民法

◎	即時取得に関する次のアからオまでの記述のうち，誤っているものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。なお，甲は動産であり，即時取得の規定を適用することができる場合，平穏・公然・善意・無過失の要件は満たしているものとする。 (2127) 【即時取得】 **
ア	Ａから甲の売却を委任されたＡの代理人Ｂが，Ｃに対しＡの代理人として甲を売却して引き渡したが，Ａが甲の所有者ではなかった場合，Ｃは甲を即時取得することができる。正しい。 (2127A) 《無権利者》　Ａから甲の売却を委任されたＡの代理人Ｂが，Ｃに対しＡの代理人として甲を売却して引き渡したが，Ａが甲の所有者ではなかった場合，Ｃは甲を【即時取得】することができる。 (2127A) 《無権利者》 ※←　（民法条項）。代理人の行為は本人に帰属し，買主が代理人と取引する場合には，その信頼は本人に向けられる。そうだとすれば，本人が無権利者である場合にも，間接占有の外観は存在し，その占有を信頼した買主には占有に公信力を与える民法192条の適用がある。
イ	Ａの無権代理人Ｂが，Ａの所有する甲をＣに売却して引き渡した場合，Ｃは甲を即時取得することができる。誤り。 (2127B) 《無権代理》　Ａの無権代理人Ｂが，Ａの所有する甲をＣに売却して引き渡した場合，Ｃは甲を《即時取得》することが［できない］。 (2127B) 《無権代理》 ※←　（民法条項）。民法192条の適用には，前主が処分権限のないものであることが必要であり，前主が所有者であるが無権代理人の行為により買主が権利を取得できない場合には同条の適用はない。これは取引行為そのものの瑕疵であり，前主の占有に対する信頼を保護する即時取得の問題とはならないからである。よって即時取得を認める本肢は誤りである。
ウ	Ａの無権代理人Ｂが，Ｄの所有する甲をＡが所有するものとしてＣに売却して引き渡した場合において，Ｂの代理行為について表見代理が成立するとき，Ｃは甲を即時取得することができる。正しい。 (2127C) 《表見代理》　Ａの無権代理人Ｂが，Ｄの所有する甲をＡが所有するものとしてＣに売却して引き渡した場合において，Ｂの代理行為について表見代理が成立するとき，Ｃは甲を【即時取得】することができる。 (2127C) 《表見代理》 ※←　（民法条項）。本件のように無権代理人の行為につき表見代理が成立する場合，無権代理人の法律行為の効果は本人に帰属する（109条以下）。そうだとすれば，本件は適正な代理権を有する代理人が，無権利者である本人を代理した事例と同様に考えることができる。　そうだとすれば，買主が代理人と取引する場合には，その信頼は本人に向けられることから，その間接占有の外観を信頼した買主には，占有に公信力を与える民法192条の適用があることとなる。
エ	Ａの所有する甲を保管しているＢが，甲の所有者と称してＣとの間で賃貸借契約を締結して甲を引き渡した場合，ＣはＡに対抗できる賃借権を即時取得することができない。正しい。 (2127D) 《賃借権》　Ａの所有する甲を保管しているＢが，甲の所有者と称してＣとの間で賃貸借契約を締結して甲を引き渡した場合，ＣはＡに対抗できる賃借権を《即時取得》することができない。 (2127D) 《賃借権》 ※←　（民法条項）。即時取得は引渡しを伴う物権の移転に認められるため，その対象は原則として所有権と質権に隕られる（例外として319条）。本件のような動産賃借権に関しては，判例は否定している（大判昭13･ 1 ･28）。
オ	Ａの所有する甲を保管しているＢが，Ｃから金銭を借り，その債務を担保するため，甲の所有者と称して，Ｃとの間でＣを甲の質権者とする合意をして甲を引き渡しても，Ｃは質権を即時取得することができない。誤り。 (2127E) 《質権》　Ａの所有する甲を保管しているＢが，Ｃから金銭を借り，その債務を担保するため，甲の所有者と称して，Ｃとの間でＣを甲の質権者とする合意をして甲を引き渡せば，Ｃは質権を【即時取得】することが［できる］。 (2127E) 《質権》 ※←　（民法条項）。民法192条にいう「その動産について行使する権利」とは，取引の性質上認められる権利を指し，質入れについては質権である。よって，質権は即時取得の対象となる。
	１　アイ　　　　　２　アウ　　　　　３×イオ　　　　　４　ウエ　　　　　５　エオ