ＡＢ共有の甲土地上にＡ単独所有の乙建物が存在している場合

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(0823A) 《明渡し請求》
※←　（民法条項）。　共有者の使用・収益の方法は共有者間の協議によるが（大判昭13. 2 . 8),この協議は共有物の管理にあたるから，共有者の持分の過半数で決する(252条本文）。しかし，協議がなされない場合は，たとえ共有物の持分の過半数を超える者であっても，共有物を独占的に使用する他の共有者に対し，当然には共有物の明渡しを請求することはできず，持分に応じて占有の回復ができるにとどまる（最判昭41. 5.19)。したがって，本肢の場合も，ＢはＡに対し「乙建物を収去して甲土地を明け渡せ」と請求することはできない。

(0823B) 《損害賠償》
※←　（民法条項）。　持分権は,他の共有者に対する関係でも普通の所有権と性質を同じくする。すなわち，他の共有者との間において一定の割合による調節・制限を強いられるが，その点を除いては，一個の独立した所有権である。それゆえ，各共有者は，単独で，各共有者に対してその持分権を主張することができ，他の共有者が持分の割合に応じた使用をさせないときは，この者に対して持分に応じた損害賠償請求権を行使しうる。本肢の場合，他の共有者Ａが共有者Ｂの持分権を侵害しているのは明らかであるから，Ｂは持分権の侵害を理由として，Ａに対して損害賠償の請求をすることができる。したがって，Ａは「損害賠償を支払う必要はない」という答は妥当でない。

(0823C) 《法定地上権》
※←　（民法条項）。まず，持分権は一個独立の所有権であり，各共有者は何ら団体的規制を受けないのが共有の本質であるから，持分権は原則としてこれを譲渡し，担保に供し，放棄するなど，自由に処分することができる。それゆえ，Ａが自己の共有持分になした抵当権の設定は有効である。また，判例は，ＡＢ共有不動産上にＡ所有建物が存在し，Ａが共有持分に抵当権を設定した場合，建物について法定地上権は成立しないとする（最判昭29.12.23)。共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるから，共有地全体に対する地上権の設定には共有者全員の同意が必要であると解されるところ，Ｂの関知しないＡの抵当権設定・その実行により法定地上権の成立を認めるのは，Ｂの利益を不当に害してしまうからである。

(0823D) 《変更行為》
※←　（民法条項）。　共有不動産上の建物に対する抵当権設定は変更行為（§251)にあたるから，共有者全員の同意を必要とする。にもかかわらず，Ａ所有の乙建物に抵当権の設定がなされたわけであるが，このようなＢの関知しないＡの抵当権設定・その実行により法定地上権の成立を認めるのは，Ｂの利益を害する。したがって，「Ｂは，乙建物の買受人のための法定地上権の成立を否定できない」という答は，妥当でない。*

(0823E) 《管理行為》
※←　（民法条項）。　共有者の行う共有物の使用貸借契約の解除は，いわゆる管理行為（§252本文）に該当し，共有者の持分の過半数で決する（最判昭29. 3 .12)。したがって，持分の過半数を有するＡはＣとの使用貸借契約を解除することができるので，「Ｂが同意しない限り，使用貸借契約は解除できない」という答は，妥当でない。