正しい。
憲法第76条にいう司法権とは，裁判所法第３条第１項が規定する「法律上の争訟」を審査する権限をいうものであるとする見解がある。この見解に対しては，行政権の範囲を控除説に従って理解する限り，［法律上の争訟の審査以外の権限は憲法上は司法権の範囲に属さず，行政権の範囲に属するはずであるが］，裁判所法は，［「その他法律において特に定める権限を有する」と規定し］，「法律上の争訟」の審査以外の権限を裁判所に与えていることになるから，憲法で認められた司法権の範囲を変更してしまうことになるのではないかとの批判が可能である。

• (1418A) 《司法権の範囲》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。
  　憲法で定められた司法権の範囲を，法律で変更してしまうことになる。

誤り。
不在者投票制度が悪用されたということを理由とする選挙の効力についての争訟は，［客観的な選挙の適正を求めるものであり，客観訴訟のうちの選挙訴訟にあたるので：×当該選挙が憲法第31条の保障する適正手続にのっとって行われなかったことを根拠とするものであって］，裁判所法第３条第１項にいう「法律上の争訟」に該当［せず，「その他法律において特に定める権限」として］，憲法第76条の司法権が及ぶ。

• (1418B) 《選挙訴訟》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。
  　刑事手続の問題ではない。
  　選挙が適正手続にのっとって行われたか否かは，権利義務に関する当事者間の紛争ではない。

正しい。
議員の資格に関する争訟の裁判は，性質上，［法令を適用することによって解決し得べき当事者間の紛争といえるので］，裁判所法第３条第１項にいう「法律上の争訟」に該当するものの，同項にいう「日本国憲法に特別の定め（55条）のある場合」に当たるので司法権は及ばないが，［資格争訟の裁判とは別に］，当選訴訟において議員の被選挙権の有無が争われるときは，［憲法上特別の定めはないので］，裁判所で審査することができる。

• (1418C) 《議員資格の有無》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。
  第55条〔議員の資格争訟〕
  　両議院は，各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し，議員の議席を失はせるには，出席議員の３分の２以上の多数による議決を必要とする。
  ←　議院の資格に関する争訟の裁判は，議院の自律権を尊重し，当該議員の属する議院が自ら行うべきものとされている。

誤り。
裁判所法第３条第１項にいう「その他法律において特に定める権限」としては，行政事件訴訟法が定める民衆訴訟や機関訴訟を審査する権限が［あり］，これらの訴訟では，請求者の主観的な権利・利益が侵害されたことを理由とするわけではない［が］，裁判所は憲法判断を加えることが［できる］。

• (1418D) 《客観訴訟》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。
  　このような客観訴訟は，法律上の争訟には当たらないが，裁判所は憲法判断が可能である。

正しい。
地方議会の議員に対する出席停止の適否は，除名とは異なり，議会の内部規律に基づく自治的措置に任せるべき事項であって，裁判所法第３条第１項にいう「法律上の争訟」には該当せず，司法権は及ばないとする見解がある（最判昭35.10.19）。この見解に対しては，地方自治法が議会の懲罰につき，除名と出席停止とを区別して規定していないことから（地方自治法135条），出席停止の適否も国法秩序との抵触が問題とされる「法律上の争訟」に当たるとみるべきであって，除名の場合と取扱いを異にする根拠としては十分ではないとの批判が可能である（同判決の少数意見）。

• (1418E) 《地方議会議員の出席停止》
  ※←　（憲法条）。（最判昭）。
  　法令の適用により解決可能な議員の権利・義務に関しての紛争であるから，法律上の争訟に当たる。