共犯に関する次の記述中，正しいものはどれか。

• (0225) 【共犯】

  • 共同正犯，教唆犯の成否

　傷害の意思で共謀した共犯者の１人が殺意をもって被害者を殺害した場合，殺意のなかった共犯者についても，殺人罪の共同正犯が成立する。

• 誤り
  (0225A) 《殺意》
  　傷害の意思で共謀した共犯者の１人が殺意をもって被害者を殺害した場合，殺意のなかった共犯者について，（殺人罪と傷害致死罪の構成要件が重なり合う限度で，軽い）【傷害致死罪】：×殺人罪］の共同正犯が成立する（最決昭54.4.13）。

  • (0225A) 《殺意》
    ※←　殺人罪についての責任は，殺意をもって殺害した者だけが負う。

　人を殺害することを教唆したところ，被教唆者が殺人の実行行為に出たもののその目的を遂げなかった場合，教唆者については，殺人未遂の教唆犯が成立する。

• 正しい
  (0225B) 《実行の着手》
  　人を殺害することを教唆したところ，被教唆者が殺人の実行行為に出たもののその目的を遂げなかった（未遂の）場合は，教唆者については，【殺人未遂の教唆犯】が成立する（刑法61条1項）。

  • (0225B) 《実行の着手》
    ※←　教唆犯が成立するためには，少なくとも被教唆者が実行に着手したことを要する（共犯従属性説）。

　博徒の親分が賭博場を開帳した際に，これを知った子分が顧客を誘って賭博をさせた場合でも，親分がそのことを知らなかったときは，子分については，賭博場開帳図利罪の幇助犯は成立しない。

• 誤り
  (0225C) 《片面的従犯》
  　博徒の親分が賭博場を開帳した際に，これを知った子分が顧客を誘って賭博をさせた場合，親分がそのことを知らなかったときでも，子分について，【賭博場開帳図利罪】の幇助犯が成立［する］（刑法186条2項）（大判大14.1.22）。

  • (0225C) 《片面的従犯》
    ※←　正犯者が幇助者の幇助行為を認識している必要はないから。

　女性が，男性と共謀の上，他の女性を強姦するに際して暴行・脅迫を加えた場合でも，女性については，強姦罪の共同正犯は成立せず，その幇助犯が成立するにとどまる。

• 誤り
  (0225D) 《真正身分犯》
  　女性が，男性と共謀の上，他の女性を強姦するに際して暴行・脅迫を加えた場合でも，女性について，【強姦罪の共同正犯】が成立［する：×せず，その幇助犯が成立するにとどまる］（刑法65条１項）（最決昭40.3.30）。

  • (0225D) 《真正身分犯》
    ※←　女性も、男性の行為を利用することによって、強姦罪の保護法益を侵害することができるから。

　医師が看護婦に指示して患者に毒薬を投与させ，その患者を殺害した場合，看護婦が毒薬であることを知らなくても，医師については殺人の教唆犯が成立する。

• 誤り
  (0225E) 《間接正犯》
  　医師が看護師に指示して患者に毒薬を投与させ，その患者を殺害したが，看護師が毒薬であることを知らない場合，医師について，殺人の［間接正犯：×教唆犯］が成立する（最決昭31.7.3）。

  • (0225E) 《間接正犯》
    ※←　看護師に殺人の実行行為を決意させたわけではなく，また，毒薬であることを知らない看護師に殺人罪の構成要件的故意はないので，看護師は，《殺人罪の正犯》とはならない。