民法

◎	隔地者に対する意思表示に関する次のアからオまでの各記述のうち，正しいものを組み合わせたものは，後記１から５までのうちどれか。 (2302) 【隔地者に対する意思表示】 **
ア	意思表示の効力は，相手方に到達した時に生ずるので，隔地者間の契約が成立するのは，承諾の意思表示が相手方に到達した時である。誤り。 (2302A) 《承諾の通知》　意思表示の効力は，相手方に到達した時に生ずるが（民法97条1項），隔地者間の契約が成立するのは，［承諾の通知を発した時：×承諾の意思表示が相手方に到達した時］である（民法526条1項）。 (2302A) 《発信主義》 ※←　隔地者間の契約は，承諾の通知を発した時に成立する（民法526条1項）。 ※←　隔地者に対する意思表示は，到達主義が原則である（民法97条1項）。　しかし，隔地者間の契約の成立時期は，例外的に発信主義とされている(民法526条1項）。
イ	制限行為能力者の行為を追認するかどうかの催告に対し，法定代理人が定められた期間内に追認拒絶の通知を発し，期間経過後に到達した場合，追認したものとみなされる。誤り。 (2302B) 《催告》　制限行為能力者の行為を追認するかどうかの【催告】に対し，法定代理人が定められた期間内に追認拒絶の通知を発し，期間経過後に到達した場合，追認したものとは［みなされない］（民法20条2項）。 (2302B) 《催告》 ※←　制限行為能力者の相手方が，制限行為能力者が行為能力者とならない間に，その法定代理人，保佐人又は補助人に対し，その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において，これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも，同項後段と同様とする（民法20条2項）。 ※←　制限行為能力者の相手方の催告権に対する確答については，発信主義とされている（民20条2項・1項後段）。
ウ	判例によれば，Ａに対する意思表示が記載された書面がＡの事務所兼自宅に発送され，その書面が配達された時にＡが買物に出掛けていてたまたま不在であっても，Ａと同居している内縁の妻が受領した場合，意思表示の効力は生ずる。正しい。 (2302C) 《到達》　Ａに対する意思表示が記載された書面がＡの事務所兼自宅に発送され，その書面が配達された時にＡが買物に出掛けていてたまたま不在であっても，Ａと同居している内縁の妻が受領した場合，意思表示の効力は生ずる（民法97条1項）（最判昭43.12.17）。 (2302C) 《到達》 ※←　隔地者に対する意思表示は，その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる（民法97条1項）。 ※←　相手方によって直接受領され又は了知されることを要するものではなく,意思表示又は通知を記載した書面が，相手方のいわゆる支配圏内に置かれることをもって足りる（最判昭43.12.17）。同居している内縁の妻は居住者といえるから，Ａ宛ての意思表示を居住者が受領すれば，相手方たるＡの支配圏内に置かれたといえる。
エ	契約の申込みに対し承諾の意思表示を発した後，到達前に承諾者が死亡した場合，相手方が承諾者死亡の事実を知っていれば契約は成立しない。誤り。 (2302D) 《承諾者の死亡》　契約の申込みに対し承諾の意思表示を発した後，到達前に承諾者が死亡した場合，相手方が承諾者死亡の事実を［知っていても］契約は［成立する］（民法526条1項）。 (2302D) 《承諾者の死亡》 ※←　隔地者間の契約は，承諾の通知を発した時に成立する（民法526条1項）。 ※←　隔地者間の契約の成立時期は，発信主義とされているから（民526条１項），承諾の意思表示を発した段階で契約は成立している。民法525条は申込者死亡の場合に関する条文であるから，承諾者が死亡した本問には適用されない。
オ	承諾期間の定めのある契約の申込みであっても，申込みの到達前又は到達と同時であれば撤回することができる。正しい。 (2302E) 《申込の撤回》　承諾期間の定めのある契約の申込みであっても，申込みの到達前又は到達と同時であれば撤回することができる（民法521条1項）。 (2302E) 《申込の撤回》 ※←　承諾の期間を定めてした契約の申込みは，撤回することができない（民法521条1項）。 ※←　この申込みは到達主義の原則により効力が生じていることが前提となる（97条１項）。よって，申込みの到達前又は到達と同時であれば，いまだ申込みの意思表示の効力が生じていないから撤回できる。
	１　アウ　　　　　　２　アエ　　　　　　３　イエ　　　　　　４　イオ　　　　　　５○ウオ