偽造罪に関する次の記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。

• (1126) 【文書偽造罪】

  • 保護法益，客体となる文書

　文書偽造罪が成立するためには，抽象的に文書の信用を害する危険があれば足り，特定の人に対し具体的に損害を与え，又は与える危険があることを要しない。

• 正しい
  (1126A) 《抽象的危険犯》
  　文書偽造罪が成立するためには，抽象的に文書の信用を害する危険があれば足り，特定の人に対し具体的に損害を与え，又は与える危険があることを要しない（大判明43.12.13）。

  • (1126A) 《抽象的危険犯》
    ※←　文書偽造罪は、抽象的危険犯（保護法益）だから。

　公文書偽造罪の客体となる文書は，原本に限られず，原本と同一の内容を保有し，証明文書として原本と同様の社会的機能と信用性を有するものである限り，原本の写しであっても差し支えない。

• 正しい
  (1126B) 《コピーの文書性》
  　公文書偽造罪の客体となる文書は，原本に限られず，原本と同一の内容を保有し，証明文書として原本と同様の社会的機能と信用性を有するものである限り，原本の写しであっても差し支えない（最判昭51.4.30）。

  • (1126B) 《コピーの文書性》
    ※←　判例は、写真コピーの文書性を肯定している。

　私文書偽造罪が成立するためには，一般人をして実在者が真正に作成した文書と誤信させるおそれが十分にあれば足り，その名義人が架空であると実在であるとを問わない。

• 正しい
  (1126C) 《架空人名義》
  　私文書偽造罪が成立するためには，一般人をして実在者が真正に作成した文書と誤信させるおそれが十分にあれば足り，その名義人が架空であると実在であるとを問わない（最判昭23.10.26）。

  • (1126C) 《架空人名義》
    ※←　架空人名義の文書を作成しても、文書偽造罪が成立する。（肯定：作成名義人）

　公正証書原本不実記載罪の客体は，私法上の権利義務に関するある事実を証明するものでなければならない。

• 誤り
  (1126D) 《権利義務に関するもの》
  　公正証書原本不実記載罪の客体は，［公法上の権利義務に関する公正証書であると私法上の権利義務に関する公正証書であるとを問わない；×私法上の権利義務に関するある事実を証明するものでなければならない］（最判昭36.3.30）。

  • (1126D) 《権利義務に関するもの》
    ※←　公務員がその職務上作成する文書にあって，権利義務に関するある事実を証明する効力を有するものをいう。

　公正証書原本不実記載罪の客体は，申立ての内容につき公務員に実質的審査権があるものであるか否かを問わない。

• 正しい
  (1126E) 《不実の記載》
  　公正証書原本不実記載罪の客体は，申立ての内容につき公務員に実質的審査権があるものであるか否かを問わない（最判昭36.3.30）。

  • (1126E) 《不実の記載》
    ※←　虚偽の申立てにより，公務員に不実の記載をさせることのできるものであれば足りる。