民法

◎

　民法上の留置権に関する次のアからオまでの記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは，後記１から５までのうち，どれか。

ア

　留置権者が留置物の一部をその過失により壊したとしても，債務者は，債務の全額を弁済しない限り，留置権の消滅を請求することはできない。

イ

　留置権者が留置物の占有を継続していても，それにより被担保債権の消滅時効の進行が妨げられることはない。

ウ

　留置権者は，債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸することができ，賃貸によって得られた賃料を他の債権者に先立って被担保債権の弁済に充当することができる。

エ

　留置権者は，留置物について，留置権による競売の申立てをすることができる。

オ

　建物所有目的の土地の賃借人が賃貸人に対して建物買取請求権を行使した場合において，賃借人は，建物の買取代金の支払を受けるまでは，建物について留置権を主張して建物の敷地を占有することができ，敷地の賃料相当額の支払義務も負わない。

　１　アウ　　　　　２×アオ　　　　　３　イウ　　　　　４　イエ　　　　　５　エオ　　　

◎	民法上の留置権に関する次のアからオまでの記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは，後記１から５までのうち，どれか。 (S2511) 【留置権】 **
ア	留置権者が留置物の一部をその過失により壊したとしても，債務者は，債務の全額を弁済しない限り，留置権の消滅を請求することはできない。誤り。 (S2511A) 《善管注意義務》　留置権者が留置物の一部をその過失により壊したとして，債務者は，債務の全額を弁済［しなくても］，【留置権】の消滅を請求することが［できる］（民法298条3項）。 (S2511A) 《消滅請求》 ※←　留置権者は，善良な管理者の注意をもって，留置物を占有しなければならない（民法298条1項）。 ※←　留置権者が前2項の規定に違反したときは，債務者は，留置権の消滅を請求することができる（民法298条3項）。
イ	留置権者が留置物の占有を継続していても，それにより被担保債権の消滅時効の進行が妨げられることはない。正しい。 (S2511B) 《消滅時効の進行》　留置権者が留置物の占有を継続していても，それにより被担保債権の消滅時効の進行が妨げられることはない（民法300条）。 (S2511B) 《消滅時効の進行》 ※←　目的物を留置していても、被担保債権そのものを行使しているとは言えないから。 ※←　留置権の行使は，債権の消滅時効の進行を妨げない（民法300条）。
ウ	留置権者は，債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸することができ，賃貸によって得られた賃料を他の債権者に先立って被担保債権の弁済に充当することができる。正しい。 (S2511C) 《弁済充当》　留置権者は，債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸することができ（民法298条2項本文），賃貸によって得られた賃料を他の債権者に先立って被担保債権の弁済に充当することができる（民法297条1項）。 (S2511C) 《弁済充当》 ※←　留置権者は，債務者の承諾を得なければ，留置物を使用し，賃貸し，又は担保に供することができない。ただし，その物の保存に必要な使用をすることは，この限りでない（民法298条2項本文）。 ※←　留置権者は，留置物から生ずる果実を収取し，他の債権者に先立って，これを自己の債権の弁済に充当することができる（民法297条1項）。
エ	留置権者は，留置物について，留置権による競売の申立てをすることができる。正しい。 (S2511D) 《形式的競売》　留置権者は，留置物について，【留置権】による競売の申立てをすることができる（民執法195条）。 (S2511D) 《競売の申立》 ※←　留置権による競売及び民法，商法その他の法律の規定による換価のための競売については，担保権の実行としての競売の例による（民執法195条）。
オ	建物所有目的の土地の賃借人が賃貸人に対して建物買取請求権を行使した場合において，賃借人は，建物の買取代金の支払を受けるまでは，建物について留置権を主張して建物の敷地を占有することができ，敷地の賃料相当額の支払義務も負わない。誤り。 (S2511E) 《建物買取請求》　建物所有目的の土地の賃借人が賃貸人に対して建物買取請求権を行使した場合に，賃借人は，建物の買取代金の支払を受けるまでは，建物について【留置権】を主張して建物の敷地を占有することができるが（大判昭14.8.24），敷地の賃料相当額の支払義務を［負う］（民法295条）。 (S2511E) 《建物買取請求》 ※←　敷地分については、不当利得として返還すべきである（民法295条）。
	１　アウ　　　　　２×アオ　　　　　３　イウ　　　　　４　イエ　　　　　５　エオ