民法

◎	詐欺又は強迫による意思表示に関する次の１から５までの各記述のうち，正しいものを２個選びなさい。 (2301) 【詐欺・強迫】 **
１	強迫が認められるためには，表意者が，畏怖を感じ，完全に意思の自由を失ったといえなければならない。誤り。 (2301A) 《強迫》　強迫が認められるためには，表意者が，畏怖を感じ，［畏怖の結果意思表示をしたという関係が主観的に存すれば足りる：×完全に意思の自由を失ったといえなければならない］（民法96条1項）（最判昭33.7.1）。 (2301A) 《強迫》 ※←　詐欺又は強迫による意思表示は，取り消すことができる（民法96条1項）。 ※←　強迫ないし畏怖とは，明示若しくは暗黙に告知される害悪が客観的に重大か軽微かを問わず，これによって，表意者が畏怖し，畏怖の結果意思表示をしたという関係が主観的に存すれば足り，完全に意思の自由を失うことを意味するものではない（最判昭33.7.1）。
２	第三者によって強迫がされた場合において，意思表示の相手方がその事実を知らないときは，表意者は，その意思表示を取り消すことができない。誤り。 (2301B) 《第三者の強迫》　第三者によって［詐欺：×強迫］がされた場合において，意思表示の相手方がその事実を知らないとき，表意者は，その意思表示を取り消すことができない（民法96条2項）。 (2301B) 《第三者の強迫》 ※←　相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては，相手方がその事実を知っていたときに限り，その意思表示を取り消すことができる（民法96条2項）。 ※←　民法96条２項は,第三者による［詐欺］がされた場合の，善意の第三者を保護する規定である。この規定は，強迫の場合には適用されない（大判昭４・2. 20)。
３	表意者が相手方による虚偽の説明を信じて意思表示をした場合において，相手方に詐欺の故意がないときは，表意者は，民事上の救済を受けることはない。誤り。 (2301C) 《二段の故意》　表意者が相手方による虚偽の説明を信じて意思表示をした場合において，相手方に詐欺の故意がないとき，表意者は，民事上の救済を受けることが［ある］（民法96条1項、709条）。 (2301C) 《二段の故意》 ※←　詐欺又は強迫による意思表示は，取り消すことができる（民法96条1項）。 ※←　詐欺取消しをするためには，だます故意とそれにより意思表示させる故意が必要である（二段の故意）。したがって，相手方に詐欺の故意がない場合は，詐欺による取消しはできない。もっとも，過失が認められれば,別途,不法行為責任（民709条）が成立する余地はある。また，詐欺の故意を立証する必要がない消費者契約法による保護もあり得る。よって，民事上の救済を受けることはない,とする点で誤っている。
４	表意者が相手方の詐欺により意思表示をして契約が成立した場合，その契約によって生ずる相手方の債務が未履行であっても，表意者は，その意思表示を取り消さない限り，詐欺を理由として自らの債務の履行を拒絶することができない。正しい。 (2301D) 《同時履行の抗弁権》　表意者が相手方の詐欺により意思表示をして契約が成立した場合，その契約によって生ずる相手方の債務が未履行であっても，表意者は，その意思表示を取り消さない限り，詐欺を理由として自らの債務の履行を拒絶することができない。 (2301D) 《同時履行の抗弁権》 ※←　取り消さない限り、契約は有効であり、当然に無効となるものではない。 ※←　相手方の債務が未履行であることを理由として自己の債務の履行を拒む同時履行の抗弁権は相手方の債務の履行を強制する機能を有するものだから，取消事由である詐欺を理由に履行を拒むことはできない。
５	買主が売主を欺罔して土地の所有権を譲り受けた場合，売主が詐欺による意思表示の取消しをする前に，詐欺の事実を知らないでその土地について抵当権の設定を受けた者がいるときであっても，売主は，その意思表示を取り消すことができる。正しい。 (2301E) 《取消と対抗》　買主が売主を欺罔して土地の所有権を譲り受けた場合，売主が詐欺による意思表示の取消しをする前に，詐欺の事実を知らないでその土地について抵当権の設定を受けた者がいるときであっても，売主は，その意思表示を取り消すことができる（民法96条3項）。 (2301E) 《取消と対抗》 ※←　前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは，善意の第三者に対抗することができない（民法96条3項）。 ※←　詐欺取消し前に利害関係を有するにいたった第三者が善意である場合には表意者は意思表示の取消しを「対抗」することができないが（民法96条3項），取り消すことはできる。
	正　解　　　４　　５