各種偽造罪における行使に関する次の記述中，誤っているものはどれか。

• (0326) 【各種偽造罪】

  • 行使の概念の違い

　偽造通貨を自動販売機に投入した行為は，偽造通貨行使罪における行使にあたる。

• 正しい
  (0326A) 《行使》
  　偽造通貨を自動販売機に投入した行為は，偽造通貨行使罪における行使に当たる（東京高判昭53.3.22）。

  • (0326A) 《行使》
    ※←　「行使」とは，偽造・変造の通貨を，真貨として流通におくこと。

　偽造通貨を偽造であることを知っている者に交付した行為は，偽造通貨行使罪における行使にあたらない。

• 正しい
  (0326B) 《交付の相手方》
  　偽造通貨を偽造であることを知っている者に交付した行為は，偽造通貨行使罪における行使に当たらない（大判明43.3.10）。

  • (0326B) 《交付の相手方》
    ※←　事情を知っている以上、通貨に対する公衆の信用を侵害する現実的危険性がないから。　←　相手方は，情を知らないものでなければならない。

　偽造有価証券の保管を依頼して情を知らない他人に交付した行為は，偽造有価証券行使罪における行使にあたる。

• 誤り
  (0326C) 《有価証券に対する信用性》
  　偽造有価証券の保管を依頼して事情を知らない他人に交付した行為は，偽造有価証券行使罪における行使に［当たらない］。

  • (0326C) 《有価証券に対する信用性》
    ※←　必ずしも、流通に置く必要はないが，保管のための交付では，真正なものとして使用したことにはならず，有価証券に対する信用性が害されたとも言えない。

　偽造私文書について，確定日付を受けるため公証人に提示した行為は，偽造私文書行使罪における行使にあたる。

• 正しい
  (0326D) 《効用に役立たせる目的》
  　偽造私文書について，確定日付を受けるため公証人に提示した行為は，偽造私文書行使罪における行使に当たる（大判明41.12.21）。

  • (0326D) 《効用に役立たせる目的》
    ※←　いやしくも真正な文書としてその効用に役立たせる目的のもとに使用されれば足りる（最判昭28.12.25）。

　約束手形の所持人がその手形が偽造されたものであることを知っていても，裏書人に対する権利行使のために手形を呈示した行為は，偽造有価証券行使罪における行使にあたらない。

• 正しい
  (0326E) 《手形上の権利行使》
  　約束手形の所持人がその手形が偽造されたものであることを知っていても，裏書人に対する権利行使のために手形を呈示した行為は，（手形上，当然の権利行使であって），偽造有価証券行使罪における行使に当たらない（大判大3.11.28）。

  • (0326E) 《手形上の権利行使》
    ※←　偽造手形であっても，これに裏書した者は，その文言に従って手形上の債務を負うから（手形行為独立の原則，手形法7条）。