民法

◎

　Ａ男とＢ女について婚姻の届出がされている場合に関する次のアからオまでの記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは，後記１から５までのうちどれか。

ア

　未成年者であるＢ女の父母がいずれも婚姻に同意していなかった場合でも，Ｂ女の父は，Ａ男とＢ女の婚姻を取り消すことができない。

イ

　Ａ男がＢ女に無断で婚姻届を提出した場合には，婚姻届の際に両者が事実上の内縁関係にあり，その後も夫婦としての生活を継続し，Ｂ女が婚姻の届出がされたことを容認したとしても，Ａ男とＢ女の婚姻が有効になることはない。

ウ

　Ｂ女とＢ女の前夫との間の17歳の嫡出子をＡ男が養子とする場合には，Ｂ女は縁組をしなくともよい。

エ

　Ｂ女は，Ａ男と離婚する前であっても，Ａ男の母親に対しては扶養義務を負うことはない。

オ

　Ａ男は，Ｂ女に対し，不動産を贈与したが，その後，Ａ男とＢ女の婚姻関係が実質的に破綻するに至った場合には，Ａ男は，民法第754条の規定によって当該贈与契約を取り消すことができない。

　１　アイ　　　　　　２　アウ　　　　　　３×イエ　　　　　　４　ウオ　　　　　　５　エオ　　　

（参考）　民法
　（夫婦間の契約の取消権）
第754条　夫婦間でした契約は，婚姻中，いつでも，夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし，第三者の権利を害することはできない。

◎	Ａ男とＢ女について婚姻の届出がされている場合に関する次のアからオまでの記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは，後記１から５までのうちどれか。 (2021) 【婚姻の届出】 **
ア	未成年者であるＢ女の父母がいずれも婚姻に同意していなかった場合でも，Ｂ女の父は，Ａ男とＢ女の婚姻を取り消すことができない。正しい。 (2021A) 《未成年者の婚姻の取消》　未成年者であるＢ女の父母がいずれも婚姻に同意していなかった場合でも，Ｂ女の父は，Ａ男とＢ女の【婚姻】を取り消すことができない（民法737条）。 (2021A) 《未成年者の婚姻の取消》 ※←　父母の同意は，婚姻成立の要件ではなく，婚姻届が受理されるための要件に過ぎないから。 ※←　同意のない未成年者の婚姻が誤って受理された場合，取り消すことができない（民法744条1項）（最判昭30.4.5）。
イ	Ａ男がＢ女に無断で婚姻届を提出した場合には，婚姻届の際に両者が事実上の内縁関係にあり，その後も夫婦としての生活を継続し，Ｂ女が婚姻の届出がされたことを容認したとしても，Ａ男とＢ女の婚姻が有効になることはない。誤り。 (2021B) 《追認》　Ａ男がＢ女に無断で婚姻届を提出した場合，婚姻届の際に両者が事実上の内縁関係にあり，その後も夫婦としての生活を継続し，Ｂ女が婚姻の届出がされたことを容認（追認）したと［すれば］，Ａ男とＢ女の【婚姻】が有効に［なる］（民法739条）（最判昭47.7.25）。 (2021B) 《追認》　＝　(0218D) 《追認による遡及効》 ※←　追認により婚姻届出の意思の不存在は補完され，また，追認の効力を認めることは，当事者の意思にも沿い，第三者の利益を害することもないから。 ※←　事実上の夫婦の一方が他方に無断で婚姻の届出をした場合に，他方が追認したとき，婚姻は，届出の時に遡って有効となる（最判昭47.7.25）。
ウ	Ｂ女とＢ女の前夫との間の17歳の嫡出子をＡ男が養子とする場合には，Ｂ女は縁組をしなくともよい。正しい。 (2021C) 《縁組》　Ｂ女とＢ女の前夫との間の17歳の嫡出子をＡ男が養子とする場合には，Ｂ女は縁組をしなくともよい（民法795条但）。 (2021C) 《縁組》 ※←　すでに自己の嫡出子である子を，養子とする実益がないから。 ※←　配偶者のある者が未成年者を養子とするには，配偶者とともにしなければならない。ただし，配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は，この限りでない（民法795条但）。
エ	Ｂ女は，Ａ男と離婚する前であっても，Ａ男の母親に対しては扶養義務を負うことはない。誤り。 (2021D) 《扶養義務》　Ｂ女は，Ａ男と離婚する前であれば，Ａ男の母親に対して扶養義務を負うことが［ある］（民法877条2項）。 (2021D) 《扶養義務》 ※←　1 直系血族及び兄弟姉妹は，互いに扶養をする義務がある。 2 家庭裁判所は，特別の事情があるときは，前項に規定する場合のほか，３親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。 3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは，家庭裁判所は，その審判を取り消すことができる（民法877条）。
オ	Ａ男は，Ｂ女に対し，不動産を贈与したが，その後，Ａ男とＢ女の婚姻関係が実質的に破綻するに至った場合には，Ａ男は，民法第754条の規定によって当該贈与契約を取り消すことができない。正しい。 (2021E) 《婚姻関係の破綻》　Ａ男は，Ｂ女に対し，不動産を贈与したが，その後，Ａ男とＢ女の婚姻関係が実質的に破綻するに至った場合には，Ａ男は，民法754条の規定によって当該贈与契約を取り消すことができない（最判昭42.2.2）。 (2021E) 《婚姻関係の破綻》　＝　(0323D) ※←　この場合に，契約取消権を認めることは，かえって不当な結果となるから。 ※←　夫婦の一方は，婚姻関係が破綻して別居中に夫婦間でした契約については，婚姻中でも，これを取り消すことができない（最判昭42.2.2）。
	１　アイ　　　　　　２　アウ　　　　　　３×イエ　　　　　　４　ウオ　　　　　　５　エオ
	（参考）　民法　（夫婦間の契約の取消権）第754条　夫婦間でした契約は，婚姻中，いつでも，夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし，第三者の権利を害することはできない。