◎

　窃盗未遂罪が成立する場合に関する次の記述について，判例の趣旨に照らし，その正誤を正しく指摘しているものは，後記１から５までのうちどれか。

• (0327) 【窃盗罪】

  • 着手はあるか。　既遂に達していないか。

ア

　盗みの目的で，他人の家の玄関の鍵を壊して屋内に侵入した場合

• 誤り
  (0327A) 《住居侵入窃盗》
  　盗みの目的で，他人の家の玄関の鍵を壊して屋内に侵入した場合，《窃盗未遂罪》は成立［しない］（大判昭9.10.19）。

  • (0327A) 《住居侵入窃盗》
    ※←　他人の住居に侵入しただけでは，窃盗の着手があったとは言えない（住居侵入窃盗）。

イ

　他人の家から自転車を盗み出して路上に出たが家人に発見され，自転車を放置して逃げた場合

• 誤り
  (0327B) 《自己の支配内》
  　他人の家から自転車を盗み出して路上に出たが家人に発見され，自転車を放置して逃げた場合，【窃盗既遂】：×未遂］罪が成立する（名古屋高判昭25.3.1）。

  • (0327B) 《自己の支配内》
    ※←　持ち出して路上に出れば，自己の支配内に移したと言えるので，既遂となる。

ウ

　他人のズボンのポケットに現金があることを確認した後，この現金をすり取ろうとしてそのポケットの外側に手を触れた場合

• 正しい
  (0327C) 《ポケットの外側》
  　他人のズボンのポケットに現金があることを確認した後，この現金をすり取ろうとしてそのポケットの外側に手を触れた場合，（着手が認められ），【窃盗未遂罪】が成立する（最判昭29.5.6）。

  • (0327C) 《ポケットの外側》
    ※←　ただし、財物の存否を確認する単なるあたり行為では，窃盗の着手はない。

エ

　宝石店から宝石を窃取する目的でショーウィンドーの中に手を入れて指輪をつかんで取り出そうとしたが，店員が来る気配を察して，ショーウィンドーの中に指輪を落して手を引っ込めた場合

• 正しい
  (0327D) 《自己の占有に移した》
  　宝石店から宝石を窃取する目的でショーウィンドーの中に手を入れて（窃盗の着手あり）指輪をつかんで取り出そうとしたが，店員が来る気配を察して，ショーウィンドーの中に指輪を落として手を引っ込めた場合（自己の占有に移したとは言えないので，既遂とはならず），【窃盗未遂罪】が成立する（大阪高判昭60.4.12）。

  • (0327D) 《自己の占有に移した》
    ※←　なお、スリの事例で，袂内に手を入れ目的物をつかんだだけで，既遂となるとした判例もある（大判大13.10.3）。

オ

　盗みの目的で，他人の家に侵入した上，手提げ金庫を発見してこれに近づいた場合

• 正しい
  (0327E) 《近づいた時点》
  　窃盗の目的で，他人の家に侵入した上，手提げ金庫を発見してこれに近づいた場合（窃盗の着手があり），【窃盗未遂罪】が成立する（大判昭9.1.19）。

  • (0327E) 《近づいた時点》
    ※←　目的物に近づいた時点で，財物についての他人の占有を侵害する危険性が現実化したと言えるから。

　１　 ア　正　　イ　誤　　ウ　誤　　エ　正　　オ　誤
　２　 ア　誤　　イ　誤　　ウ　正　　エ　正　　オ　誤
　３○ア　誤　　イ　誤　　ウ　正　　エ　正　　オ　正
　４　 ア　誤　　イ　正　　ウ　正　　エ　誤　　オ　正
　５　 ア　正　　イ　正　　ウ　誤　　エ　誤　　オ　正