民法

◎	甲が乙所有の不動産の占有を継続し，取得時効が完成したが，他方，乙が甲の占有開始後にその不動産を丙に譲渡した場合に関する次の記述中，判例の趣旨によれば誤っているものはどれか。 (S5909) 【時効と登記】　甲が乙所有の不動産の占有を継続し，取得時効が完成したが，他方，乙が甲の占有開始後にその不動産を丙に譲渡した場合
１	丙が甲の時効完成前にその不動産を譲り受け，かつ，時効完成前にその旨の登記をした場合でも，甲は，丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができる。正しい (S5909A) 《時効完成前の当事者》　丙が甲の時効完成前にその不動産を譲り受け，かつ時効完成前にその旨の登記をした場合でも，甲は丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができる（最判昭35.7.27）。 (S5909A) 《時効完成前の当事者》 ※←　丙とは，当事者の関係にあるから（最判昭35.7.27）。
２	丙が甲の時効完成前にその不動産を譲り受けたが，その旨の登記をしたのが時効完成後である場合には，甲は，丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができない。誤り (S5909B) 《時効完成前の当事者》　丙が甲の時効完成前にその不動産を譲り受けたが，その旨の登記をしたのが時効完成後である場合でも，甲は丙に対し，時効による所有権の取得を主張することが［できる］（最判昭42.7.21）。 (S5909B) 《時効完成前の当事者》 ※←　丙の登記の時期は関係ない（最判昭42.7.21）。
３	丙が甲の時効完成後にその不動産を譲り受け，その旨の登記をした場合には，甲は，丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができない。正しい (S5909C) 《時効完成後の第三者》　丙が甲の時効完成後にその不動産を譲り受け，その旨の登記をした場合には，甲は丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができない（最判昭33.8.28）。 (S5909C) 《時効完成後の第三者》 ※←　甲と丙は、対抗関係にあるから（最判昭33.8.28）。
４	丙が申の時効完成後にその不動産を譲り受けた場合には，その旨の登記をしていなくても，甲は，所有権移転の登記をしなければ，丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができない。正しい (S5909D) 《時効完成後の第三者》　丙が甲の時効完成後にその不動産を譲り受けた場合には，その旨の登記をしていなくても，甲は，所有権移転の登記をしなければ，丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができない（大判明43.1.24）。 (S5909D) 《時効完成後の第三者》 ※←　双方が対抗関係に立つので登記が必要（大判明43.1.24）。
５	丙が甲の時効完成後にその不動産を譲り受け，その旨の登記をした場合でも，甲がその登記の時から引き続き時効取得に必要とされる期間その不動産の占有を継続したときは，甲は，丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができる。正しい (S5909E) 《再度の時効完成》　丙が甲の時効完成後にその不動産を譲り受け，その旨の登記をした場合でも，甲がその登記の時から引続き時効取得に必要とされる期間その不動産の占有を継続したとき，甲は丙に対し，時効による所有権の取得を主張することができる（最判昭36.7.20）。 (S5909E) 《再度の時効完成》 ※←　永続した事実状態を尊重するため（最判昭36.7.20）。
	正　解　　　２