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(2312A) 《物の引渡し》
※←　他人の物の占有者は，その物に関して生じた債権を有するときは，その債権の弁済を受けるまで，その物を留置することができる。ただし，その債権が弁済期にないときは，この限りでない（民法295条1項）。
※←　双務契約の当事者の一方は，相手方がその債務の履行を提供するまでは，自己の債務の履行を拒むことができる。ただし，相手方の債務が弁済期にないときは，この限りでない（民法533条本）。
※←　留置権の効果は，「物を留置すること」（民295条１項本文）であるから，物の引渡しを拒絶できる。これに対して，同時履行の抗弁権の効果は「債務の履行を拒むこと」(533条本文）であるから，物の引渡しの拒絶に限られない。

(2312B) 《占有の喪失》
※←　留置権は，留置権者が留置物の占有を失うことによって，消滅する。ただし，第298条第2項の規定により留置物を賃貸し，又は質権の目的としたときは，この限りでない（民法302条本）。
※←　同時履行の抗弁権は，双務契約当事者の地位に基づいて認められるものであるから，目的物の占有を失った場合にも主張することができる。

(2312C) 《代担保請求》
※←　債務者は，相当の担保を供して，留置権の消滅を請求することができる（民法301条）。
※←　同時履行の抗弁権を行使されている者については, 301条のような規定はないから，相当の担保を供してその消滅を請求することができない。

(2312D) 《引換給付判決》
※←　原告の請求に対し被告が同時履行の抗弁権を行使したときも，原告の請求を棄却せず，引換給付判決をすべきである（大判明44.12.11）。留置権の抗弁についても，同様である（最判昭33.3.13）。

(2312E) 《代位行使》
※←　第三債務者（双務契約当事者の一方）は,債務者（相手方）に対して主張し得る事由を債権者（相手方の債権について債権者代位権を行使する者）に主張することができる（最判昭33.6.14）。
※←　債権者代位権が行使されたことによって，第三債務者が債務者に対する関係よりも不利益を被ることは妥当でないから。