民法

◎	不当利得に関する次の１から４までの各記述のうち，判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。 (2329) 【不当利得】 **
１	ＡがＢからだまし取った金銭で自己の債権者Ｃに弁済した場合，Ｃがこの事実を知らなかったことにつき重大な過失があったとしても，Ｃが受けた弁済による利益は，Ｂとの関係で不当利得にはならない。誤り。 (2329A) 《金員の騙取》　ＡがＢからだまし取った金銭で自己の債権者Ｃに弁済した場合，Ｃがこの事実を知らなかったことにつき重大な過失があったと［すれば］，Ｃが受けた弁済による利益は，Ｂとの関係で【不当利得】と［なる］（民法703条）（最判昭49.9.26）。 (2329A) 《金員の騙取》 ※←　法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け，そのために他人に損失を及ぼした者（以下この章において「受益者」という）は，その利益の存する限度において，これを返還する義務を負う（民法703条）。 ※←　騙取金員により債務の弁済を受けた債権者に悪意または重大な過失がある場合は，その金銭の取得は被騙取者との関係では法律上原因がない（最判昭49.9.26）。
２	Ａは，Ｂに対して債務を負っており，その弁済期前であることを知りながらその債務を全額弁済した場合，Ｂがそれを弁済期までの間に運用して利益を得ていたときは，その利益は，Ａとの関係で不当利得となる。誤り。 (2329B) 《期限前の弁済》　Ａは，Ｂに対して債務を負っており，その弁済期前であることを知りながらその債務を全額弁済した場合に，Ｂがそれを弁済期までの間に運用して利益を得ていたとき，その利益は，Ａとの関係で《不当利得》とは［ならない］（民法706条但）。 (2329B) 《期限前の弁済》 ※←　債務者は，弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは，その給付したものの返還を請求することができない。ただし，債務者が錯誤によってその給付をしたときは，債権者は，これによって得た利益を返還しなければならない（民法706条但）。 ※←　Ａは，その弁済期であることを知りながらその債務を弁済しているので，民法706条但書は適用されない。
３	大麻の密売人Ａは，Ｂに対し，Ａが売るための大麻をＡの所有する土地でＢに栽培させるために，その土地を書面によってＢに贈与し，Ｂに引き渡したが，登記名義はＡのままであった。その後，Ａが大麻を売るのをやめ，Ｂに対して当該土地の引渡請求をした場合には，Ａの請求は認められる。正しい。 (2329C) 《給付》　大麻の密売人Ａは，Ｂに対し，Ａが売るための大麻をＡの所有する土地でＢに栽培させるために，その土地を書面によってＢに贈与し，Ｂに引き渡したが，登記名義はＡのままであった。その後，Ａが大麻を売るのをやめ，Ｂに対して当該土地の引渡請求をした場合には，Ａの請求は認められる（民法708条）（最判昭46.10.28）。 (2329C) 《不法原因給付》 ※←　不法な原因のために給付をした者は，その給付したものの返還を請求することができない。ただし，不法な原因が受益者についてのみ存したときは，この限りでない（民法708条）。 ※←　［給付］の意義につき，「妾関係を維持する目的で既登記不動産を贈与した場合には，目的物の引渡しを受けただけでは『給付』があったことにはならない（最判昭46.10.28）。 ※←　登記名義がＡに残っているので、いまだ「給付」があったことにはならない。
４	不法な原因のために，書面によって土地を贈与し，これを受贈者に引き渡した場合において，当事者間で当該贈与契約を解除して当該土地を贈与者に返還する旨の合意をしたときは，この合意は，無効である。誤り。 (2329D) 《返還の合意》　不法な原因のために，書面によって土地を贈与し，これを受贈者に引き渡した場合に，当事者間で当該贈与契約を解除して当該土地を贈与者に返還する旨の合意をしたとき，この合意は，［有効］である（民法708条）（最判昭28.1.22）。 (2329D) 《返還の合意》 ※←　不法原囚給付であってその返還を請求しえないものであっても，不法原囚契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは，本条の禁ずるところではない（最判昭28.1.22）。
	正　解　　　３