民法

◎	ＡがＢに対し金銭債権甲の支払を求める訴えを提起したところ，Ｂは，Ａに対する別の金銭債権乙をもって対当額で相殺する旨の抗弁を主張した。この場合に関する次の１から５までの記述のうち，誤っているものはどれか。 (1830) 【相殺】　ＡがＢに対し金銭債権甲の支払を求める訴えを提起したところ，Ｂは，Ａに対する別の金銭債権乙をもって対当額で相殺する旨の抗弁を主張した。
１	乙が貸金債権である場合，弁済期の合意を消費貸借契約の成立の要件と考える見解に立つと，ＢがＡに対して相殺の抗弁を主張するためには，貸金債権乙の弁済期の合意の存在を主張立証する必要がある。正しい。 (1830A) 《弁済期の合意》　乙が貸金債権である場合，弁済期の合意を消費貸借契約の成立の要件と考える見解に立つと，ＢがＡに対して【相殺の抗弁】を主張するためには，貸金債権乙の弁済期の合意の存在を主張立証する必要がある。 (1830A) 《弁済期の合意》 ※←　弁済期の合意は契約の要素であるから，契約の成立を主張する者に，主張立証責任がある。　←　自働債権の発生原因事実
２	Ｂの相殺の抗弁は，金銭債権甲の元本に対する抗弁となるだけでなく，相殺適状を生じた後の金銭債権甲の利息及び遅延損害金に対する抗弁にもなる。正しい。 (1830B) 《遡及効》　Ｂの相殺の抗弁は，金銭債権甲の元本に対する抗弁となるだけでなく，【相殺適状】を生じた後の金銭債権甲の利息及び遅延損害金に対する抗弁にもなる（民法506条2項）。 (1830B) 《遡及効》 ※←　相殺には，遡及効があるので（民法506条2項），相殺後は利息や遅延損害金は発生しない。
３	金銭債権甲が不法行為に基づく損害賠償請求権である場合には，Ｂの相殺の抗弁は主張自体失当となる。正しい。 (1830C) 《不法行為》　金銭債権甲が不法行為に基づく損害賠償請求権である場合には，Ｂの【相殺の抗弁】は主張自体失当となる（民法509条）。 (1830C) 《不法行為》 ※←　不法行為に基づく債権を受働債権とする相殺は，禁止されている（民法509条）。
４	Ｂは，口頭弁論期日において相殺の意思表示をした場合，相殺の意思表示をしたことを立証する必要はない。正しい。 (1830D) 《顕著な事実》　Ｂは，口頭弁論期日において【相殺】の意思表示をした場合，相殺の意思表示をしたことを立証する必要はない（民訴法179条）。 (1830D) 《顕著な事実》 ※←　顕著な事実であるから，立証は不要である（民訴法179条）。
５	Ｂが相殺の意思表示に条件を付したことをＡが再抗弁で主張しても，主張自体失当となる。誤り。 (1830E) 《再抗弁》　Ｂが【相殺】の意思表示に条件を付したことをＡが再抗弁で主張しても，主張自体失当［ではない］。 (1830E) 《再抗弁》 ※←　相殺の意思表示には条件・期限がつけれらないので（民法506条1項後段），その主張は再抗弁となる。
	正　解　　　５