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(1824A) 《取引の安全》
※←　（民法条項）。制限行為能力者制度は，類型的に意思能力を欠く可能性がある者を画一的に扱うことにより，もって，取引安全（相手方保護）にも配慮した制度と考えられている。例えば，相手方が，行為者の意思能力（意思無能力）について知り得なくても，未成年者であるかも知れない（制限行為能力者）との認識を持ちえれば，その行為が取り消される可能性も認識できるので，取引の安全に配慮できるということである。

(1824B) 《意思無能力者の保護》
※←　（民法条項）。行為無能力者が意思無能力者であった場合（オ参照）を考えて戴ければ，もっとも納得できると思う。かかる場合，たとえ意思無能力の点について証明できなくても，比較的証明か容易な制限行為能力を証明できれば，当該行為の取消しが可能となり，結果的に意思無能力者の保護にもつながるのである。

(1824C) 《将来効》
※←　（民法条項）。代理権授与行為については，争いがあるが，この法的性質を無名契約あるいは事務処理契約とすると，そもそも「同意」を要する行為ではないため，未成年者・被保佐人・被補助人は取り消し得ないが（民法５条１項ただし書・13条・17条参照），成年後見人の場合には取り消しうることになる。しかし，代理の場合の法的効果はあくまで本人に帰属するのである。そうすると，代理人たる成年後見人の保護のために取消しの遡及効を認める実益がなく，ここでは取引安全に留意して，その効力を将来効とすることで足りる。

(1824D) 《返還義務》
※←　（民法条項）。制限行為能力者保護の趣旨は，当該行為者が悪意のものであってもなお当てはまる。また、条文上も善意悪意で区別されていなり(民法121条但書)。したがって，制限行為能力者が悪意であっても、行為が取り消された場合には、現存利益の限度で返還義務を負うにとどまる。

(1824E) 《二重効》
※←　（民法条項）。立証の困難性に違いがある場合もあり，一概にこうはいえない。二重効を否定すると，本来保護されるべき制限行為能力者が，その制限行為能力をもって，保護されない（意思無能力の証明ができず，無効の主張ができない，かつ，その制限行為能力者であるため，取消の主張もできない）事態も生じることになり，制度趣旨に反することになる。