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(2709A) 《私有財産制》
※←　通説は，憲法29条１項が［財産権は，これを侵してはならない］と規定する意味について，個人の現に有する具体的な財産土の権利の保障と，個人が財産権を享有しうる法制度，つまり私有財産制の保障という２つの側面があるとする。

(2709B) 《財産権の内容》
※←　財産権とは，財産的価値をもつすべてのものを指し，所有権その他の物権，特許権，著作権などの知的財産権，鉱業権，漁業権などすべてを含む。

(2709C) 《公共収用》
※←　財産権は，18世紀末の近代憲法においては，個人の不可侵の人権と理解されており，フランス人権宣言も「所有権は，神聖かつ不可侵の権利である」と定めている。もっともフランス人権宣言にも，損失補償の規定は存在している。それは，損失補償の対象として予定される公共収用について，そこで生じた個人の損失を社会全体で負担しなければあまりにも公平の原理に反することによる。よって，近代憲法の時代からすでに損失補償規定は存在しており，福祉国家理念を背景にして制定されているわけではない。
　なお，29条２項は，社会国家理念にたった財産権保障の在り方を示すものであるとされる。これは，19世紀のワイマール憲法が，「所有権は義務を伴う。その行使は,同時に公共の福祉に役立つべきである。」と規定しているのが典型である。
　以上より，29条３項の規定は，福祉国家理念を背景にして制定されるに至ったものではない。