次に掲げる行為のうち，括弧内の犯罪が成立するのはどれか。

• (5827) 【放火罪】

  • **

　他の家族全員が，旅行中に，自宅に放火して焼燬した （非現住建造物放火罪）

• 不成立
  (5827A) 《人の住居》
  　他の家族全員が，旅行中に，自宅に放火して焼燬した場合，［現住建造物放火罪：×非現住建造物放火罪］が成立する（刑法108条）。

  • (5827A) 《人の住居》
    ※←　たまたま旅行に出かけていても，犯人以外の者が住居として使用しているから。　犯人以外の者が現在する必要はない（大判大2.12.24）。

　１人暮しの友人と共謀の上，その友人の居住する家に放火して焼燬した （非現住建造物放火罪）。

• 成立
  (5827B) 《承諾》
  　１人暮しの友人と共謀の上，その友人の居住する家に放火して焼燬した場合，非現住建造物放火罪が成立する（刑法109条）。

  • (5827B) 《承諾》
    ※←　居住者・現在者の全員が承諾した場合には，非現住建造物に放火する場合と同視される。　人とは，犯人以外の者をいうから。

　他人の住宅に延焼させるつもりで，それに隣接する物置小屋に放火したが，豪雨のため，物置小屋だけを焼燬した （非現住建造物放火罪）。

• 不成立
  (5827C) 《現住建造物の放火目的》
  　他人の住宅に延焼させるつもりで，それに隣接する物置小屋に放火したが，豪雨のため，物置小屋だけを焼燬した場合，［現住建造物放火罪の未遂：×非現住建造物放火罪］が成立する。

  • (5827C) 《現住建造物の放火目的》
    ※←　この場合，非現住建造物放火罪の既遂は，現住建造物放火罪の未遂に吸収される。

　飛行場に着陸中の乗客の乗っている飛行機に放火して焼燬した （現住建造物放火罪）。

• 不成立
  (5827D) 《飛行機》
  　飛行場に着陸中の乗客の乗っている飛行機に放火して焼燬した場合，［建造物等以外放火罪：×現住建造物放火罪］が成立する（刑法110条）。

  • (5827D) 《飛行機》
    ※←　飛行機は，現住建造物放火罪の客体ではないから。

　自己所有の物置小屋を燃やすつもりで放火したところ，思いがけない強風のため近所の住宅を焼燬した （現住建造物放火罪）。

• 不成立
  (5827E) 《行為者の故意》
  　自己所有の物置小屋を燃やすつもりで放火したところ，思いがけない強風のため近所の住宅を焼燬した場合，［延焼罪：×現住建造物放火罪］が成立する（刑法111条1項）。

  • (5827E) 《行為者の故意》
    ※←　非現住建造物に放火する認識（故意）はあるが，現住建造物に放火する認識を欠くから。