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(1723A) 《建物の所有権》
※←　ＡＢ間の贈与契約（§549)は，愛人関係を維持継続する目的のものであるから，公序良俗に反して無効である（§90）。もっとも，かかる不法の原因により贈与した未登記建物の引渡しは, 708条にいう「給付」にあたる。したがって，Ａは，Ｂに対して，不当利得に基づいて当該建物の返還を請求できない。そればかりでなく, 708条の趣旨から，所有権に基づく返還請求も認められない。このように贈与者において給付した物の返還請求が認められないことの反射的効果として，建物の所有権はＢに帰属する（最判昭45.10.21)。
（民法条項）。最大判昭45・10・21より，不法原因給付者（贈与者）は不当利得または所有権に基づく請求をなし得ない以上，反射的効果として目的物の所有権は受贈者に帰属する。

(1723B) 《公序良俗違反》
※←　ＡＢ間の贈与契約は公序良俗に反して無効であるから（§90), Bは，Ａに対し，贈与契約に基づく債権的請求権としての移転登記手続の請求をすることはできない。なお，アで述べたとおり，建物の所有権はＢに帰属するから，Ｂは，Ａに対し，所有権に基づく物権的請求としての移転登記手続の請求をすることはできる。
（民法条項）。愛人（妾）関係を維持継続する目的でなされた贈与契約は公序良俗に反し無効（民90条）である以上，贈与契約に基づく債権的請求としての移転登記手続請求はできない。

(1723C) 《背信的悪意者》
※←　177条の「第三者」とは，当事者もしくはその包括承継人にあらずして不動産に関する物権の得喪および変更の登記の欠訣を主張する正当な利益を有する者をいい（大判明41.12.15),背信的悪意者は排除されるが,単純な悪意者は含まれる（背信的悪意者排除説）。なぜなら，背信的悪意者は自由競争原理を逸脱するものとして登記を備えなかった者に比べて保護に値しないが，単純悪意者はなお保護に値するからである。
（民法条項）。民法177条の「第三者」は，単なる悪意者ではなく，背信的悪意者を排除する趣旨である。そして，第一譲受人が別にいることだけを知って買い受けた第二譲受人は，背信的悪意者とはいえない。よって第二譲受人は「第三者」に当たらないとは言えない。

(1723D) 《対抗関係》
※←　所有権取得を争う者との優劣関係を，無権利者からの取得の問題と扱うか，登記の具備の先後を基準として決める（§177)かは，判例・学説上，不動産取引の安全をいかに図るかという政策問題として把握されている。そして,177条の趣旨は,登記具備の可能性を前提に，その先後関係を基準として所有権取得を争う者との優劣関係を決し不動産取引の安全を図ることにある。そうだとすれば，所有権移転登記の手続を求めることができるという関係にあるならば,登記の具備の先後を基準として優劣関係を決することができる。本間の場合，イで述べたとおり，ＢはＡに対し所有権に基づき物権的請求としての移転登記手続の請求をすることができるし，ＣもＡに対し売買契約に基づき移転登記手続の請求をすることができるから，登記の具備の先後を基準として優劣関係を決することができる。したがって，ＢとＣとは対抗関係に立つと評価できる。
（民法条項）。前段については政策的な問題であり間違いない。とすると，後段のように対抗関係として評価しても誤っているとは言えない。

(1723E) 《取得時効と登記》
※←　取得時効と登記の問題で，二重譲渡に類似する関係が認められるのは，時効完成後の第三者の問題である。本解答の事例は，時効完成前の第三者の問題であり，ＥとＦは当事者の関係として処理される。すなわち，Ｅは，時効完成時の登記名義人であるＦに対して，登記なくして時効取得を対抗できる（大判大7. 3. 2)。
（民法条項）。最判昭36・ 7 ・20より，時効取得者は時効完成前に原所有者から登記を経由した第三者に対して，登記なくして目的物を対抗できる。当事者類似の関係にあるからである。