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(2323A) 《時効消滅後》
※←　時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には，その債権者は，相殺をすることができる（民法508条）。
※←　相殺適状によって生じている期待を保護するため。

(2323B) 《受働債権の譲渡》
※←　相殺は，当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において，その意思表示には，条件又は期限を付することができない（民法506条1項）。
※←　意思表示の「相手方」について，債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもって対抗する場合には，その相殺の意思表示は上記譲受人に対してなすべきである（最判昭32.7.19）。

(2323C) 《不法行為》
※←　債務が不法行為によって生じたときは，その債務者は，相殺をもって債権者に対抗することができない（民法509条）。
※←　不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし，不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権とする相殺は許される（最判昭42.11.30）。

(2323D) 《抗弁権》
※←　２人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において，双方の債務が弁済期にあるときは，各債務者は，その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし，債務の性質がこれを許さないときは，この限りでない（民法505条1項但）。
※←　自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付着している場合，「債務の性質」が相殺を許さないものとして相殺が許されない（民505条1項但書）。しかし，請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は，相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う（最判平9.7.15）。
※←　自働債権と受動債権がともに同時履行の関係にある場合には，相殺を認めている。

(2323E) 《有価証券》
※←　有価証券に表章された金銭債権の債務者は，その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし，有価証券に表章された金銭債権を受動債権として相殺するに当たり，有価証券の占有を取得することを要しない（最判平13.12.18）。