Ａは，Ｂに対する債権をＣに譲渡し，その後，同じ債権をＤに譲渡した。

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(1630A) 《先の譲渡通知》
※←　（民法条項）。債権が二重に譲渡された場合，その優劣は債務者に対する確定日付の到達の先後（債務者の認識）で決する。本問では，Ｃの確定日付がＢのＤへの確定日付による承諾より先に到達しているので，ＢはＡＤ間の譲渡より先にＡＣ間の譲渡を認識している。よってＣはＤに優先し，確定的に債権を取得するので，ＢはＤからの弁済請求を拒むことができる。
指名債権の二重譲渡の場合に，確定日附ある証書による通知または承諾が複数あるときは，譲受人相互の優劣は，その通知が債務者に到達した日時または承諾の日附の前後によって決定される（最判昭49. 3 . 7 )。本記述では，Ｃに対する債権譲渡についてＡから内容証明郵便による通知（確定日附ある証書による通知）がＢに到達した後に，ＢがＡからＤに対する債権譲渡について確定日附ある証書で承諾している。それゆえ,ＣがＤに優先するため，ＢはＤからの弁済請求を拒むことができる。このことは，Ｂの承諾が異議を留めない承諾であっても変わらない。異議を留めない承諾により債務者が債権の譲受人に対抗し得ない事由（§468 �T）には，債権の帰属の優劣が含まれない（大判昭7. 6 .28)からである。

(1630B) 《同時到達》
※←　（民法条項）。確定日付ある証書が同時に債務者に到達した場合，債務者は単に同順位の譲受人が他に存在することを理由として弁済の責めを免れることはできない（最判昭55・ 1 ・11）。
記述アで述べたように，指名債権の二重譲渡の場合に，確定日附ある証書による通知が複数あるときは，確定日附の前後ではなく，通知が債務者に到達した日時の前後によって決定される（最判昭49. 3 . 7 )。そして，複数の確定日附ある通知が同時に到着したときは，各譲受人は，債務者に対して債権全額の弁済を請求することができ，債務者は，他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由がない限り，他に譲受人がいることを理由にその請求を拒むことができない（最判昭55. 1.11)。それゆえ，Ｂは，Ｃに対し弁済していた場合にはＤからの弁済請求を拒むことができるが，弁済していなかった場合にはＤからの弁済請求を拒むことができない。

(1630C) 《確定日附なし》
※←　（民法条項）。ＣはＢより確定日付のない証書により承諾を受けており，一方Ｄは確定日付のある証書で通知をしているのでＤはＣに優先する（民467条２項）。よってＢがＣに弁済しても免責されない。
指名債権の二重譲渡の場合に，第１の譲渡の通知または承諾に確定日附がなく，第２の譲渡の通知に確定日附があるときは，第２の譲受人が債務者に対する関係でも唯一の債権者となる（大連判大8. 3 .28)。それゆえ，Ｄから請求を受ける前であっても，Ｄが唯一の債権者となるから，Ｂは債務者に対する対抗要件を先に備えたＣに対して弁済しても免責されない。

(1630D) 《弁済後の譲渡通知》
※←　（民法条項）。ＢのＣに対する弁済により債権は確定的に消滅している。よってたとえ後に確定日付ある通知が到達しても債権の消滅を主張できる。
債務者が第１の債権の譲受人に弁済し，さらに，当該債権につき第２の債権譲渡が行われたとき，第２の債権譲渡が確定日附ある証書による通知によりなされても，第２の譲受人は債権を取得しない（大判昭7 .12. 6 )。なぜならば，第１の弁済により債権は消滅し，第２の譲受人は既に消滅した債権を譲り受けることになるからである。それゆえ，Ｂは，第２譲受人Ｄからの弁済請求を拒むことができる。

(1630E) 《事後の確定日付》
※←　（民法条項）。本件では事後に得た確定日付の効果が遡及するか問題となるも，遡及するとすると確定日付を要求した467条２項の趣旨を没刔jするため，遡及することはないと解される。よってＤはＣに優先し，ＣはＢに対して請求することはできない。
指名債権の二重譲渡の場合に，第１の譲渡の通知または承諾に確定日附がなく，第２の譲渡の通知に確定日附があるときは,第２譲受人が第１譲受人に優先する（§467�U）。そして，債権譲渡が確定日附のない証書による通知または承諾によりなされた後，その証書につき確定日附を得た場合でも，その日附以後は対抗力を取得するが（大判大4.2.9),対抗力は遡及しない。それゆえ，第１譲受人Ｃが得た証書の日附以前に，確定日附ある証書による通知により優先するＤが存在する以上，ＣはＢに対して弁済を請求することができない。