民法

◎	土地の売主が詐欺を理由として売買契約を取り消した後に，買主が土地を第三者に売り渡した場合の売主と第三者との関係について，次のＡ説，Ｂ説の考え方がある。下記のアからオまでの記述のうち，いずれの説にも矛盾しないものの組合せは後記１から５までのうちどれか。Ａ説　取消後の第三者との関係は，先に登記をした者が優先する。Ｂ説　取消後の第三者との関係は，民法第９４条第２項の類推により規律される。 (0434) 【取消後の第三者】　土地の売主が詐欺を理由として売買契約を取り消した後に，買主が土地を第三者に売り渡した場合の売主と第三者との関係Ａ説（対抗問題）　取消後の第三者との関係は，先に登記をした者が優先する。 ** Ｂ説　取消後の第三者との関係は，民法９４条２項の類推により規律される。原権利者と取消し後の第三者との関係については，取消しによる所有権復帰を新たな物権変動とみて177条の対抗問題とみる説（Ａ説，判例・通説），取消しによる遡及的無効を貫きつつ，取消し後登記を有効に除去し得るのに放置した点に原権利者の帰責性を認めて94条２項の類推により第三者を保護する説（Ｂ説，有力説）が主に主張されている。
ア	売主と取消後の第三者との関係は，取消原因が詐欺でも強迫でも同じである。いずれの説にも矛盾しない。 (0434A) 《取消後》　いずれの説によっても，売主と取消後の第三者との関係は，取消原因が詐欺でも強迫でも同じである。 (0434A) 《取消後》 ※←　取消し「前」の第三者との関係では，96条３項が詐欺についてのみ，第三者保護規定を置くことから，詐欺と強迫とで差異が生じる。しかし，取消し後の第三者との関係では，詐欺･強迫いずれでも，取消しにより復帰的物権変動は生じるし（Ａ説），登記を除去しうるのに除去しなかった点に被欺罔者･被強迫者の帰責性を認め得る（Ｂ説）。（民法条項）。　*
イ	取消後の第三者は，悪意であれば保護されない。Ａ説と矛盾する。 (0434B) 《善意》　Ｂ説によれば，取消後の第三者は，悪意であれば保護されない。 (0434B) 《善意》 ※←　Ａ説によれば，第三者は先に登記を備えれば悪意であっても（背信的悪意者でない限り）保護される。Ｂ説によれば，第三者は「善意」であることが必要である。（民法条項）。　*
ウ	法律行為は，取り消されると遡及的に無効になるから，対抗関係は生じない。Ａ説と矛盾する。 (0434C) 《遡及的無効》　Ｂ説によれば，法律行為は，取り消されると遡及的に無効になるから，対抗関係は生じない。 (0434C) 《遡及的無効》 ※←　Ｂ説は本肢のように主張してＡ説を批判する。（民法条項）。　*
エ	登記には公信力がないから取消の前後を問わず，取得時に第三者を保護する旨の規定がない限り第三者は保護されない。いずれの説とも矛盾する。 (0434D) 《取消後》　いずれの説によっても，登記には公信力がなく，［取消後の第三者を保護する規定が存しないので，いかにして第三者を保護すべきか問題となる：×取消の前後を問わず，取得時に第三者を保護する旨の規定がない限り第三者は保護されない］。 (0434D) 《取消前》 ※←　両説とも，96条３項の「第三者」とは取消し前の第三者に限られ，取消し後の第三者は同条項により保護されないことを前提に，解釈により保護を図ろうとするものである。（民法条項）。　*
オ	保護されない者は，登記を自己名義に回復できたにもかかわらず，それをしなかった者である。いずれの説にも矛盾しない。 (0434E) 《登記の回復》　いずれの説によっても，保護されない者は，登記を自己名義に回復できたにもかかわらず，それをしなかった者である。 (0434E) 《登記の回復》 ※←　いずれの説からも，原権利者が取消し後登記を放置しておくと，第三者に優先されるおそれがある。すなわち,両説の基礎には,登記を回復できたのにしなかった者は保護されなくとも仕方がないとめ実質的判断がある。（民法条項）。　*
	１　アエ　　　　２○アオ　　　　３　イウ　　　　４　イエ　　　　５　ウオ