消費貸借は要物契約であり，金銭の授受がない以上，抵当権設定時には消費貸借は効力を生じていない。→　附従性により抵当権は無効
but 抵当権を無効とすれば，現実の取引は著しく阻害される。
⇒　附従性とは，単に実行における附従性を意味するにすぎない。
→　抵当権設定も有効

員外貸付は無効な消費貸借であり，貸付債権が被担保債権であると解すれば，附従性により抵当権も無効となり，農協は自己の出した金銭を確保できなくな　りそうである。
but 消費貸借が無効の場合でも，金銭が交付されており，不当利得の返還請求権が発生し，これと貸付債権とは経済的に同一のはずである。
⇒　本件の抵当権設定契約は，消費貸借が無効であれば，不当利得返還請求権を担保する趣旨であると解することができる（最判昭40.6.30）。

(S6317A) 《将来債権》
□←　現に存在する債権である必要はなく、期限付債権や条件付債権のような、将来成立する債権でも、差し支えない。
※←　按スルニ消費貸借ニ於テ目的物ノ授受ハ，消費貸借ノ意思表示ト同時ナルコトヲ要セス，後ニ之ヲ為スヲ妨クルコトナシ，唯其授受アルマテハ消費貸借成立セサルノミ。蓋シ目的物ノ授受ハ，消費貸借ノ構成部分ナレハ，其実現ナクンハ消費貸借ハ成立セサルモ，法律行為ノ各構成部分ノ実現ハ，必スシモ同時ナルコトヲ要スルモノニアラサレハナリ。而シテ消費貸借ヲ担保スル為メ抵，当権ノ設定アリタルトキハ，苟クモ当事者ノ意思カ其抵当権ヲ以テ担保セントスル消費貸借ナル以上ハ，其消費貸借カ抵当権設定当時成立シタルト，将タ後ニ金銭ノ授受ニ因リ成立スルトヲ問ハス，其抵当権ハ有効ニ之ヲ担保スルモノナリトス（大判大2.5.8）。

(S6317B) 《公序良俗》
□←　公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は，無効とする（民法90条）。

(S6317C) 《和解》
□←　債権が弁済や放棄、あるいは和解によって一部消滅すれば、抵当権も、その範囲で消滅する。
※←　当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ，又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において，その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは，その権利は，和解によってその当事者の一方に移転し，又は消滅したものとする（民法696条）。

(S6317D) 《抵当権の復活》
□←　債務者との関係では，抵当権は復活する。物上保証人の場合は，復活しない。
※←　然レトモ債務者カ指名債権ノ譲渡ヲ異議ヲ留メスシテ承諾シタルトキハ，譲渡人ニ対抗スルコトヲ得ヘカリシ事由アルモ，之ヲ以テ譲受人ニ対抗シ得サルコト，民法第468条第1項ノ規定スル所ナルヲ以テ，抵当権附債権ニ付債権者カ，債務者ノ完済ニ因リ債権及抵当権ノ消滅シタルニ拘ラス，抵当権ト共ニ該債権ヲ譲受人ニ譲渡シ，債務者異議ヲ留メスシテ之ヲ承諾シタル場合ニ於テモ，右ノ規定ニ依リ債務者ハ譲受人ニ対シテ，右債務ノ消滅ヲ対抗シ得サルコト勿論ナリト雖，抵当権ノ消滅ニ付テハ，輙ク之ト同一ノ推理ヲ為シ得ルモノト即断スルヲ得ス。何トナレハ民法第468条ハ債権譲渡ノミニ関スルモノニシテ，物権ノ譲渡ニ付規定シタルモノニアラス。而モ抵当権ノ譲渡ニ付債務者カ異議ヲ留メスシテ之ヲ承諾シタル場合ノ効果ニ付，法律ハ何等規定スル所ナキヲ以テ，一般ノ法理ニ依リテ之ヲ決スルノ外ナケレハナリ。抑抵当権ハ債権ニ従タル物権ナルヲ以テ，債権ノ消滅 ニ因リ其ノ債務ノ弁済ヲ担保スル抵当権ノ消滅スルハ当然ノ事由ニ属シ，苟モ債権ノ消滅ヲ主張シ得ル者ハ，抵当権ノ消滅ヲ其ノ消滅ノ登記ノ有無ニ拘ラス，何人ニ対シテモ主張シ得ルモノト謂ハサルヘカラスト雖，其ノ反面ニ於テ債権ノ消滅ヲ対抗シ得サル者カ，抵当権消滅ノ登記ナキニ拘ラス，債権ノ消滅ヲ理由トスル抵当権ノ消滅ヲ主張シ得サルコトモ亦否定シ得サル所ニシテ，斯ク解スルモ，例ヘハ債務者以外ノ抵当権設定者或ハ先順位抵当権ノ消滅ニ因リ順位ヲ進メ得タル後順位抵当権者ノ如キ，其ノ抵当権ノ消滅ニ付正当ノ利益ヲ有スル第三者ヲシテ不測ノ損害ヲ被ラシムルコトナシ。蓋此等ノ第三者ハ，債権消滅ノ事実ヲ主張シ得ルモノナルヲ以テ，債権ノ不存在ヲ前提トスル抵当権ノ消滅ヲ主張シ得ルコト前段説示ノ如クナレハナリ（大判昭8.8.18）。

(S6317E) 《抵当権の流用》
□←　流用前に法律上の利害関係を有するに至った第三者に対しては無効（大判昭8.11.7）。
※←　金銭債権の担保のため債務者所有の不動産に所有権移転請求権保全の仮登記をするのに代えて，他の債権者の債権担保のための所有権移転請求保全の仮登記が被担保債権の消滅にもかかわらず残存しているのを利用して新債権者への右請求権移転の附記登記をした場合，たとえ不動産物権変動の過程を如実に反映していなくとも，仮登記移転の附記登記が現実の状態に符合するかぎり，当事者間における当事者はもちろん，右附記登記後にその不動産上に利害関係を取得した第三者は，特別の事情のないかぎり，右附記登記の（流用による登記の）無効を主張するにつき正当な利益を有しないものと解するのが，相当である（最判昭49.12.24）。