憲法

◎

憲法第９条第１項の「国際紛争を解決する手段としては」の意義について，次の２説があるとした場合，後記ＡからＥまでの記述のうち，明らかに誤っているものは幾つあるか。

甲説　国際紛争を解決する手段としての戦争とは，国際法上の用例に従うと，国家の政策の手段としての戦争，すなわち侵略戦争を意味し，自衛戦争を含まない。
- (1211) 【】*
乙説　国際紛争を解決する手段としての戦争とは，戦争がおよそ国際紛争解決の手段として行われるものであることからみて，侵略戦争のみならず自衛戦争も含む。
- *
  　本問は，憲法９条の規範構造の理解を問うものである。
  　９条は，以下の３つの点について規定している。
  　①「国際紛争を解決する手段として」の戦争の放棄（１項）
  　②「前項の目的を達するため」の戦力の不保持（2一項前段）
  　③「交戦権」の否認（２項後段）
  　しかし，これら各々の解釈につき，以下のような争いがある。
  ①「国際紛争を解決する手段として」の戦争の放棄（１項）
  　　　　甲：侵略戦争を意味し，自衛戦争を含まない（限定放棄説）←本問の甲説
  　　　　乙：全ての戦争を含む（全面放棄説）　　　　　　　　　　　←本問の乙説
  ②「前項の目的を達するため」の戦力の不保持（2一項前段）
  　　　　ア：［国際紛争を解決する手段として］の戦争の放棄のため
  　　　　イ：［日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求］するため
  ③「交戦権」の否認（２項後段）
  　　　　Ｐ：交戦状態に入った場合に交戦国に認められる国際法上認められる権利
  　　　　Ｑ：国家が戦争をする権利
  　そして，いかなる解釈を選択するかによって，自衛戦争の合憲一違憲の判断が決まってくる。
  　端的に示せば，
  　①乙　又は　②イ　又は　③Ｑ　→自衛戦争は違憲
  　①甲　かつ　②ア　かつ　③Ｐ　→自衛戦争は合憲
  となる。
  　すなわち，①で乙説に立つと，戦争を全面的に放棄している以上，自衛戦争は９条１項により違憲になる。
  　②でイ説に立つと，いかなる戦力であれ保持できないことになり，戦力がなければそれを前提とする戦争もできないことから，戦争の全面的な放棄が帰結される。そこで，自衛戦争は９条２項前段により違憲になる。
  　③でＱ説に立つと,戦争をする権利を否定している以上,自衛戦争は９条２項後段により違憲になる。　これに対し，合憲となるのは，上記のいずれにもあたらない場合，すなわち「=①甲　かつ②･ア　かつ③IP」の場合のみである。*

Ａ

甲説に立ち，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，侵略戦争放棄という目的を達するためと考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。

Ｂ

甲説に立っても，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，同条第１項の「日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて，戦力不保持の動機を示すものであると考えると，自衛戦争は違憲であるとの解釈が可能である。

Ｃ

乙説に立っても，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，同条第１項の「日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて，戦力不保持の動機を示すものであると考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。

Ｄ

甲説に立ち，憲法第９条第２項の「交戦権」につき，交戦状態に入った場合に交戦国に国際法上認められる権利と考えても，自衛戦争は違憲であるとの解釈が可能である。

Ｅ

乙説に立っても，憲法第９条第２項の「交戦権」につき，交戦状態に入った場合に交戦国に国際法上認められる権利であると考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。

１　０個　　　　　２　１個　　　　　３×２個　　　　　４　３個　　　　　５　４個

（参照条文）
憲法第９条第１項　日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し，国権の発動たる戦争と，武力による威嚇又は武力の行使は，国際紛争を解決する手段としては，永久にこれを放棄する。
　　　同条第２項　前項の目的を達するため，陸海空軍その他の戦力は，これを保持しない。国の交戦権は，これを認めない。

