民法

◎	弁済に関する次の１から４までの各記述のうち，判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。 (2321) 【弁　済】 **
１	弁済者が履行期に弁済の目的物を提供して受取証書の交付を請求したにもかかわらず，弁済受領者がこれに応じないときは，弁済者は，目的物の引渡しをしなくても，遅滞の責めを負わない。正しい。 (2321A) 《受取証書の交付》　弁済者が履行期に【弁済】の目的物を提供して受取証書の交付を請求したにもかかわらず，弁済受領者がこれに応じないときは，【弁済者】は，目的物の引渡しをしなくても，遅滞の責めを負わない（民法486条）。 (2321A) 《受取証書の交付》 ※←　弁済をした者は，弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる（民法486条）。 ※←　受取証書とはいわゆる領収書であるところ，判例（大判昭16.3.1）によれば，その交付が弁済と同時履行の関係に立つとされている。その趣旨に照らせば，弁済者の引渡債務と受取証書の交付は同時履行の関係に立ち，債権者が受取証書の交付の請求に応じない場合，弁済者は同時履行（民533条）の抗弁権を有する。
２	債権者が債務の弁済として，債務者からその所有に属しない物の交付を受けた場合には，その弁済が有効となることはない。誤り。 (2321B) 《他人物弁済》　債権者が債務の【弁済】として，債務者からその所有に属しない物の交付を受けた場合，その【弁済】が有効となることが［ある］（民法475条）。 (2321B) 《他人物弁済》 ※←　弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは，その弁済をした者は，更に有効な弁済をしなければ，その物を取り戻すことができない（民法475条）。 ※←　他人の所有に係る物を交付することも弁済として有効となる場合があることを前提にしている。
３	債権の準占有者に対する弁済は，弁済者が善意であり，かつ，重過失がなかった場合には，有効となる。誤り。 (2321C) 《準占有者に対する弁済》　債権の準占有者に対する【弁済】は，弁済者が善意であり，かつ，［過失：×重過失］がなかった場合には，有効となる（民法478条）。 (2321C) 《準占有者に対する弁済》 ※←　債権の準占有者に対してした弁済は，その弁済をした者が善意であり，かつ，過失がなかったときに限り，その効力を有する（民法478条）。 ※←　債権の準占有者に対する弁済者が善意かつ無過失の場合に限られ，債権の準占有者に対する機械払いの方法による預金の払戻しにつき銀行が無過失であるというためには，払戻しの際に機械が正しく作動したことだけでなく，銀行において，預金者による暗証番号等の管理に遺漏がないようにさせるため当該機械払いの方法により預金の払戻しが受けられる旨を預金者に明示することを含め，機械払いの設置管理の全体について，可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたことを要する（最判平15.4.8）。
４	受取証書の持参人は，その者の権限についての弁済者の主観的事情にかかわらず，弁済を受領する権限があるものとみなされる。誤り。 (2321D) 《受取証書の持参人》　受取証書の持参人は，その者の権限についての弁済者［が権限がないことにつき善意無過失であるとき：×の主観的事情にかかわらず］，【弁済】を受領する権限があるものとみなされる（民法480条）。 (2321D) 《受取証書の持参人》 ※←　受取証書の持参人は，弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし，弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき，又は過失によって知らなかったときは，この限りでない（民法480条）。
	正　解　　　１