督し，さらにその人事に関与するなど，その事業の根本的方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有する」ことを要すると解する見解があるが，次のアからウまでの各記述について，かかる見解と同じ立場からの記述には○を，異なる立場からの記述には×を付した場合の組合せを，後記１から８までの中から選びなさい。 (2719) 【憲法第89条後段；厳格説】　* 　憲法89条後段は，「公金その他公の財産は，…公の支配に属しない…事業に対し，これを支出し，又はその利用に供してはならない」としている。後段の趣旨は明確ではなく，①私的な事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止するための規定と解する立場と，②公財産の濫費を防止し，慈善事業等の営利的傾向ないし公権力に対する依存性を排除するための規定と解する立場がある。後段の趣旨について①の立場をとれば「公の支配」について厳格説をとることとなる。　*
ア	慈善，教育，博愛の事業を行うのは，通常，法律に基づき国の監督を受ける公益法人であり，学校法人も公益法人として法的規制を受けるので，「公の支配」に属する。誤り。 (2719A) 《名目的監督》　慈善，教育，博愛の事業を行うのは，通常，法律に基づき国の監督を受ける公益法人であり，学校法人も公益法人として法的規制を受けるが，「公の支配」に［属するとはいえない］。 (2719A) 《名目的監督》 ※←　私立学校法59条は「別に法律で定めるところにより，学校法人に対し，私立学校教育に関し必要な助成をすることができる」と定め，私立学校振興助成法は私立学校に対する助成措置を具体化している。同法の12条では微温的，名目的な監督（報告を徴し，勧告を行うこと）が定められているのみである。厳格説によれば，事業の根本的な方向に重大な影響を及ぼし得るような権力を有する必要があるため，名目的監督では足りず,公の支配に属しないおそれが生じる。このため「学校法人も公益法人として法的規制を受けるので,『公の支配』に属する」とはいえない。したがって異なる立場といえる。
イ	現行法の私立学校に対する助成については，監督官庁の権限が報告を徴したり，勧告を行ったりすることに限られているので，違憲の疑いがある。正しい。 (2719B) 《違憲の疑い》　現行法の私立学校に対する助成については，監督官庁の権限が報告を徴したり，勧告を行ったりすることに限られているので，違憲の疑いがある。 (2719B) 《違憲の疑い》 ※←　厳格説によれば公の支配に属しないおそれがあり，違憲の疑いがある。
ウ	憲法第89条後段の立法趣旨は，私的事業の自主性を確保するために公権力による干渉の危険を除こうとすることにある。正しい。 (2719C) 《私的事業の自主性》　憲法第89条後段の立法趣旨は，私的事業の自主性を確保するために公権力による干渉の危険を除こうとすることにある。 (2719C) 《私的事業の自主性》 ※←　厳格説をとる場合，89条後段の趣旨について①私的な事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止するための規定と解する立場をとることとなる。したがって，私的事業の自主性確保・公権力による干渉の危険の除去は厳格説をとる立場からの理解である。したがって本記述は同し立場からの記述である。
	１　ア○ イ○ ウ○ 　　　２　ア○ イ○ ウ×　　　３　ア○ イ× ウ○　　　４　ア○ イ× ウ× 　　　５○ア× イ○ ウ○ 　　　６　ア× イ○ ウ×　　　７　ア× イ× ウ○ 　　　８　ア× イ× ウ×

平27

19

平26