民法

◎	詐害行為取消権に関する次の１から５までの各記述のうち，判例の趣旨に照らし正しいものを２個選びなさい。 (2318) 【詐害行為取消権】予備試験第７問と同じ
１	不動産の譲渡が詐害行為取消権を主張する債権者の債権成立前にされている場合には，債権成立後に所有権移転登記がされても，当該不動産の譲渡行為及び所有権移転登記は，いずれも詐害行為とはならない。正しい。 (2318A) 《債権の発生後》　不動産の譲渡が詐害行為取消権を主張する債権者の債権成立前にされている場合，債権成立後に所有権移転登記がされても，当該不動産の譲渡行為及び所有権移転登記は，いずれも《詐害行為》とはならない（最判昭55.1.24）。 (2318A) 《債権成立前》 ※←　債務者の行為が詐害行為として債権者による取消しの対象となるためには，その行為が取消債権者の債権の発生後になされたものであることを必要とするから，不動産の譲渡行為が取消債権者の債権成立前になされた場合には，その登記が上記債権成立後に移転されたときであっても，上記債権者は取消権を行使することはできない（最判昭55.1.24）。
２	相続人の債権者は，相続人が無資力であるにもかかわらず相続放棄をした場合には，詐害行為取消権を行使することができる。誤り。 (2318B) 《相続の放棄》　相続人の債権者は，相続人が無資力であるにもかかわらず相続放棄をした場合，《詐害行為取消権》を行使することが［できない］（民法424条2項）（最判昭49.9.20）。 (2318B) 《相続の放棄》 ※←　前項の規定は，財産権を目的としない法律行為については，適用しない（民法424条2項）。 ※←　相続の放棄は，既得財産の増加を消極的に妨げる行為にすぎず，かつ，このような身分行為については他人の意思による強制を許すべきではないから（最判昭49.9.20）。
３	受益者が債権者を害すべき事実を知らない場合には，転得者がこれを知っていたとしても，債権者は，転得者に対し詐害行為取消権を行使することはできない。誤り。 (2318C) 《転得者悪意》　受益者が債権者を害すべき事実を知らない場合，転得者がこれを知って［いれば］，債権者は，転得者に対し【詐害行為取消権】を行使することが［できる］（最判昭49.12.12）。 (2318C) 《転得者悪意》 ※←　債権者は，債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし，その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは，この限りでない（民法424条1項但）。 ※←　裁判所が詐害行為を取り消したときは，その行為は原告たる取消債権者と訴訟の相手方だる受益者又は転得者との間では無効になるが，訴訟に参加しなかった債務者･受益者･転得者に対しては依然として有効である（大連判明44.3.24),。
４	詐害行為取消権を行使するためには，受益者又は転得者を相手方として訴えを提起すれば足り，債務者を相手方とする必要はない。正しい。 (2318D) 《被告適格》　【詐害行為取消権】を行使するためには，受益者又は転得者を相手方として訴えを提起すれば足り，債務者を相手方とする必要はない（大連判明44.3.24）。 (2318D) 《被告適格》 ※←　取消しの効力は相対的であって，債権者取消訴訟の原告債権者と被告たる受益者又は転得者との間にのみ及ぶから，債務者は被告適格を有しない（大連判明44.3.24）。
５	不動産の譲渡行為が詐害行為となる場合，詐害行為取消権を行使する債権者は，当該譲渡行為に基づき所有権移転登記を受けた譲受人に対して，直接自己に対する所有権移転登記を求めることができる。誤り。 (2318E) 《自己名義への移転》　不動産の譲渡行為が【詐害行為】となる場合，【詐害行為取消権】を行使する債権者は，当該譲渡行為に基づき所有権移転登記を受けた譲受人に対して，直接自己に対する所有権移転登記を求めることは［できない］（最判昭53.10.5）。 (2318E) 《自己名義への移転》 ※←　登記の抹消を請求することができるにとどまる。 ※←　目的物が不動産の場合には，取消債権者は受益者に対し，直接事項に所有権移転登記を求めることはできない（最判昭53.10.5）。
	正　解　　　１　　４