◎	憲法第９条第１項の「国際紛争を解決する手段としては」の意義について，次の２説があるとした場合，後記ＡからＥまでの記述のうち，明らかに誤っているものは幾つあるか。甲説　国際紛争を解決する手段としての戦争とは，国際法上の用例に従うと，国家の政策の手段としての戦争，すなわち侵略戦争を意味し，自衛戦争を含まない。 (1211) 【】* 乙説　国際紛争を解決する手段としての戦争とは，戦争がおよそ国際紛争解決の手段として行われるものであることからみて，侵略戦争のみならず自衛戦争も含む。 * 　本問は，憲法９条の規範構造の理解を問うものである。　９条は，以下の３つの点について規定している。　①「国際紛争を解決する手段として」の戦争の放棄（１項）　②「前項の目的を達するため」の戦力の不保持（2一項前段）　③「交戦権」の否認（２項後段）　しかし，これら各々の解釈につき，以下のような争いがある。 ①「国際紛争を解決する手段として」の戦争の放棄（１項）　　　　甲：侵略戦争を意味し，自衛戦争を含まない（限定放棄説）←本問の甲説　　　　乙：全ての戦争を含む（全面放棄説）　　　　　　　　　　　←本問の乙説 ②「前項の目的を達するため」の戦力の不保持（2一項前段）　　　　ア：［国際紛争を解決する手段として］の戦争の放棄のため　　　　イ：［日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求］するため ③「交戦権」の否認（２項後段）　　　　Ｐ：交戦状態に入った場合に交戦国に認められる国際法上認められる権利　　　　Ｑ：国家が戦争をする権利　そして，いかなる解釈を選択するかによって，自衛戦争の合憲一違憲の判断が決まってくる。　端的に示せば，　①乙　又は　②イ　又は　③Ｑ　→自衛戦争は違憲　①甲　かつ　②ア　かつ　③Ｐ　→自衛戦争は合憲となる。　すなわち，①で乙説に立つと，戦争を全面的に放棄している以上，自衛戦争は９条１項により違憲になる。　②でイ説に立つと，いかなる戦力であれ保持できないことになり，戦力がなければそれを前提とする戦争もできないことから，戦争の全面的な放棄が帰結される。そこで，自衛戦争は９条２項前段により違憲になる。　③でＱ説に立つと,戦争をする権利を否定している以上,自衛戦争は９条２項後段により違憲になる。　これに対し，合憲となるのは，上記のいずれにもあたらない場合，すなわち「=①甲　かつ②･ア　かつ③IP」の場合のみである。*
Ａ	甲説に立ち，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，侵略戦争放棄という目的を達するためと考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。正しい。 (1211A) 《》甲説に立ち，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，侵略戦争放棄という目的を達するためと考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。* (1211A) 《》 ※←　本記述は，①甲　かつ　②アとする。そうすると，①甲　かつ　②ア　かつ　③Ｐ　という選択も可能であり，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。したがって，本記述は明らかに誤っているとはいえない。（憲法条）。（最判昭）。*
Ｂ	甲説に立っても，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，同条第１項の「日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて，戦力不保持の動機を示すものであると考えると，自衛戦争は違憲であるとの解釈が可能である。正しい。 (1211B) 《》甲説に立っても，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，同条第１項の「日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて，戦力不保持の動機を示すものであると考えると，自衛戦争は違憲であるとの解釈が可能である。* (1211B) 《》 ※←　本記述はぺ①甲　かつ　②ｲ　とする。そうすると，②イであることのみによって，［自衛戦争が違憲である］と確定する以上，違憲であるとの解釈が可能である。したがって，本記述は明らかに誤っているとはいえない。（憲法条）。（最判昭）。*
Ｃ	乙説に立っても，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，同条第１項の「日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて，戦力不保持の動機を示すものであると考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。誤り。 (1211C) 《》乙説に立っても，憲法第９条第２項の「前項の目的を達するため」とは，同条第１項の「日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて，戦力不保持の動機を示すものであると考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。* (1211C) 《》 ※←　本記述は，①乙　かつ　②イ　とする。そうすると，①=乙であることのみによって，「自衛戦争が違憲である」と確定する以上，合憲であるとの解釈は不可能となる。したがって，本記述は明らかに誤っている。（憲法条）。（最判昭）。*
Ｄ	甲説に立ち，憲法第９条第２項の「交戦権」につき，交戦状態に入った場合に交戦国に国際法上認められる権利と考えても，自衛戦争は違憲であるとの解釈が可能である。正しい。 (1211D) 《》甲説に立ち，憲法第９条第２項の「交戦権」につき，交戦状態に入った場合に交戦国に国際法上認められる権利と考えても，自衛戦争は違憲であるとの解釈が可能である。* (1211D) 《》 ※←　本記述は，①=甲　かつ　③･Ｐ　とする。そうすると，②イ　という選択も可能であり，②イであることのみによって，「自衛戦争が違憲である」と確定する以上，違憲であるとの解釈は可能である。したがって，本記述は明らかに誤っているとはいえない。（憲法条）。（最判昭）。*
Ｅ	乙説に立っても，憲法第９条第２項の「交戦権」につき，交戦状態に入った場合に交戦国に国際法上認められる権利であると考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。誤り。 (1211E) 《》乙説に立っても，憲法第９条第２項の「交戦権」につき，交戦状態に入った場合に交戦国に国際法上認められる権利であると考えると，自衛戦争は合憲であるとの解釈が可能である。* (1211E) 《》 ※←　本記述は，①=乙　かつ　③Ｐ　とする。そうすると，①乙であることのみにより「自衛戦争が違憲である」と確定する以上，合憲であるとの解釈は不可能となる。したがって，本記述は明らかに誤っている。（憲法条）。（最判昭）。*
	１　０個　　　　　２　１個　　　　　３×２個　　　　　４　３個　　　　　５　４個
	（参照条文）憲法第９条第１項　日本国民は，正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し，国権の発動たる戦争と，武力による威嚇又は武力の行使は，国際紛争を解決する手段としては，永久にこれを放棄する。　　　同条第２項　前項の目的を達するため，陸海空軍その他の戦力は，これを保持しない。国の交戦権は，これを認めない。