(1) 法律の定めていない新しい種類の物権を作ることはできない。
(2) 法律の定める物権に法律の認めない違った効力を与えてはならない。
　（趣旨）封建的物権関係　→　近代的土地所有権の確立
　　　　　物権の排他性　→　公示の徹底
　　　　　本法その他の法律＝○憲法上の法律　 ×命令（×政令，×省令，×条例）
　　　　　　　△慣習法上の物権（○流水利用権，○温泉権，○譲渡担保権，×上土権）

(a) １つの所有権の客体は１つの物である
　　→　客体の単一性・独立性
　　→　一部・構成部分，集合物，公示（231条２項，242条但書）
　　→　１不動産１登記用紙の原則
(b) １つの物の上には１つの所有権しか成立しない
　　→　排他性，共有

(S0909A) 《包括的な譲渡担保》
□←　単一性の例外して，個々のビールではなく，集合物としてのビールとしてとらえることも，場所等で特定すれば，可能だから。
※←　構成部分の変動する集合動産についても，その種類，所在場所及び量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範囲が特定される場合には，一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるものと解するのが相当である（最判昭54.2.15）。
※←　ところで，構成部分の変動する集合動産であっても，その種類，所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には，一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができるものと解すべきであることは，当裁判所の判例とするところである。そして，債権者と債務者との間に，右のような集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され，債務者がその構成部分である動産の占有を取得したときは債権者が占有改定の方法によってその占有権を取得する旨の合意に基づき，債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には，債権者は，当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至ったものということができ，この対抗要件具備の効力は，その後構成部分が変動したとしても，集合物としての同一性が損なわれない限り，新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶものと解すべきである。したがって，動産売買の先取特権の存在する動産が右譲渡担保権の目的である集合物の構成部分となった場合においては，債権者は，右動産についても引渡を受けたものとし て譲渡担保権を主張することができ，当該先取特権者が右先取特権に基づいて動産競売の申立をしたときは，特段の事情のない限り，民法333条所定の第三取得者に該当するものとして，訴えをもって，右動産競売の不許を求めることができるものというべきである（最判昭62.11.10）。

(S0909B) 《一部の時効取得》
□←　独立性の例外して，土地の一部を占有する場合には，一部の時効取得を認める必要性があるから。
※←　其ノ一部ノ占有アリタル場合ニ於テハ時効ノ完成ト同時ニ法律上其ノ占有部分ヲ区分シテ一個ノ物トシテ占有者ニ其ノ所有権ヲ賦与スル趣旨ナリト解スルヲ相当トス。
※←　占有トハ自己ノ為ニスル意思ヲ以テ一定ノ物ニ付事実上ノ支配ヲ為スコトヲ謂フ。而シテ其ノ支配ハ必スシモ物ノ全部ニ及フコトヲ要セス。物ノ一部ト雖之ヲ事実上支配シ得ヘキ限リ，亦之ヲ以テ占有ノ目的ト為スコトヲ得ヘキモノニシテ，如何ナル部分ニ対シ事実上ノ支配ヲ為スコトヲ得ヘキヤハ，取引ノ通念ニ照シテ之ヲ判断スルノ外ナキモノトス。土地ハ自然ノ状態ニ於テハ一体ヲ為セルモノナレトモ之ヲ区分シテ数個ノ土地ト為スコトヲ得ヘク，一旦区分セラレタル各個ノ土地モ更ニ之ヲ細分スルコトヲ得ヘキモノニシテ，其ノ区分若ハ細分ニ依リテ土地ノ性質作用ヲ失フニ至ルコトナキモノナルヲ以テ土地ハ其ノ一部ト雖之ヲ占有スルコトヲ得ルモノト解スルヲ相当トス。而シテ民法第162条ニ依レハ，所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ土地ヲ占有シタル者ハ其ノ占有ノ始善意ニシテ且過失ナカリシヤ否ノ区別ニ従ヒ10年間又ハ20年間ノ占有ニ因リ之カ所有権ヲ取得スルモノニシテ，土地ハ前記ノ如ク其ノ一部ト雖之ヲ占有スルコトヲ得ヘキモノナレトモ物ノ一部ハ所有権ノ目的ト為ルコトヲ得サルヲ以テ土地ノ一部ヲ占有スル者ハ同条所定ノ時効ニ因ル所有権ヲ取得スルコトヲ得サルモノノ如シ 。然リト雖前記ノ如ク土地ハ之ヲ区分シテ前ニ其ノ一部タリシ部分ヲ以テ一個ノ土地ト為スコトヲ得ヘキモノナレハ，其ノ区分ハ土地ノ所有者ニ於テ之ヲ為スコトヲ得ヘク占有者ニ於テ濫ニ他人ノ土地ヲ区分スルコトハ法律上許スヘカラサルトコロナレトモ，法律カ一定ノ場合ニ土地ノ一部ヲ区分シテ之ヲ一個ノ土地ト為スコトヲ妨クルコトナク，同条ハ占有カ物ノ全部ニ付テ行ハレタル場合ト其ノ一部ニ付テ行ハレタル場合トヲ区別セサルヲ以テ，物ノ一部ヲ占有シタル場合ヲ全然除外シタルモノト解スルニ足ラス。従テ同条ハ土地ノ如ク之ヲ区分シテ数個ト為スコトヲ得ル物ニ付テハ，其ノ一部ノ占有アリタル場合ニ於テハ時効ノ完成ト同時ニ法律上其ノ占有部分ヲ区分シテ一個ノ物トシテ占有者ニ其ノ所有権ヲ賦与スル趣旨ナリト解スルヲ相当トス。而シテ民法第144条ニ依レハ時効ノ効力ハ其ノ起算日ニ遡ルモノナルヲ以テ土地ノ一部ヲ占有シ時効ニ因リテ所有権ヲ取得シタル者ハ，其ノ起算日ニ於テ其ノ占有部分カ既ニ区分セラレタル一個ノ土地トシテ所有権ノ目的ト為リ得ヘキ性質ヲ有シ其ノ時ニ之カ所有権ヲ取得セルト同一ノ効力ヲ有 スルモノト解スヘキモノトス。然ラハ則チ，原審カ一筆ノ土地ハ分筆ノ手続ヲ為ス以前ニ於テハ，承継取得ノ場合タルト原始取得ノ場合タルトヲ問ハス，所有権ノ目的ト為ルコトヲ得サルモノト解シ，其ノ前提ノ下ニ上告人ノ請求ヲ棄却シタルハ時効ニ関スル規定ヲ誤解シタル不法アルモノニシテ上告論旨ハ理由アリ（大判大13.10.7）。

(S0909C) 《一部の地役権》
□←　独立性の例外して，地役権が土地の一部に関するときには，これを認める必要性があるから。
※←　土地の分割又はその一部の譲渡の場合には，地役権は，その各部のために又はその各部について存する。ただし，地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは，この限りでない（民法282条2項）。
※←　登記官は，承役地に地役権の設定の登記をしたときは，要役地について，職権で，法務省令で定める事項を登記しなければならない（新不登法80条4項）。

(S0909D) 《共有の法的性質》
□←　各共有者は，１個ずつ同一内容の所有権を有するが，目的物が１個のため，互いに制約しあっているだけで，排他性に反するわけではない。

(S0909E) 《数個の抵当権》
□←　抵当権が数個設定されても，優先順位が異なれば，同一内容の抵当権ではなく，排他性に反しない。