憲法

◎

　次の文章は，各〔　　〕の中のいずれか適切な方の語句を選択すると，あるまとまった論述となる。後記１から５までの記述のうち，この論述にいう主権論と同じ立場のものはどれか。
　「フランス革命によりアンシャン・レジームを倒した後，どのような政治体制を打ち立てるべきかについて，二つの異なった立場が対立した。その一つである〔ナシオン（国民）主権，プーブル（人民）主権〕の立場にあっては，国民は抽象的観念的存在であってそれ自体としては自然的な意思能力を持たないから主権の行使を若干の自然人からなる代表者にゆだねざるを得ないところ，ここでは代表と被代表の関係は〔命令委任，自由委任〕が原則となる。もともとこの主権論は，〔制限選挙制度，普通選挙制度〕を正当化するために唱えられたものであって，フランス革命期の1791年憲法はこの原理を採用した。」

１

　この立場では，有権者の総体が主権主体となる。

２

　この立場では，小選挙区制に比べて，比例代表制の方がより適した選挙制度ということになる。

３

　この立場では，代表制が採られる場合，リコール制といった代表者に対する政治責任追及手段を制度化することが必要となる。

４

　この立場では，政治が従うべき主権者の意思とは，すべての人民（国民）の利益にかなった意思，すなわち，「真の人民の意思」を指し，過去・将来の人民の意思をも含むものとする。

５

　この立場では，議員が所属政党からの除名により，議員資格を失うものとする制度は合理的であるということになる。

　正　解　　　４

◎	次の文章は，各〔　　〕の中のいずれか適切な方の語句を選択すると，あるまとまった論述となる。後記１から５までの記述のうち，この論述にいう主権論と同じ立場のものはどれか。　「フランス革命によりアンシャン・レジームを倒した後，どのような政治体制を打ち立てるべきかについて，二つの異なった立場が対立した。その一つである〔ナシオン（国民）主権，プーブル（人民）主権〕の立場にあっては，国民は抽象的観念的存在であってそれ自体としては自然的な意思能力を持たないから主権の行使を若干の自然人からなる代表者にゆだねざるを得ないところ，ここでは代表と被代表の関係は〔命令委任，自由委任〕が原則となる。もともとこの主権論は，〔制限選挙制度，普通選挙制度〕を正当化するために唱えられたものであって，フランス革命期の1791年憲法はこの原理を採用した。」 (0617) 【主権論】「国民は抽象的観念的存在であってそれ自体としては自然的な意思能力を持だない」という記述から，最初の［　］には，［ナシオン主権］が入る。ナシオン主権における代表者と被代表者との関係は，被代表者が抽象的な存在であり，具体的な意思を有しないことから，包括的・集団的な代表委任が不可避的に帰結される。よって，2.番目の〔　〕には，自由委任が入る。そして，このような代表観においては,代表と被代表とが必ずしも一致する必要がないことから,制限選挙が正当化されることになる。以上より，設問の論述の主権論は，ナシオン主権である。
１	この立場では，有権者の総体が主権主体となる。異なる。 (0617A) 《》　この立場では，有権者の総体が主権主体となる。 (0617A) 《》 ※←　有権者の総体が主権主体であるとするのは，被代表者と有権者団を一致させるプープル主権の立場である。（憲法条）。（最判昭）。
２	この立場では，小選挙区制に比べて，比例代表制の方がより適した選挙制度ということになる。異なる。 (0617B) 《》　この立場では，小選挙区制に比べて，比例代表制の方がより適した選挙制度ということになる。 (0617B) 《》 ※←　ナシオン主権においては，代表と被代表との関係は必ずしも一致する必要はないと考えるのであるから，人民の意思の反映を重視する比例代表制が適しているとはいえない。（憲法条）。（最判昭）。
３	この立場では，代表制が採られる場合，リコール制といった代表者に対する政治責任追及手段を制度化することが必要となる。異なる。 (0617C) 《》　この立場では，代表制が採られる場合，リコール制といった代表者に対する政治責任追及手段を制度化することが必要となる。 (0617C) 《》 ※←　リコール制といった代表者に対する政治責任追及手段を制度化することが必要とするのは命令委任の立場であり，プープル主権論に親しむ。（憲法条）。（最判昭）。
４	この立場では，政治が従うべき主権者の意思とは，すべての人民（国民）の利益にかなった意思，すなわち，「真の人民の意思」を指し，過去・将来の人民の意思をも含むものとする。同じ立場。 (0617D) 《》　この立場では，政治が従うべき主権者の意思とは，すべての人民（国民）の利益にかなった意思，すなわち，「真の人民の意思」を指し，過去・将来の人民の意思をも含むものとする。 (0617D) 《》 ※←　ナシオン主権論からは，国民を抽象的観念的存在と捉えるので，現在の国民に限定する必要はないので，本肢のようになる。（憲法条）。（最判昭）。
５	この立場では，議員が所属政党からの除名により，議員資格を失うものとする制度は合理的であるということになる。異なる。 (0617E) 《》　この立場では，議員が所属政党からの除名により，議員資格を失うものとする制度は合理的であるということになる。 (0617E) 《》 ※←　議員の所属政党変更の自由を否認したり，党からの除名をもって議員資格を喪失させたりすることは自由委任の原理に矛盾するので，ナシオン主権論の立場ではない。（憲法条）。（最判昭）。
	正　解　　　４