罪刑法定主義に関する次の記述のうち，正しいものの組合せは，後記１から５までのうちどれか。

• (0923) 【罪刑法定主義】

  • いかなる行為が犯罪とされ，いかなる刑罰が加えられるかを，あらかじめ法律で，明確に定めて置かなければならない。

• 正しい
  (0923A) 《恣意的な刑罰》
  　罪刑法定主義は，一般に「法律なければ犯罪なし，法律なければ刑罰なし」という言葉で表現され，国家による恣意的な刑罰権の行使から国民の権利を護ることをその目的としている（憲法31条，39条前）。

  • (0923A) 《恣意的な刑罰》
    ※←　絶対主義国家における罪刑専断主義に対抗するもの（フォイエルバッハの提唱）。

　罪刑法定主義は，法律主義と事後法の禁止という考え方から成り立っているとみることができる。

• 正しい
  (0923B) 《民主主義と自由主義》
  　罪刑法定主義は，法律主義（民主主義的要請）と事後法の禁止（自由主義的要請）という考え方から成り立っているとみることができる。

  • (0923B) 《民主主義と自由主義》
    ※←　法律主義とは、犯罪と刑罰が、我々国民の代表者である国会により、法律という形式で定められなければならない、ということ。
    　　　事後法の禁止とは、犯罪と刑罰を事前に定めて置かなければならない、ということ。
    　←　民主主義的要請と自由主義的要請。

　法律主義からは慣習刑法の排斥が導き出され，構成要件の内容の解釈や違法性の判断に当たって慣習法を考慮することは許されない。

• 誤り
  (0923C) 《法律主義》
  　法律主義からは慣習刑法の排斥が導き出されるが，構成要件の内容の解釈や違法性の判断に当たって慣習法を考慮することは［許される］（福岡高判昭34.3.31）。

  • (0923C) 《法律主義》
    ◎←　法律主義とは、刑罰法規は，成文の法律で定めなければならない、ということ。

　事後法の禁止からは，刑罰法規の不遡及が導き出され，行為が行われた後に制定した法律で当該行為を処罰することはできない。

• 正しい
  (0923D) 《事後法の禁止》
  　事後法の禁止からは，刑罰法規の不遡及が導き出され，行為が行われた後に制定した法律で当該行為を処罰することはできない。

  • (0923D) 《事後法の禁止》
    ◎←　事後法の禁止とは、刑罰法規は，事前に定めて置かなければならない、ということ。

　法律主義及び事後法の禁止から類推解釈の禁止が導き出され，被告人にとって利益，不利益を問わず，法律が規定していない事項について類似の法文を適用することは許されない。

• 誤り
  (0923E) 《類推適用》
  　法律主義及び事後法の禁止から類推解釈の禁止が導き出され，被告人にとって［不利な方向で：×利益，不利益を問わず］，法律が規定していない事項について類似の法文を適用することは許されない（大判昭6.12.21）。

  • (0923E) 《類推適用》
    ※←　これに対し、被告人の利益となるように，類推適用しても，予測可能性を奪うことにはならないので、許される。