占有者が占有を妨害されまたは妨害されるおそれがある場合に、妨害者に対して妨害の排除を請求する権利（197条）

占有者がその意思に基づかずに、その所持を奪われること
　　　　　　　×詐取・横領・遺失

(S0517A) 《占有の相続》
※←　相続が開始したときは，特別の事情のないかぎり，従前その占有に属したものは，当然相続人の占有に移ると解すべきだから。
←　被相続人の事実的支配の中にあった者は，原則として，当然に，相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから，その結果として，占有権も承継され，被相続人が死亡して相続が開始するときは，特別の事情のないかぎり，従前その占有に属したものは，当然相続人の占有に移ると解すべきである。それ故，本件においては，原田吉五郎の死亡により相続が開始したときは，特別の事情のないかぎり，従前その占有に属したものは当然その相続人の占有に移るものというべく，特別の事情の認められない本件においては，本件土地に対する原田吉五郎の占有は，その相続人である上告人らの占有に移ったものといわなければならない（最判昭44.10.30）。

(S0517B) 《法人の直接占有》
※←　この場合に、法人の直接占有に属すると解すべきであって、法人の代表者は、自己の名において、占有回収の訴えを提起できる訳ではない。
←　原判決の認定したところによれば，上告人は訴外大東造船株式会社の代表取締役であって同会社の代表機関として本件土地を占有しているというのである。そうすると，本件土地の占有者は右訴外会社であって上告人は訴外会社の機関としてこれを所持するに止まり，したがってこの関係においては本件土地の直接占有者は訴外会社であつて上告人は直接占有者ではないものといわなければならない。なお，もし上告人が本件土地を単に訴外会社の機関として所持するに止まらず上告人個人のためにも所持するものと認めるべき特別の事情があれば，上告人は直接占有者たる地位をも有するから，本件請求は理由があることとなるが，右特別の事情は原判決の確定しないところである。しからば原判決が，上告人を右訴外会社の「代理占有者としての直接占有者」であると判示しただけで，個人としての上告人に本件土地の明渡しを命じたのは，法人の占有に関する法律上の解釈を誤った結果審理不尽，理由不備の違法を犯したものであって，この違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決はこの点において破棄を免れない（最判昭32.2.15）。

(S0517C) 《損害賠償請求》
※←　民法200条は、占有者の善意・悪意を区別していないから。
←　占有者がその占有を奪われたときは，占有回収の訴えにより，その物の返還及び損害の賠償を請求することができる（民法200条1項）。
※←　民法第200条第1項ノ規定ニ依レハ，占有者カ其ノ占有ヲ奪ハレタルトキハ，占有回収ノ訴ニ依リ其ノ物ノ返還及損害ノ賠償ヲ請求スルコト得ヘク，其ノ占有者ノ善意悪意ハ問フトコロニ非サルヲ以テ，悪意ノ占有者ト雖，尚占有回収ノ訴ヲ以テ，占有侵奪者ニ対シ占有ノ侵奪ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ルモノト解セサルヘカラス（大判大13.5.22）。

(S0517D) 《占有の侵奪なし》
※←　他人の欺罔によって、占有を失った場合には、占有の侵奪があったとは言えないから。
←　占有者がその占有を奪われたときは，占有回収の訴えにより，その物の返還及び損害の賠償を請求することができる（民法200条1項）。
※←　民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ，占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ，占有侵奪ノ事実アルニハ，占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス。故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ，仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ，占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。而シテ賃貸借関係ニ於テ，賃借人カ物ヲ所持スルハ一面自己ノ為ニ占有スルト同時ニ，他面ニ於テハ賃貸人ヲ代理シテ占有スルモノニシテ，即賃貸人ハ民法第181条ノ所謂代理人ニ依リテ物ヲ占有スル場合ノ，一ニ該当スルカ故ニ，賃貸人カ其ノ占有ヲ侵奪セラレタリヤ否ハ，占有代理人タルヘキ賃借人ニ付テ，之ヲ判定スヘキモノトス（大判大11.11.27）。

(S0517E) 《占有の侵奪なし》
※←　賃貸人は、当初、任意に占有を移転しており、占有を奪われたとは言えないから。
←　転借人を占有代理人として間接占有を有する賃借人が占有を奪われたとするには，占有代理人の所持が意思に反して第三者によって失わしめられた場合でなければならない（最判昭34.1.8）。