正当防衛と緊急避難に関する次の記述中，誤っているものの組合せは，後記１から５までのうちどれか。

• (0426) 【正当防衛と緊急避難】

  • 　急迫不正の侵害に対して，自己又は他人の権利を防衛するため，やむを得ずにした行為は，罰しない（刑法36条1項）。
    　自己又は他人の生命，身体，自由又は財産に対する現在の危難を避けるため，やむを得ずにした行為は，これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り，罰しない。ただし，その程度を超えた行為は，情状により，その刑を減軽し，又は免除することができる（刑法37条1項）。

　正当防衛行為は，不正な侵害に対する反撃であるから，侵害者以外の者に対する正当防衛はあり得ない。

• 正しい
  (0426A) 《侵害者以外の者》
  　正当防衛行為は，不正な侵害に対する反撃であるから，侵害者以外の者に対する正当防衛はあり得ない。

  • (0426A) 《侵害者以外の者》
    ※←　反撃が第三者に向けられたときは、緊急危難となり得ても，正当防衛とは言い難いから。

　正当防衛行為は，急迫な侵害に対する反撃であるから，不作為による侵害に対する正当防衛が成立する余地はない。

• 誤り
  (0426B) 《不作為による侵害》
  　正当防衛行為は，急迫な侵害に対する反撃であるが，不作為による侵害に対する正当防衛が成立する余地［もある：×はない］（刑法130条後段）（大阪高判昭29.4.20）。

  • (0426B) 《不作為による侵害》
    ※←　たとえば，不退去罪に該当する場合，不作為による急迫不正の侵害があるものとして，正当防衛が可能である。

　緊急避難行為は，危難の原因とは関係のない第三者の犠牲において行なわれるので，補充の原則及び均衡の原則が要求される。

• 正しい
  (0426C) 《補充性・均衡性》
  　緊急避難行為は，危難の原因とは関係のない第三者の犠牲において行われるので，補充の原則および均衡の原則が要求される（刑法37条１項本文）。

  • (0426C) 《補充性・均衡性》
    ※←　危難の原因とは関係のない第三者に危難を転嫁するもので，正対正の関係にあるから。

　過剰防衛は，正当防衛の要件を満さないので違法性を阻却しないが，情状により，刑の減軽又は免除をすることができる。

• 正しい
  (0426D) 《刑の減免》
  　過剰防衛は，正当防衛の要件を満たさないので違法性を阻却しないが，情状により，刑の減軽または免除をすることができる（刑法36条2項）。

  • (0426D) 《刑の減免》
    ※←　急迫不正の侵害がなされている状態では、恐怖・狼狽等により、防衛行為者の期待可能性が低減するため、その責任が減少するから。
    　←　防衛の程度を超えた行為は，情状により，その刑を減軽し，又は免除することができる（刑法36条2項）。

　誤想防衛は，正当防衛の要件を満さないので違法性を阻却しないが，刑は必ず減軽される。

• 誤り
  (0426E) 《故意の阻却》
  　誤想防衛は，正当防衛の要件を満たさないので違法性を阻却しないが，［故意が阻却され，行為者に過失がある場合には過失犯が成立する：×刑は必ず減軽される］（大判昭8.6.29）。

  • (0426E) 《故意の阻却》
    ※←　違法性阻却事由に関する事実の認識を欠いた場合には、自らの行為が正当なものと考えているため、反対動機形成の可能性はなく、故意責任を科することはできないから。
    ←　誤想防衛とは，急迫不正の侵害がないにも関わらず，あるものと誤信して防衛行為をした場合。