できない〔有効説〕。
(1302A) 《政治資金の寄附》
　会社による政治資金の寄附は，客観的，抽象的に観察して，会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいては，会社の定款所定の目的の範囲内の行為である〔とする最高裁判所昭和45年６月24日大法廷判決・民集24巻６号625頁（八幡製鉄政治献金事件）の当該判示部分〕［とすれば，選挙において特定の政党を支持するように組合員を拘束することも，客観的，抽象的に観察して，労働組合の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいては，労働組合の目的の範囲内の行為であることになるので，労働組合による組合員の立候補の自由への広い制約も許されることになり，除名処分は有効である］。

• (1302A) 《政治資金の寄附》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。　労働組合による組合員の立候補の自由への広い制約も許される。

できる〔無効説〕。
(1302B) 《団結権》
　憲法第28条の労働基本権の保障は，労働条件を使用者と労働組合の団体交渉によって決定させようとする趣旨に出たものであり，団結権も労使が労働条件を対等に団体交渉を通じて決定するのを助成するために保障されている〔と考える学説〕［とすれば，政治活動は，労働基本権の保障の範囲外ということになるので，除名処分を認めるべきではない］。

• (1302B) 《団結権》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。　立候補の自由のような労使の労働条件の交渉とは直接関係のない，組合の政治活動の方針に反したことをもって，団結権を乱したことにはならない。
  　組合員の政治活動の自由の保障を重視する方向に働く。

できない〔有効説〕。
(1302C) 《労働組合の政治活動》
　憲法第28条の労働基本権の保障は，団結権を含めて，労働者の経済的地位の向上を目的とするための規定であり，そのための労働組合の活動は政治活動も含めて国法上是認される〔と考える学説〕［とすれば，Ｘ政党を支持することが労働者の地位向上につながるので，労働組合が支持する政党に反する立候補をしようとする者を除名処分にすることも認められる］。

• (1302C) 《労働組合の政治活動》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。　労働組合の政治活動の自由の保障を重視する方向に働く。

できる〔無効説〕。
(1302D) 《強制加入の団体》
　税理士会が強制加入の団体であり，その会員である税理士には実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると，税理士会の目的の範囲を判断するに当たっては，会員の思想・信条の自由との関係で，会員に要請される協力義務にも，おのずと限界がある〔とする最高裁判所平成８年３月19日第３小法廷判決・民集50巻３号615頁（南九州税理士会政治献金事件）の当該判示部分〕［とすれば，実質的に強制加入団体となっている労働組合についても，組合員の権利に対する配慮を重視し，除名処分は無効となる］。

• (1302D) 《強制加入の団体》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。　強制加入団体では，構成員に要請される協力義務にも，おのずから限界がある。
  　労働組合の政治活動の自由の保護よりも，組合員の政治活動の自由の保障を重視する方向に働く。

できない〔有効説〕。
(1302E) 《被選挙権》
　被選挙権は，選挙によって議員その他の公務員となり得る資格であって，権利ではない〔とする学説〕［とすれば，そもそも除名された組合員に権利侵害が存在しないことになるので，除名処分は有効となる］。

• (1302E) 《被選挙権》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。　これに対し，被選挙権が権利であるとすれば，その権利を尊重するため，除名処分は無効となる。
  　組合員の政治活動の自由の保障よりも，労働組合の政治活動の自由の保護を重視する方向に働く。