放火に関する次の事例のうち，Ａについて末尾の括弧内に記載した犯罪が成立するものはどれか。

• (0926) 【放火罪】

  • 放火罪の客体の区別

　Ａは，Ｂ宅に侵入し，Ｂ及び同居の家族全員を殺害した上，Ｂ宅に火をつけて燃やした　（非現住建造物等放火罪の既遂）。

• 正しい
  (0926A) 《居住者全員の死亡》
  　Ａは，Ｂ宅に侵入し，Ｂ及び同居の家族全員を殺害した上，Ｂ宅に火をつけて燃やした場合，（殺人罪のほかに）【非現住建造物等放火罪】の既遂が成立する（大判大6.4.13）。

  • (0926A) 《居住者全員の死亡》
    ※←　居住者全員が死亡し，犯人以外の他人がいないので，非現住建造物となる（刑法109条）。

    犯人以外の他人がいない
    		↓
    居住者全員	を	殺害後	に	放火	した場合		非現住建造物	放火罪
    	が	旅行中					現住建造物
    		↑
    昼夜間断なく人がいなくてもよい

　Ａは，Ｂ宅を燃やしてしまおうと考え，Ｂ宅の隣に建っていたＣ所有の物置に火をつけたが，物置が燃えたところで近所の住人らが消し止めたため，Ｂ宅には燃え移らなかった　（非現住建造物等放火罪の既遂及び現住建造物等放火罪の未遂）。

• 誤り
  (0926B) 《吸収関係》
  　Ａは，Ｂ宅を燃やしてしまおうと考え，Ｂ宅の隣に建っていたＣ所有の物置に火をつけたが，物置が燃えたところで近所の住人らが消し止めたため，Ｂ宅には燃え移らなかった場合，【現住建造物放火未遂の一罪】：×非現住建造物等放火罪の既遂及び現住建造物等放火罪の未遂］が成立する（大判大15.9.28）。

  • (0926B) 《吸収関係》
    ※←　非現住建造物等放火罪の既遂は，現住建造物等放火罪の未遂に吸収される（刑法108条）。

　Ａは，Ｂが外国製の高級乗用車を購入したのをねたみ，Ｂがその乗用車を自宅の前庭に駐車していたところ，これにガソリンをかけて火をつけ燃やしてしまったが，Ｂ宅への延焼は免れた　（器物損壊罪）。

• 誤り
  (0926C) 《器物損壊》
  　Ａは，Ｂが外国製の高級乗用車を購入したのをねたみ，Ｂがその乗用車を自宅の前庭に駐車していたところ，これにガソリンをかけて火をつけ燃やしてしまったが，Ｂ宅への延焼は免れた場合，【建造物以外放火罪】：×器物損壊罪］が成立する。

  • (0926C) 《器物損壊》
    ※←　器物損壊罪は，建造物以外放火罪に吸収される（刑法110条1項）（刑法261条）。

　Ａは，火災保険金を騙取しようと考え，自己の一人住まいの自宅に火災保険をかけた上，火をつけて全焼させた　（現住建造物等放火罪の既遂）。

• 誤り
  (0926D) 《保険金放火》
  　Ａは，火災保険金を騙取しようと考え，自己の一人住まいの自宅に火災保険をかけた上，火をつけて全焼させた場合，［（他人所有の）【非現住建造物放火罪】：×現住建造物等放火罪］の既遂が成立する。

  • (0926D) 《保険金放火》
    ※←　犯人１人が住んでおり，現在者がいない場合，非現住建造物放火罪が成立する（刑法109条1項）。
    ※←　保険に付されている場合，自己所有（刑法109条2項）ではなく，他人所有（同条1項）として扱われる（刑法115条）。

　Ａは，Ｂ及びその家族全員が旅行に出た後，Ｂ宅に火をつけ燃やした　（非現住建造物等放火罪の既遂）。

• 誤り
  (0926E) 《旅行中》
  　Ａは，Ｂ及びその家族全員が旅行に出た後，Ｂ宅に火をつけ燃やした場合，【現住建造物放火罪】：×非現住建造物等放火罪］の既遂が成立する（大判大14.2.18）。

  • (0926E) 《旅行中》
    ※←　昼夜間断なく人がいなくても，現に他人が住居として使用している建造物である（刑法108条）。