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(1228A) 《軽過失》
※←　（民法条項）。管理者は原則として,事務管理について善管注意義務を負う（通説･698条の反対解釈）。ただ，管理者が本人の身体，名誉，財産を差し迫った危険（急迫の危害）から守るために事務管理をした場合（緊急事務管理）には，善管注意義務が軽減され，管理者に悪意または重過失があるときだけ，損害賠償義務を負う（§698)。なぜなら，緊急事務管理にはとっさの判断による迅速な管理行為が要求されるため，管理行為により利益を受ける本人に相当の負担を要求することが公平と考えられるからである。
　本間では，「好意で」事務を行なっているというだけで，急迫の危害から守るための緊急事務管理にはあたらない。したがって，管理者は悪意または重過失がなくても（軽過失があるならば）損害賠償責任を負うことがある。*

(1228B) 《報酬請求権》
※←　（民法条項）。明文の規定はないが，事務管理において，本人は管理者に報酬を支払う義務はない（通説）。なぜなら，事務管理は他人に対する過度の干渉という側面があるので，すべての場合に報酬請求権を認めることはかえって不当な結果になるからである。したがって，管理者は本人に対し報酬請求権を有しない。
　　　　　　なお，特別法上，特殊の事務管理につき報酬請求権が認められているものもある（遺失物法§４，水難救護法§24 �U,商法§800)。*

(1228C) 《損害賠償》
※←　（民法条項）。事務管理によって管理者が損害を被った場合でも，本人は管理者に対して損害賠償義務を負わない（民法702条２項は650条２項を準用していながら, 650条３項は準用していない）。したがって，管理者は本人に損害賠償請求できない。
　　　　　　なお，管理者の行為により本人は利益を得るのだから，「有益な費用」（§702 1）には，事務管理にあたって当然予想される損害が含まれるとして広く解されている（通説）。*

(1228D) 《効果帰属》
※←　（民法条項）。事務管理者が自己の名で法律行為をした場合には，その効果は管理者に帰属し，本人に直接帰属しない（大判明37. 5.12)。その契約が本人の利益になる場合でも変わらない。これは，法律上の義務なく他人に干渉するという事務管理の性質上当然とされる。
　　　　　　なお，事務管理者が本人の名で法律行為をした場合にも，その効果は当然には本人に帰属しない（最判昭36.11.30)。事務管理者に他人効を生じさせる代理権をみとめることは他人に対する過度の干渉となり，個人主義に反すると考えられるからである。*

(1228E) 《管理継続義務》
※←　（民法条項）。管理者は，いったん事務管理を開始した以上，本人・その相続人・法定代理人が管理することができるようになるまで，管理を継続する義務を負う（§700本文）。他人の事務の管理を開始しながら中途でやめると，かえって本人の利益が害されるからである。*