次の行為中，窃盗罪を構成するものはいくつあるか。

• (0224) 【窃盗罪】

  • 占有の有無　（なし　→　占有離脱物横領罪）
    誰の占有か　（行為者の占有　→　横領罪）

　友人から留守番を一時頼まれた者が，その友人宅の金品を勝手に持ち出す行為。

• 構成する
  (0224A) 《金品の占有》
  　友人から留守番を一時頼まれた者が，その友人宅の金品を勝手に持ち出す行為は，【窃盗罪】：×横領罪］を構成する（名古屋高判昭34.9.15）。

  • (0224A) 《金品の占有》
    ※←　留守番を頼んだとしても，居宅の財物の占有まで委ねるものではないので，金品の占有は，行為者にはなく，その友人にあるから。

　電車の車掌が，走行中の車内を点検中，下車した客が置き忘れたカメラを発見し，息子に与えるため自宅に持ち帰る行為。

• 構成しない
  (0224B) 《走行中の電車内》
  　電車の車掌が，走行中の車内を点検中，下車した客が置き忘れたカメラを発見し，息子に与えるため自宅に持ち帰る行為は，【遺失物等横領罪】：×窃盗罪］を構成する（大判大15.11.2）。

  • (0224B) 《走行中の電車内》
    ※←　これに対し、運転中のバスの車内，または運転終了後に車庫内の電車で点検中なら，窃盗罪となる。

　口止め料を出さなければ秘密を暴露すると脅迫し，相手が畏怖して黙認しているのに乗じて傍らの札束を持ち去る行為。

• 構成しない
  (0224C) 《財物の交付》
  　口止め料を出さなければ秘密を暴露すると脅迫し，相手が畏怖して黙認しているのに乗じて傍らの札束を持ち去る行為は（財物の交付行為にあたるので），【恐喝罪】：×窃盗罪］を構成する（最判昭24.1.11）。

  • (0224C) 《財物の交付》
    ※←　財物の交付が畏怖に基づいてなされているので（恐喝），相手方の意思に反して財物を奪った（窃取）とは言えない（刑法249条）。

　衣料品店の客を装って洋服を試着したまま，トイレに行くと偽って逃げる行為。

• 構成する
  (0224D) 《欺罔行為》
  　衣料品店の客を装って洋服を試着したまま，トイレに行くと偽って逃げる行為は，【窃盗罪】：×詐欺罪］を構成する（広島高判昭30.9.6）。

  • (0224D) 《欺罔行為》
    ※←　洋服を交付させるという処分行為に向けられた欺罔行為がないから。

　校長に恨みを抱いていた教師が，紛失の責任を校長に負わせようとして，学校の金庫から重要書類を持ち出して校舎の天井裏に隠す行為。

• 構成しない
  (0224E) 《不法領得の意思》
  　校長に恨みを抱いていた教師が，紛失の責任を校長に負わせようとして，学校の金庫から重要書類を持ち出して校舎の天井裏に隠す行為は，【文書毀棄罪】：×窃盗罪］を構成する（大判大4.5.21）。

  • (0224E) 《不法領得の意思》
    ※←　この場合、不法領得の意思がないので，窃盗罪は成立しない。