公法

◎	内閣及び内閣総理大臣に関する次のアからウまでの各記述について，正しいものには○，誤っているものには×を付した場合の組合せを，後記１から８までの中から選びなさい｡ (2816) 【内閣及び内閣総理大臣】　* ** 　* ** 　*
ア	大日本帝国憲法において内閣総理大臣は同輩中の首席にすぎなかったのに対し，日本国憲法が内閣総理大臣に首長としての地位を認め，その権限を強化しているのは，内閣の一体性と統一性を確保し，内閣の国会に対する連帯責任の強化を図るものである。正しい。 (2816A) 《内閣の一体性》　大日本帝国憲法において内閣総理大臣は同輩中の首席にすぎなかったのに対し，日本国憲法が内閣総理大臣に首長としての地位を認め，その権限を強化しているのは，内閣の一体性と統一性を確保し，内閣の国会に対する連帯責任の強化を図るものである。 (2816A) 《内閣の一体性》 ※←　（憲法68条）。明治憲法においては，内閣総理大臣は，「同輩中の首席」にすぎず，他の国務大臣と対等の地位にあるにすぎなかったため，閣内の意見不統一の場合は衆議院を解散するか，総辞職せざるを得なかった。そこで，日本国憲法は，内閣総理大臣に首長としての地位を認め，国務大臣の任免権（68条）や72条の権限を与えて，内閣の一体性と統一性を確保し，内閣の国会に対する連帯責任の強化を図っている。
イ	判例によれば，内閣総理大臣は，閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても，少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り，行政各部に対し，随時その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導，助言等の指示を与える権限を有する。正しい。 (2816B) 《指揮監督権》　内閣総理大臣は，閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても，少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り，行政各部に対し，随時その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導，助言等の指示を与える権限を有する（最判平7.2.22）。 (2816B) 《指揮監督権》 ※←　（憲法条）。判例は，内閣総理大臣の指揮監督権について，閣議にかけて決定した方針が存在しない場合でも，「少なくとも，内閣の明示の意思に反しない限り，行政各部に対し，随時，その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導，助言等の指示を与える権限を有する」と解している（ロッキード事件丸紅ルート（最判平7.2.22））。
ウ	内閣は，憲法第73条第1号により法律を執行する義務を負うから，たとえ内閣が違憲と判断する法律であっても，その法律を執行しなければならず，また，最高裁判所が違憲と判断した場合でも，国会がその法律を改廃しない限りは，その執行をしなければならない。誤り。 (2816C) 《法律の執行》　内閣は，憲法第73条第1号により法律を執行する義務を負うから，たとえ内閣が違憲と判断する法律であっても，その法律を執行しなければならない。しかし，最高裁判所が違憲と判断した場合，［内閣はその法律の執行を控え，国会はその法律を改廃することが求められる：×~~国会がその法律を改廃しない限りは，その執行をしなければならない~~］（憲法73条1項）。 (2816C) 《法律の執行》 ※←　（憲法73条1項）。73条１号が内閣の職務として「誠実に」法律を執行することを定めた趣旨は，国会を唯一の立法機関とする一元的立法構造を前提に，他の機関が法律の執行を怠って国会の立法権限が相対化されることを防止する点にある。したがって，内閣による事実上の立法拒否権は排除されていると解され，内閣は自らが違憲と考える法律も執行しなければならないこととなる。本肢前半も同様の内容であり，適切である。　一方で最高裁判所が違憲判断を下した場合は，判決の効力について個別的効力のみを認める通説であっても，国会・内閣ともに最高裁判所の判決を十分尊重することが要求され，内閣はその法律の執行を控え，国会はその法律を改廃することが求められると一般的に考えられている。よって，本肢後半は誤りである。
	１　ア○ イ○ ウ○ 　　　２○ア○ イ○ ウ× 　　　３　ア○ イ× ウ○　　　４　ア○ イ× ウ× 　　　５　ア× イ○ ウ○ 　　　６　ア× イ○ ウ×　　　７　ア× イ× ウ○ 　　　８　ア× イ× ウ×

平28

16

平27