私文書偽造罪に関する次の記述中，誤っているものはどれか。

• (0226) 【私文書偽造罪】

  • その構成要件の理解

　刑法は，私文書を偽造しても，行使される見込みがなければ，未だその私文書に対する公共的信用を害する危険は少なく，処罰に値する違法性がないことから，行使の目的のある偽造のみを犯罪としている。

• 正しい
  (0226A) 《行使の目的》
  　刑法は，私文書を偽造しても，行使される見込みがなければ，いまだその私文書に対する公共的信用を害する危険は少なく，処罰に値する違法性がないことから，行使の目的のある偽造のみを犯罪としている（刑法159条1項）。

  • (0226A) 《行使の目的》
    ※←　すなわち、行使の目的がないときは、処罰されない。
    ←　行使の目的で，他人の印章若しくは署名を使用して権利，義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し，又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利，義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は，３月以上５年以下の懲役に処する。
    　他人が押印し又は署名した権利，義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も，前項と同様とする。
    　前２項に規定するもののほか，権利，義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し，又は変造した者は，１年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する（刑法159条）。

　刑法は，作成権限のない者が，他人の名義を冒用して新しい私文書を作成することを偽造とし，真正に成立した他人名義の私文書の非本質的部分を変更して新たな証明力を作り出すことを変造として，両者を区別している。

• 正しい
  (0226B) 《作成名義》
  　刑法は，作成権限のない者が，他人の名義を冒用して新しい私文書を作成することを偽造とし，真正に成立した他人名義の私文書の非本質的部分を変更して新たな証明力を作り出すことを変造として，両者を区別している（刑法159条1項･2項）。

  • (0226B) 《作成名義》
    ※←　文書偽造罪における現実的な保護の対象は，文書の作成名義の真正だから。

　刑法は，権利・義務又は事実証明に関する私文書が，社会生活上重要性を有することにかんがみ，その偽造を重く処罰し，それ以外の私文書の偽造を軽く処罰することとしている。

• 誤り
  (0226C) 《私文書》
  　刑法は，権利・義務または事実証明に関する私文書が，社会生活上重要性を有することにかんがみ，その偽造を［処罰の対象とし：×重く処罰し］，それ以外の私文書の偽造を［刑法的保護の対象からはずしている：×軽く処罰することとしている］。

  • (0226C) 《私文書》
    ※←　私文書には，無数の形態の文書が存在するので，そのすべてを刑法的保護の対象とすることは不適切だから。

　刑法は，他人の印章又は署名のない私文書は，それのある私文書に比べて公の信用度が低いことから，前者の偽造については後者の偽造よりその法定刑を軽くしている。

• 正しい
  (0226D) 《有印》
  　刑法は，他人の印章または署名のない私文書は，それのある私文書に比べて公の信用度が低いことから，前者の偽造については後者の偽造よりその法定刑を軽くしている（刑法159条）。

  • (0226D) 《有印》
    ※←　有印私文書偽造罪の法定刑が、３月以上５年以下の懲役であるのに対し（刑法159条1項），無印私文書偽造罪の法定刑は、１年以下の懲役または10万円以下の罰金である（刑法159条3項）。

　刑法は，私文書偽造罪については，日本国外においてこの罪を犯した日本国民に対しても適用することとし，いわゆる属人主義の考えをとっている。

• 正しい
  (0226E) 《国外犯》
  　刑法は，私文書偽造罪については，日本国外においてこの罪を犯した日本国民に対しても適用することとし，いわゆる属人主義の考えをとっている（刑法３条３号）。

  • (0226E) 《国外犯》
    ※←　文書に対する社会的信用という重要な社会的法益を保護するため、日本国民の国外犯にも、適用することにした。
    ←　この法律は，日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
    �@ 第108条（現住建造物等放火）及び第109条第１項（非現住建造物等放火）の罪，これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
    �A 第119条（現住建造物等浸害）の罪
    �B 第159条から第161条まで（私文書偽造等，虚偽診断書等作成，偽造私文書等行使）及び前条第５号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第161条の２の罪
    �C 第167条（私印偽造及び不正使用等）の罪及び同条第２項の罪の未遂罪
    �D 第176条から第179条まで（強制わいせつ，強姦，準強制わいせつ及び準強姦，未遂罪），第181条（強制わいせつ等致死傷）及び第184条（重婚）の罪
    �E 第199条（殺人）の罪及びその未遂罪
    �F 第204条（傷害）及び第205条（傷害致死）の罪
    �G 第214条から第216条まで（業務上堕胎及び同致死傷，不同意堕胎，不同意堕胎致死傷）の罪
    �H 第218条（保護責任者遺棄等）の罪及び同条の罪に係る第219条（遺棄等致死傷）の罪
    �I 第220条（逮捕及び監禁）及び第221条（逮捕等致死傷）の罪
    �J 第224条から第228条まで（未成年者略取及び誘拐，営利目的等略取及び誘拐，身の代金目的略取等，国外移送目的略取等，被略取者収受等，未遂罪）の罪
    �K 第230条（名誉毀損）の罪
    �L 第235条から第236条まで（窃盗，不動産侵奪，強盗），第238条から第241条まで（事後強盗，昏酔強盗，強盗致死傷，強盗強姦及び同致死）及び第243条（未遂罪）の罪
    �M 第246条から第250条まで（詐欺，電子計算機使用詐欺，背任，準詐欺，恐喝，未遂罪）の罪
    �N 第253条（業務上横領）の罪
    �O 第256条第２項（盗品譲受け等）の罪（刑法３条）