民法

◎	債権者代位権に関する次の１から５までの記述のうち，判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。 (1723) 【債権者代位権】 *　*
１	債権者は，債権者代位権行使のために必要な費用を支出したときは，その費用の償還請求権を有する。正しい。 (1723A) 《費用の償還請求》　債権者は，【債権者代位権】行使のために必要な費用を支出したとき，その費用の償還請求権を有する（民法650条）。 (1723A) 《費用の償還請求》 ※←　法定委任関係が成立しているので，費用の償還請求権がある（民法650条）。
２	債権者は，自己の債権保全に必要な限度で，債務者に代位して，他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる。正しい。 (1723B) 《消滅時効》　債権者は，自己の債権保全に必要な限度で，債務者に【代位】して，他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる（最判昭43.9.26）。 (1723B) 《消滅時効》 □←　債務者の資力が自己の債権の弁済を受けるについて十分でない事情があれば，代位行使ができる。 ※←一，他人の債務のために自己の所有物件に抵当権を設定した者は，右債務の消滅時効を援用することができる。 ※＝二，債権者は，自己の債権を保全するに必要な限度で，債務者に代位して，他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる（最判昭43.9.26）。
３	債権者は，債務者が自ら当該権利を行使している場合でも，その方法が不誠実かつ不適当である場合には，債権者代位権を行使することができる。誤り。 (1723C) 《自ら行使》　債権者は，債務者が自ら当該権利を行使している場合には，その方法が不誠実かつ不適当であっても，【債権者代位権】を行使することが［できない］（最判昭28.12.14）。 (1723C) 《自ら行使》 □←　債権者は補助参加等により，自己の権利保全をすることができるし，事情によっては詐害行為として取消すこともできるから（最判昭28.12.14）。 ※←　債務者が既に権利行使をしている以上，もはや債権者は代位権を行使できない（最判昭28.12.14）。　←　干渉は最小限に
４	建物賃借人は，その賃借権を保全するため，賃貸人たる建物所有者に代位して建物の不法占拠者に対してその明渡しを請求し，直接自己に対して明け渡しを請求することができる。正しい。 (1723D) 《賃借人》　建物賃借人は，その賃借権を保全するため，賃貸人たる建物所有者に【代位】して建物の不法占拠者に対してその明渡しを請求し，直接自己に対して明け渡しを請求することができる（大判昭4.12.16）。 (1723D) 《賃借人》 □←　これを認めないと，債務者（賃貸人）が受領を拒否しているときに代位権行使の目的を達成できないから（最判昭29.9.24）。 ※←　債権者代位権の転用である（大判昭4.12.16）。
５	債権者代位訴訟の判決の既判力は，債権者の勝訴・敗訴にかかわらず債務者に及ぶ。正しい。 (1723E) 《既判力》　【債権者代位訴訟】の判決の既判力は，債権者の勝訴・敗訴にかかわらず債務者に及ぶ（大判昭15.3.15）。 (1723E) 《既判力》 ※←　代位訴訟の判決の効力は，債務者に及ぶ（大判昭15.3.15）。　本人たる債務者に対して拡張される。
	正　解　　　３